サプライチェーンとは?意味や例、バリューチェーンとの違いなどと併せて解説
2022.10.05
2022.08.30

製品や商品が消費者の手元に届くまでには、原材料の生産者からはじまる一連の流れが必要だ。消費者への安定的な製品や商品の供給と物流を担う仕組みが、サプライチェーンである。この記事では、サプライチェーンの概要や意味、具体例、似ている言葉であるバリューチェーンとの違い、さらにサプライチェーンにおける新しい管理方法であるサプライチェーンマネジメントについて解説する。
目次
サプライチェーンの意味と具体例、バリューチェーンとの違い
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、製品または商品が生産者から消費者の手元に届くまでの一連の流れを指す。英語の”Supply”は「供給」、”Chain”は「連鎖」という意味があり、消費者の手元に届くまで繰り返され、つながっているさまざまな取引が鎖に見えることから、サプライチェーンと名づけられた。英語をそのまま訳した日本語の「供給連鎖」とも呼ばれている。
なお、サプライチェーン間で登場する複数の部署や過程は「プレーヤー」、おもに仕入れや調達に関する部門は「サプライヤー」と呼ばれる。
サプライチェーンの具体例

サプライチェーンの具体例を身近な3商品で紹介する。
例1:スマートフォンのサプライチェーン
部品の調達(液晶パネル、半導体、フレーム樹脂などの仕入れ)→製造(工場で部品および本体の組み立て)→配送(完成したスマートフォンを工場から販売店へ出荷)→販売(スマートフォン販売店やECサイトで販売)→購入(消費者がスマートフォンを手にする)
例2:コンビニのおにぎりのサプライチェーン
原材料の調達(生産者~集荷販売業者からの米、具材などの仕入れ)→製造(中食事業者が工場でおにぎりを製造)→配送(各コンビニエンスストアへ完成したおにぎりを出荷)→販売(小売店であるコンビニエンスストアで販売)→購入(消費者がコンビニエンスストアでおにぎりを購入)
中食事業者とは、生産者や農協などから仕入れた原材料を加工し、食品を製造する業者。おにぎりの場合は、コンビニエンスストアのオーダー(需要)に応じて昼食事業者にて製造・出荷され、コンビニエンスストアの店舗に並ぶサプライチェーンの流れができている。
例:アパレルショップの洋服のサプライチェーン
洋服のデザインが完成→原材料の調達(繊維、合皮、ボタンやファスナーなどのパーツの仕入れ)→製造(縫製工場で洋服をデザインに沿って制作する)→配送(アパレルショップなどの小売店や、ECサイトの物流倉庫へ出荷)→販売(アパレルショップやECサイトで販売)→購入(消費者がアパレルショップやECサイトで洋服を購入)
バリューチェーンとの違い

サプライチェーンと似た言葉に「バリューチェーン」がある。バリューチェーンとは英語の”Value”「価値・価格」から由来する言葉で、日本語では「価格連鎖」と訳される。
サプライチェーンが供給の流れに着目しているのに対して、バリューチェーンは消費者の手元に製品や商品が届くまでの各プレーヤーがどの程度の付加価値を生み出しているのかを分析する点に違いがある。
サプライチェーンは、「製造」「販売」などの供給の流れで発生する各プレーヤーに注目し、サプライチェーン全体の「流れ」や「自社」の持つ強み課題を洗い出し、改善につなげる。
バリューチェーンは、「製造」「販売」などのサプライチェーンに含まれるプレーヤーはもちろん「人事」「マーケティング」など、サプライチェーンには含まれないが、製品や商品の供給に関与するプレーヤーすべてを含めて付加価値について分析する。バリューチェーンは「部署ごと」の強みや課題を洗い出し、改善につなげるのが特徴だ。
サプライチェーンで発生しやすい課題
サプライチェーンは製品、商品、サービスを消費者の元に届けるうえでなくてはならないシステムだが、発生しやすい課題がある。サプライチェーンでの安定的な供給や利益の最大化のために覚えておきたい、サプライチェーンで発生しやすい課題を解説する。
グローバル化への対応が急務
少子高齢化による国内の労働力不足や新興国の台頭、EC需要の拡大などにより、日本国内のみにサプライチェーンを構築するのは困難だ。国内企業が競争力を維持するためにも、サプライチェーンのグローバル化が急務となっている。
サプライチェーンの複雑化
グローバル化が急務のサプライチェーンだが、グローバル化はサプライチェーンの複雑化を引き起こす。その結果、在庫状況が把握できず欠品や過剰在庫が発生する、人的リソースが適切に配置されていない、コストが増加するなどの問題が発生するだろう。サプライチェーンを最適化するために、サプライチェーンで発生する各プロセスのデータを可視化できる仕組みが必要となる。
リスクへの対応
災害や社会情勢の変化により原材料の供給や物流が物理的に止まったり、材料費が高騰したりなど、サプライチェーンが稼働しなくなることがある。災害や社会情勢の変化などのリスクを予測するのは難しいが、つねにリスクへの対策ができる仕組みや取り組みを行っておくことが重要だ。リスクマネジメントをすることで、サプライチェーンによる安定供給につなげられる。
閉鎖的なサプライチェーンによる弊害
企業は顧客のニーズを把握し、品質改善や新しい付加価値などを取り入れた製品や商品を届ける役割を持っている。ところが、サプライチェーンにおける各プレーヤーと企業との取引が長年となると、プレーヤーを重視した閉鎖的なサプライチェーンとなる可能性が高いことに注意が必要だ。
閉鎖的なサプライチェーンでは顧客志向ではなくなる、情報が滞るなどの影響で顧客のニーズが把握しづらくなる。顧客をおろそかにしない開放的なサプライチェーンの構築が求められているといえるだろう。
サプライチェーンの課題解決につながる「サプライチェーンマネジメント」
サプライチェーンで発生しやすい課題を解決するために注目されているのが、新しいサプライチェーンの構築や最適化につながる「サプライチェーンマネジメント(SCM)」だ。サプライチェーンマネジメントの特徴や具体例を解説する。
サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンマネジメントとは、サプライチェーンを最適化するために企業内の他部署間(開発と製造、生産と販売など)や他企業間(メーカーと小売り店)と連携し、サプライチェーンの見直しや改善を行う仕組みのことを指す。サプライチェーン全体での意思決定が行われることで、サプライチェーンの各プロセスが見直され在庫や人的ソース、コストなどの最適化につながる。
サプライチェーンマネジメントの具体例
サプライチェーンマネジメントには、以下のようなさまざまな手法がある。
・販売状況や消費者動向をベースにした需要予測や売上データをマーケティング部門から生産部門へ共有し、原材料や製品の最適な数量を把握し欠品を防ぐ
・購買と輸送が連携してスピーディな供給につなげる
・見込み生産、受注生産などの生産モデルを全社で共有し、業務効率化につなげる
・小売店などで蓄積したPOSデータ、販売、受注実績を調達、生産部門と共有することで、消費者の需要に合わせた調達と生産のプロセスを最適化
サプライチェーンマネジメントのメリット
サプライチェーンマネジメントを取り入れることで、サプライチェーンが最適化され多くのメリットが得られる。サプライチェーンマネジメントのメリットを解説する。
在庫の最適化
仕入れ、販売などのデータを在庫管理と連携させることで、最適な在庫数の把握につながる。常に最適な在庫数を把握でき、欠品や過剰在庫の発生防止も期待できる。在庫管理が煩雑になることで発生する不良在庫などのデメリットも排除できるだろう。
コストの削減
サプライチェーンマネジメントによって、仕入れ、生産、在庫数、発送タイミングなどの情報を共有でき、最適化につながる。結果仕入れから消費者の手元に届くまでの全体業務を最適化できるため、無駄なコストが発生しなくなるのもメリットのひとつだ。
リードタイムの削減
サプライチェーンの各工程や部署、企業などのデータを一元管理することで、コストだけでなく業務上の無駄な工程や作業もはぶける。仕入れから消費者へ製品や商品を届けるまでのリードタイムの短縮が実現できることで、顧客へのスピーディな供給ができるだけでなく、全体の業務効率化にもつなげられるだろう。
人的リソースの最適化
サプライチェーンの拡大やグローバル化により、サプライチェーン全体が複雑化すると、人的リソースの適切な配置が難しくなる。サプライチェーンマネジメントを活用することで、各工程で必要な人的リソースの箇所や数が把握できる。人的リソースの最適化はもちろん、現在の人的リソースを最大限活用することで、人手不足にも対処できるだろう。
急激な市場ニーズの変動に対応できる
サプライチェーンマネジメントのシステムによっては、市場分析ができるものもある。各部門や企業から収集したデータを元に市場分析を行えば、今後の需要予測も立てられるのもメリットのひとつだ。市場のニーズが急激に変化したときにも対応でき、最適な製品や商品を安定的に供給できる仕組みづくりにつながるだろう。
環境に配慮した調達の実現
SDGsやカーボンニュートラルなど、環境への取り組みが全世界的に求められている。サプライチェーンマネジメントによって調達先(サプライヤー)の情報が一元管理できるようになるため、環境に配慮した素材や資材を採用している調達先を選択できる。各部門と連携することでデータでのやり取りができるため、サプライチェーンにおけるペーパーレス化にも役立つだろう。
サプライチェーンマネジメントのデメリットや注意点
サプライチェーンマネジメントを導入すると多くのメリットが得られる。一方で気になるのがデメリットだ。サプライチェーンマネジメントにおけるデメリットや導入時の注意点を解説する。
コストがかかる
サプライチェーンマネジメントを導入するには、SCMシステムやソリューションの導入が必要となる。当然新しいシステムやソリューション導入には、初期投資として大きなコストがかかるだろう。
ただし、サプライチェーンマネジメントの導入により、在庫管理や人的ソースの最適化など、サプライチェーンの各工程における業務の効率化によりコスト削減も見込める。初期投資の費用は高くなるものの、長期的に見ればコスト面でのデメリットは十分回収できると言えるだろう。
人的リソースが必要
サプライチェーンマネジメントの導入により、システムの保守や管理などのITリテラシーを持つ人材が必要となる。ただし、クラウド型のシステムなど共有がしやすいシステムや、直観的に使用できるシステムなどを導入することで、人的リソースはカバーできる可能性も高い。
戦略策定に負担がかかる
サプライチェーンマネジメントの導入には、システム構築とサプライチェーンの組織体制の再編が必要だ。最適化するには、現場の分析と適切な目標設定を行い、将来的に理想とするサプライチェーンを想定して施策を行わなければいけない。
サプライチェーンマネジメントにおける戦略の策定に負担がかかる。ただし、サプライチェーンマネジメントによっては戦略面をカバーできるものもある。サプライチェーンマネジメントでのおもな目的を明確に設定し、適切なシステムを導入することで、戦略策定の負担軽減につながるだろう。
サプライチェーンまとめ
サプライチェーンの概要やサプライチェーンの課題解決を図れるサプライチェーン・マネジメントの概要やメリット、デメリットを解説した。消費者の元へ製品や商品を安定的に供給するためには、サプライチェーンの最適化も重要だ。
サプライチェーン・マネジメントを導入することで、サプライチェーンの各工程での業務効率化や、コストの削減にもつながる。自社のサプライチェーンの持つ課題解決が実現するシステムやツールの導入を検討し、より安定的かつ強固なサプライチェーンを構築しよう。