無人店舗とは?メリットや国内の無人店舗の取り組み事例を交えて解説

2022.01.12

小売業のDX推進の一環として、導入が進んでいる無人店舗。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、昨今では一層注目を集める店舗形態であり、経済産業省も無人店舗はキャッシュレス化に繋がると考えている。

本記事では、無人店舗の概要・メリットとともに、実際に無人店舗を導入して運営を行う事例を解説していく。

無人店舗とは?

無人店舗の言葉は明確に定義されていないが、先進的な認証技術・センサー・カメラなどを導入することで、レジ業務といったスタッフのオペレーションを無くした店舗を指す。

読んで字の如く、無人の店舗と称されるものの、実際は店員が完全に不在というわけではない。バックヤードに店員が1名待機し、場合によっては酒類購入時の年齢確認を遠隔操作で行うなどのケースもある。

また、無人店舗はレジ無し店舗と同義ではない。無人店舗には、認証ゲートを通過した後、店内の商品を手に取り、レジを介さずそのまま退店できる形態がある。このような店舗形態はレジ無し店舗となるが、レジ決済が必要な店舗も存在する。

広義の無人店舗の中に、レジ無し店舗とレジ有り店舗が存在する点に留意したい。

無人店舗のメリット

無人店舗の実装には、認証ゲート・重量センサー・カメラなど必要な機器も多く、高額な初期費用やランニングコストが発生する。しかし、当然ながら相応の導入メリットが存在する。

次に、無人店舗のメリットを4選解説していく。

省人化による人件費の削減

日本企業の慢性的な人手不足は、長年の課題となっている。例えばコンビニであれば、他の店舗より賃金が低く、好待遇の求人が出せないため、人手不足に陥ることもある。コンビニに限らず、小売業界の人手不足は深刻と言えるだろう。

しかし、無人店舗は人手不足の解消に寄与する。完全な無人化は難しいケースが多いものの、レジ業務をAIなどに任せることで、省人化による人件費の削減を期待できる。

加えて、業務の効率化を図れるのも大きなメリットだ。従事していたレジ業務がなくなることで、販促にかけられる時間が増え、結果的に売上向上にも繋がると考えられる。

非接触で商品の売買を行える

無人店舗では、精算から袋詰めの一連の流れを全て消費者が行う。店員と接触する機会がなく、新型コロナウイルスの感染拡大防止を見込める。

また、コロナ禍においては、対人のレジ精算に不安やストレスを感じる消費者も多い。しかし、無人店舗で非接触を実現できれば、スマートな顧客体験を生み出すだけでなく、コロナ対策店として認識され、店舗の価値も上がる。新たな顧客体験により、新規顧客・リピーターの創出にも、非接触の無人店舗は一役買うと言えるだろう。

万引きの防止

有人店舗に比べ、無人店舗の防犯性が気になる人も多いはず。しかし、実際は有人店舗よりも優れた防犯性で、万引きを未然に防ぐことが可能だ。

システムにもよるが、無人店舗はAIカメラや重量センサーを活用し、手に取られた商品と手に取った人物をセットで認識する。たとえ、商品をカバンやポケットに隠しても、先進技術で消費者を追跡。決済を済ませないとゲートが開かず、退店できないため、万引き防止に繋がる。

物理的な機器の破壊も気がかりと言えるが、カメラによる録画や異常検知などの仕組みを実装するシステムが多い。

小売店が万引き対策を行う場合、防犯システムの導入や保安警備会社との契約など、高額なコストが発生する。無人店舗の運用で、万引き対策を同時に行うことも一つと言えるだろう。

データの収集・活用

小売店はPOSレジで商品のバーコードを読み込むことで、購入商品・時間・個数などのPOSデータを取得している。キャッシュレス決済を導入していれば、消費者の年齢層や性別などの情報も取得可能だ。POSデータにより、売れ筋商品・死に筋商品や消費者へのアプローチ方法など、さまざまな分析を行える。

対して、無人店舗では、来店から退店するまでに取った消費者行動も分析可能。例えば、弁当エリアで1分立ち止まっていた、お茶を手に取ったが棚に戻した、などのデータを取得できる。

POSデータに加え、消費者行動も分析することで、店舗レイアウトの改善といった導線設計を見直せる。POSシステムに比べ、より細かいデータの収集・活用を行え、売上アップを期待できるだろう。

無人店舗の事例

試験的に導入されるケースもある無人店舗だが、すでに本格運用している店舗も存在する。ここでは、無人店舗の事例を紹介していく。

ホールフーズ・マーケット

アマゾンの傘下であるホールフーズ・マーケットは、2022年に「ジャスト・ウオーク・アウト」の技術を導入することを発表している。「ジャスト・ウオーク・アウト」には、店内のカメラ・センサー、およびディープラーニングの技術が採用されており、レジに並ばず買い物できるのが特徴。

買い物の流れとしては、まず入店から始まるが、3種類の認証方法がある。1つ目がアマゾンアプリ上のQRコードをゲートにスキャンする方法で、アマゾンアカウントとアプリがあれば入店できる。

2つ目が「アマゾン・ワン」の技術。手のひらを生体認証デバイスへかざすだけでよく、スマホを取り出す手間もないのがメリットと言える。3つ目がアマゾンアカウントにリンクしたクレジットカード、もしくはデビットカードを挿入し、入店する方法だ。

店内では、通常通り買い物を済ませ、レジを介さずそのまま退店するだけ。入店時に利用した認証方法を用いて退店し、アプリにレシートが送られる仕組みだ。非接触で買い物できるだけでなく、店舗側もレジに係る作業がなくなり、人件費削減を見込める。

「ジャスト・ウオーク・アウト」の技術に加え、ホールフーズ・マーケットではチェックアウトシステムと決済システムを統合したため、セルフレジによる買い物も行える。カスタマーサービスでは、有人によるチェックアウトにも対応しており、アマゾンアカウントを持たない、または機械に不慣れな消費者でも店舗を利用可能だ。

TOUCH TO GO

株式会社TOUCH TO GOが手掛けるウォークスルー型の無人決済店舗サービスが、「TOUCH TO GO」だ。次に、さまざまな店舗で導入されている「TOUCH TO GO」の事例を紹介していく。

高輪ゲートウェイ駅

「TOUCH TO GO」の第一号店としてオープンしたのが、高輪ゲートウェイ駅構内に設置された店舗だ。入店時にゲートをくぐるが、QRコードやカードをかざす必要はない。

買い物中は、店内に設置された50台のカメラで消費者を追跡しつつ、重量センサーとあわせて、消費者が手に取った商品をリアルタイムで認識。商品は持参した買い物袋にそのまま入れても良く、衛生面が気になる共用の買い物かごを使用せずに済む。

決済エリアに立つと、購入商品と金額がタッチパネルに表示されるので、内容に問題がなければ決済を行い、誤りがあればバーコードスキャンで修正を行う。交通系ICカードで決済を済ませると、ゲートが開くため、退店して買い物は終了だ。

ファミリーマート

ファミリーマートはTOUCH TO GOと資本業務提携契約を締結し、東京都千代田区に「ファミマ!!サピアタワー/S店」をオープンした。

利用の流れとしては、高輪ゲートウェイ駅構内の店舗と同様。ただし、交通系ICカードだけでなく、クレジットカードや現金決済にも対応している。時間がない場合でも、スピーディーに買い物を済ませることが可能だ。

また、TOUCH TO GOの新プロダクトである極小地向け無人決済店舗システム「TTG-SENSE MICRO W」が、「ファミリーマート川越西郵便局/S店」に導入された。15㎡程度の広さでも、無人決済店舗の展開を可能とし、限られた省スペースを有効活用できる。

ガソリンスタンド

三菱商事エネルギー・タツノ・TOUCH TO GOの3社は業務提携を結び、ガソリンスタンド内に無人決済店舗を設置した。その背景には、大型トラックドライバーのニーズがある。

大型トラックは駐車場所が限定されており、コンビニや飲食店に寄れないことも多い。昨今においては、コロナ禍による時短営業も影響し、食事場所がより限られる点から、ドライバーの健康面も問題視されている。

そこで、道路の要所に設置され、大型トラックも入りやすいガソリンスタンド内にコンビニを展開。新たな店舗モデルで、大型トラックドライバーのニーズに対応することを目指す。

加えて、TOUCH TO GOを活用した無人コンビニ事業により、ガソリンスタンド業界で深刻化している人手不足の解消にも繋げる。

ローソン

ローソンは人手不足対策として、無人店舗の導入を検証している。ここでは、その事例を2つ紹介する。

深夜省人化実験店舗

神奈川県のローソン氷取沢町店にて、半年間にわたり深夜省人化実験が行われた。深夜0時~5時までの間、ローソンアプリのQRコード、もしくは顔撮影で入店を管理。たばこ・酒類の免許品や収納代行など、店員の対応が必要な商品・サービス以外であれば、人気のデザートやおにぎりなども購入可能だ。

精算はセルフレジ・スマホレジに対応。さらに、電子レンジや電気ポットの備え付けもあるため、通常のコンビニと大きく遜色ない実証実験となった。

レジレス実験店舗

ローソンは3ヶ月間、ローソン富士通新川崎TSレジレス店にて、レジ無し店舗の実証実験を行った。入店方法としては、専用アプリのQRコード、もしくは手のひら静脈認証と顔認証を組み合わせた、マルチ生体認証を利用する。

店内カメラと重力センサーが手に取った商品を識別し、店内を出ると、事前に登録したクレジットカードで自動決済されるウォークスルーの仕組みを採用。

マルチ生体認証では、スマホを持たずに買い物を済ませられ、消費者の利便性向上に繋がる。従業員の負担を軽減しつつも、新たな顧客体験として注目が集まった事例だ。

マルエツ「smart petit(スマート・プチ)」

マルエツはオフィス向けの無人店舗として、「smart petit(スマート・プチ)」をオープンした。コロナ禍で職場からの外出を控える人に着目し、オフィスの一角に売場を設置。スペースに応じて、飲料・菓子・即席麺など、100~500品目を展開している。さらに、事前予約による弁当配達にも対応しているのが特徴だ。

店舗の利用には、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの決済アプリ「Scan & Go Ignica(スキャン&ゴー・イグニカ)」を採用。今後は工場、配送センター、コールセンター、病院など、多様な職域に展開していく。

SECURE AI STORE LAB

株式会社セキュアは未来型無人化店舗「SECURE AI STORE LAB」を、住友新宿ビル地下1階にオープンした。事前登録を済ませることで、顔認証による入店が可能であり、手に取った商品も自動認識して、レジ待ち無しで買い物できる。

また、消費者が手に取った商品はAIが認識し、棚に設置されたモニターへ口コミ・おすすめポイントを表示。AIによる接客も可能としている。

AIは、店舗側にも大きな利点をもたらす。商品陳列数が減ると、AIがスタッフへ通知するため、品切れによる機会損失も防止可能できる。さらに、来店者の動線分析・表情分析や、手に取られた後に購入されなかった商品など、さまざまな分析が可能だ。

「SECURE AI STORE LAB」は、電子値札の実証実験も行っている。電子値札には、商品名・価格・QRコードを表示。QRコードを読み込めば、詳細な口コミを確認できるだけでなく、お気に入り登録やそのまま商品を購入するなど、店舗からECへの導線もしっかりしている。

加えて、POSデータと連携しており、商品・価格の変更情報を電子値札にも反映。他店との価格競争やセール時など、頻繁に売値の変更が必要な小売業だが、電子値札で作業工数の削減を目指している。

サイバーエージェント「株式会社CA無人店舗」

実際の無人店舗ではないが、サイバーエージェントが2021年11月に立ち上げた株式会社CA無人店舗を紹介する。株式会社CA無人店舗はAIを活用し、小売向けに無人店舗ソリューションの提供・開発を行うベンダーだ。

AIカメラや重量センサーを利用したウォークスルー決済機能はもちろん、AIによる販促・オペレーションの最適化サービスも充実。実装予定のAI接客アルバイターでは、店頭での問い合わせ対応や声掛けを行うことに加え、消費者が手に取った商品に対し、関連商品をおすすめするなど売上アップに貢献する仕組みが備わっている。

また、店舗サイネージへのメーカー広告配信も支援。インターネット広告事業をメインとするサイバーエージェントのノウハウを、広告事業の立ち上げに遺憾無く発揮できるだろう。

無人店舗のまとめ

今般の人手不足やコロナ禍も影響し、無人店舗の数は着実に増加している。AIといった先進技術を活用するため、導入コストこそ発生するものの、事業者・消費者の双方に大きなメリットがある。

試験的な運用もまだまだ多いが、小売業を中心に課題を解決するソリューションとして、リテールテック市場は今後も成長していくと予想されるだろう。

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