ザ・トップマネジメント「ヤオコー 川野澄人社長」: 2021年新春特別版インタビュー

2021.01.03

更新:2021.03.27

居抜き物件の増加で来期は出店数ほぼ倍増の9店に、「前年比」の高いハードルを新店と既存店成長で越える

ヤオコー川野澄人社長

——2020年を振り返ると。

川野 新型コロナウイルスの影響で、当初、当社が考えていた取り組みについては、まずはコロナ対応を最優先するということで、計画どおりには進ちょくしていないというのが現状だ。

今期は64期だが、創業130周年ということで、「創業130周年、ヤオコーの良いところをより強く」を経営方針テーマに掲げて取り組んできたわけだが、コロナが起こり、特に上半期はいわゆる巣ごもり需要で大きく売上げが伸長した。

この対応に時間を取られたこともあって、われわれが継続的に取り組んでいる商品開発、あるいは旗艦店づくりに向けた新しいマーチャンダイジング(MD)への踏み込みは不十分であったかなという認識だ。

一部プライベートブランド(PB)の商品については日配で販売したカレーうどんなどヒットした商品があった。また、例えばベーカリーコーナーでは、デリカ・生鮮センターでピザの生地を作るように換えたが、商品の品質も支持をされて大きく売上げを作れる規格になっているといったことが進ちょくしたところかなと思う。

ヒット商品となったPBのカレーうどん。国産小麦を100%使用して本場の香川で製造。付属のスパイスで辛さを調整できる。紙エプロンも付いていて親切な商品設計

——ベーカリーの改革の進ちょく状況は。

川野 ベーカリー部門は、ずっと赤字が続いていて、それをいかに黒字化していくかということで、ここ数年取り組みを進めてきている。

大きく言えば、お店で焼き上げ等の設備がかかる、そしてさらには、パンをこねて成型してというように人手がかかることがベーカリーの赤字の原因としてある。1つはお店の人手を少なくしながら魅力を出せるかが、ポイントになるので、そこにフォーカスしながらデリカ・生鮮センターを活用する。

ピザ等の生地玉を作ってお店では「延ばすだけ」といったように、作業の軽減をしながら売上げ、利益が取れる商品を1つ1つ増やしてきている。サンドイッチ等もお店で作っていたものをセンターからの供給に換えるなど、商品の差別化、省力化を、センターに任せる部分とお店でやる部分とのバランスを取りながら、最終黒字化できるような形にいま徐々に進めている。

今期大きいのは、いままでパンの種類が多いため専用レジで会計をしていたが、コロナの感染対策のために全て個包装に換えた(専用レジをなくした)こと。包装の手間はかかっているが、逆に言うとレジの手間はその分省けているので省力化には寄与してきていると思っている。

そこを含めて何とか数年内には黒字化したい。ベーカリーコーナーは利益が上がらないということで他社に任せたり、あまり力を入れている会社がないので、差別化の大きな核になると思っている。何とかあきらめず、差別化部門として育てていければと思っている、

——ベーカリーを含め、デリカについてセンターを活用する部分と店内加工にこだわる部分については、どのように決めているか。

川野 そこはわれわれも非常に悩みながらやっているところ。一番はお店で加工する方が明らかに味がよいというもの、品質の違いが生まれるということについては、店内の作業にこだわって継続していくつもりだ。

当社の強みは、店内で加工する技術がちゃんとあるということなので、その強みを失わないようにしていきたい。ベーカリーで言えば、例えばカレーパンは店内で包餡をしているのだが、そのことで具材の量や質、でき上がりの味が大きく変わってくるということで、カレーパンについては変わらず店内で手包餡をしていく。店で手で包むわけだから技術もいるし、その分人手もかかるが、そこは味にこだわってやっている。

お店の技術も磨きながら、何をセンター化、あるいは仕入れの商品にして、何を店内でやるか、これからも1品1品見ながら決めていきたいと思っている。

来期は「個店の強さを磨く」ことに一層注力する

——来期の見通しは。

川野 来期の環境想定だが、まさにウィズコロナの期間からアフターコロナへの移行期という環境になるのかなと思う。つまり、感染予防は続けながら新しい日常が構築されていく、そんな年になるのではないかと思う。

オリンピック・パラリンピックが実施される予定なので、その点においては内食の需要にチャンスがあるという認識でいる。一方で節約志向はさらに強まる、二極化がさらに顕著になってくるとも思っている。

当社もヤングファミリーの獲得をここ数年テーマに掲げているが、特に若い世帯、ヤングファミリーの節約志向にしっかり対応していかなければいけない。同時に特にミドルからシニアにかけての方のちょっといいものを食べたいというニーズに応えていく。めりはりを持った対応がより一層求められると考えている。

また、当社の社内的な目標だが、増収増益を続けている中で、今期、特に上半期は非常に売上げが伸長したこともあって、「前年比」という意味では高いハードルになってくるので、どれだけ売ることに集中していくのか、お客さまの支持を上げられるのかということに集中する年にしたい。

当社は「チェーンとしての個店経営」を掲げているので、チェーンとしての仕組みを生かしながら個店を強くしていく。お店が、自分たちのお客さまを見ながら商売をしていくのが、当社の特徴であり強みであると考えている。その意味ではチェーンの施策、デリカ・生鮮センターを造ったり、物流センターなどチェーンとしてのインフラを整えたりということを進めてきたわけだが、これを継続しながら特に省力化、省人化につながる取り組みには引き続き力を入れる。

ここ数年なかなか人手不足という環境もあって、力を注ぎ切れなかった個店の強さを磨いていくこと、お店が考えて、お店が計画を立てて販売していくということにより力を入れる年にしたいと思う。

鍵となるのは店長の力をいかに引き上げられるかということなので、改めて店長教育に力を入れていきたいと考えている。

——高いハードルを越えて増収増益を達成できそうか。

川野 確度でいうと、まさにいま来期の予算編成をしているところ。新店については、例年よりも増やす予定にしているので、新店での押し上げ部分はここ数年に比べても大きくなる。また、今期大型店の改装を増やしているので、そこも売上げのアップに寄与してくると考えている。

残るは、多くは既存店の売上高をどう伸ばしていくのかということになる。大きな手立てとしては、やはり客層をきちんと広げていこうということで、価格対応を(20年)6月ぐらいからずっと進めてきている。じわりじわりと認知されてきたという認識なので、客数アップに寄与してくるとみている。

大きな流れは、どちらかというと「まとめ買い」の傾向が続いていると認識している。大きなトレンドでは客数が落ちて、その代わり点数が上がっているというトレンドは変わらないと思う。当社の対策は、「商品は信頼できるけれどもちょっと高い」と感じていらっしゃるお客さま層に、どうヤオコーをメインの買物の場所として選んでいただけるかということだと思う。

特にヤングファミリー層の好む商品群、アイスクリームだったり、あるいはスナック菓子だったりといったところの価格対応は、引き続き強めていく必要があると思っている。

あとは、いままでいろんな手立てを打ってきたが、その中でも、特にいま、お店の経験値を上げる、自分たちの引き出しを増やすということで、いろんな売り方を試しながら成功事例を積み上げているところ。

来期は「前年比」が厳しくなるという中でも、自信を持って商売できるように、その積み上げた成功事例をしっかりと生かしていくための準備をしているところだ。

——チラシなどの販促についての来期の方針は。

川野 どういう形にすべきかを社内で検討しているところだ。今期は「密」を避ける、特定の日に集中することを避けるということで、いわゆるEDLP(エブリデーロープライス)、常時低価格で販売するカテゴリーを増やして、むしろ日替わり等の投入は減らしてきた。その意味では、狙いどおり来店については平準化されてきていると認識している。

その中で、いまの定番価格、EDLP政策を変えてしまうと、お客さまが「値上がりした」という認識を持たれると思うので、ここについては引き続き、維持をしていくということが大事だと思っている。

一方で、9月の後半から11月の前半に顕著になってきたが、コロナが落ち着いた段階でのお客さまの買物の行動を見ると、やはり、チラシが強いところを買い回られるという動きが強く出た。その意味で9月の後半、10月に当社は想定より苦戦した。EDLPとハイ&ローの組み合わせをどういうバランスでしていくのかは慎重に組み立てをしないといけないと思っている。

居抜き物件増加の影響もあって新規出店はヤオコーで9店に

——来期の新規出店はヤオコーが9店、子会社のエイヴイが1店を予定するなど今期の5店よりずいぶん増える。

川野 居抜きの物件が増えているため、(出店)店舗数が増えることが一番大きい。同業他社を含めて限られた土地の取り合いは変わっていないが、以前に比べると、マンション業者との競合はゆるやかにはなってきたと思っている。出店環境が大幅に改善してきていることはないが、以前よりは、ずいぶんとリストラを含めた物件が増えてきたので、この先数年は出店数が増えてくるという期待はしている。

一方で改装については今期、前倒しをして大きなところの改装を進めた。来期は新店が多いこともあり、新店に集中して改装は抑える。これも状況を見ながら、効果が上がる店については改装店舗も増やすことはあり得ると思っている。

——大型の改装では20年11月20日に所沢北原店を旗艦店として改装した。

川野 所沢北原店(埼玉県所沢市)の改装については、当社のKPI(重要業績評価指標)として掲げている(半径)1㎞商圏シェアをいかに高めるかということが狙いの1つとしてある。

また、所沢北原店に限らないが、やはりシニアの方の割合が高まっている中で、毎日の買物の中でメインに使っていただく、特にシニアの個食対応を含めた惣菜を充実することで、日々使っていただくことを強める。

同時に若い客層を広域からどう集めて来るかということで、そこにはやはり価格の打ち出しだったり、簡単に料理ができて保存性がよい冷凍のミールキットなどのカテゴリーを充実させたり、安くて、味もよく、生活の彩りなるようなイタリアからの輸入商品などのカテゴリーを強めることで若いお客さまをいかに引きつけるかということを、チーズのコーナーなどを組み合わせながら、その場で食のシーンの演出、楽しさを出していくことなどを狙ってお店づくりをしている。

かつ最終的な利益確保をするための生産性向上という点で、投げ込みの什器を入れたりといったハード面での工夫をしながら、安さと楽しさと、そしてオペレーションコストの低減を同時に進めていくというのが所沢北原店での試みだ。

——来期、三浦半島の神奈川県三浦市に三浦初声店を出店する。隣接する横須賀市は子会社のエイヴイの地盤だが。

川野 三浦への出店は、(本社から)非常に遠い場所であり出店すべきか悩んだが、郊外立地の中でしっかりと収益が挙げられるとみて出店を決めた。横須賀のエイヴイと至近だが、いずれは何らかの形で協力をし合うことはあり得るとは思うが、現時点では計画していない。逆に言えば、あのエリアを一番われわれ(ヤオコー)の南の端として、そこへの店舗網をつないでいくことについては、これからしっかりと考えてやっていければと思う。

——都市型小型店として出店した八百幸成城店(東京都調布市)の状況と、都市型小型店の今後の出店については。

川野 成城店は、始めは苦戦したが、徐々にエリアでの認知度が上がってきたことと、エリアに合わせた商売ができてきたこともあって、今期は大きく売上げを伸ばしている。

コロナによる巣ごもり需要もあるが、特に成城という立地もあって、いわゆる手作りをされるお客さまが非常に多くいらっしゃって、素材にもこだわりがある。そこに対して当社のお肉の品質や鮮魚の品揃えなどがずいぶんご支持をいただいて、売上げが上がってきている。1つの型は見えつつあるかなと思っている。

難しいのは惣菜のニーズが郊外とは少し違うこと。われわれが主力で売っている唐揚げや焼き鳥等が成城店においては十分な支持がいただけていない。ただ、惣菜以外のところについては、こういう品揃えでこんな売り方をすれば、これだけ支持をいただけるということが見えてきているので、(都市型小型店については)物件があれば2号店、3号店と進めていきたいと思っている。

2024年、25年辺りを境に、より一層パイが小さくなる

——新型コロナの影響を受けてイートインコーナーが閉鎖されるなどしている。グローサラントやフードホールについてどう考えるか。

川野 その場で食べる、その場で楽しむ、レストランのような形で、そこに滞在するスタイルのグローサラントやフードホールの流れについては、現状、どう動いていくのかは断言しにくい状況だと思う。

間違いなく、このコロナをきっかけに家庭内での手作り、手料理は増えていると思う。そのお客さまが一部定着化される、コロナが終わったあともやはり家で作った方が楽しいしおいしいとお感じになる方がいらっしゃると思う。

今期特に伸びたところが、いわゆる手料理に対応する生鮮の素材、調味料等のグロッサリーの商品だが、大きな流れでいえば、惣菜が継続的に伸びていて、その流れは変わらないと思っている。特に共働きの世帯が増える中で、惣菜へのニーズは引き続き上がっていくのではないかという見方をしている。

イートインの利用も今期よりは来期の方が回復はするだろうが、一時期のピーク時よりは下がるという見方をせざるを得ない。当社はまだ対応できていないが、むしろ、ネットで頼んでお店でピックアップするといったスタイルが、あるいは増えてくるのではないかと思う。そういったところはにらみながら対応を進めていかなければいけないと思う。

——ネットスーパーの状況は。

川野 ネットスーパーについては、店舗段階で見ると、月によっても違うが数店舗黒字になってきているという状況。ただ、システム費用等を含めた事業全体の損益で見るとまだ黒字になっていない。

店舗段階で黒字になって、それがシステム費用等の本部費をカバーできるかどうかということなので、まずは店舗段階で黒字にする、そしてその店数を増やしていくということが必要になってくると思う。その意味ではお店段階での黒字化は見えてきているので、ネットスーパーがずっと赤字を垂れ流し続けるということはないと思っている。

ただ、収益的には厳しいのは間違いないので、収益をいかに上げられるかについては今後、さまざまなトライアルが必要になってくると思っている。

リアル店舗との使い分けやお客さまの動向については、まだ一部しか調べていないが、少なくとも把握しているのは、よく懸念される「ネットスーパーを利用された分、お店の利用が減って、需要を共食い、カニバリゼーションがあるのではないか」ということは起こっていない。データを見る限りでは、ネットと併用してくださることで、その方の買物金額の総額は上がっていると、いまの分析だと見えているので、ネットスーパーが加わることで、トータルの売上げが変わらないということではなく、上がってくると見ている。

——スーパーマーケット(SM)業界の環境をどう見る。

川野 環境的には、やはりますます厳しくなるという認識を持っている。景気についても悪くなってくると思うし、若い客層には将来不安がある。コロナによって想定されなかったことが起こったことで、将来にも(こうしたことが)起こるのではないかと考え、そのために「貯蓄をしておかなければいけない」となり、貯蓄率が高まってくる。逆に言えば消費に回るお金が減ってくるのではないか。

さらに24年に団塊の世代が75歳を迎えるということになってくると、団塊の世代の消費力も落ちてくる。24年、25年辺りを境にして、より一層パイが小さくなっていく。そのパイをめぐって、ドラッグストアやアマゾンをはじめとしたEC(電子商取引)が垣根を越えて食品のシェアを狙ってくる。業種を越えた競争が激しくなってくると思っている。

当社も1㎞商圏シェアを上げるということをKPIに掲げているが、それも現状、他社でお買物されているものを当社の魅力を上げることでシェアを高めていくことを意味する。つまり、限られたパイの奪い合いにならざるを得ないと思っている。

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