ヨークベニマル西ノ内店が食品890坪の「旗艦店」としてオープン、旧イトーヨーカドー郡山店跡再開発の売場を詳細レポート

2025.03.04

2025.03.03

ヨークベニマルは、福島県郡山市の商業施設「ヨークパーク」にヨークベニマル西ノ内店を2025年2月期が締まる2月28日にオープンした。スーパーマーケットの食品売場が先行オープンし、衣料売場は3月14日にグランドオープン予定。

交通アクセスの良い場所にある。建物はイトーヨーカドー時代を踏襲。しかし、内装などは真新しく生まれ変わった

同店は多層階の総合スーパー(GMS)の旧イトーヨーカドー郡山店跡を再開発し、商業施設「ヨークパーク」として再オープンするもの。建物はそのまま活用し、内装などは随所で新調している。

郡山市の中心部、うねめ通りと内環状線の交差点付近に位置し、郡山駅からは車で約10分の距離にある。施設前には福島交通のバス停留所「西ノ内二丁目」があり、もともとイトーヨーカドーが出店しただけに交通アクセスは良い場所にある。

ヨークベニマルとして福島県81店目、同社の地盤である郡山市内では19店目の店舗となる。そのため、周囲には同社の既存店が多数存在することから、必然的に差別化が求められる。

実際、同店から約700mの至近距離には13年1月オープンで、同社の旗艦店的なマーチャンダイジングを展開する「ブランディング店舗」の位置付けを持つ桑野店があるが、こちらもドミナントエリア内での差別化の意味もあっての特別な店だった。今回はさらにそこからの差別化、つまり「ブランディング店舗のさらに上」を目指すことになる。

しかも、ヨークパークはイトーヨーカドー時代の建物を使用しているため建物5層、売場4層の構成。4階は「キッズ・カルチャー・飲食ゾーン」、3階は「服飾・コスメ・雑貨ゾーン」、2階は「アパレル・雑貨・カフェゾーン」、そして1階が、ヨークベニマルによる「食品・アパレルゾーン」という「総合」施設。

結果として広域からの多数の集客を前提とした商売、マーチャンダイジング、いわばヨークベニマル流「GMS」の食品売場の実現が求められた。

半径1km圏内の人口は1万525人、世帯数7447世帯で、1、2人世帯が75%を占める。学校、病院をはじめ、会社やマンションが多いエリアとなっている。半径2km圏になると人口6万998人、世帯数2万9952世帯、半径3km圏は人口13万7248人、世帯数6万5266世帯。

同社としては、圧倒的な品揃えとサービスで日常の暮らしからハレの日まで「それぞれの目的が叶う」地域ナンバーワンの品揃えと地域密着、コミュニティ促進をテーマに、日々のおかずや、個食、簡便商品、土産やギフト品などの取り扱いを拡大し、鮮度、味、旬、商品技術などを「極め」、お客に満足してもらえる品揃えを目指すとしている。

ハレからケまで、総合的に地域の需要に応える、ワンストップ性を高めた地域ナンバーワン店舗を目指すということになる。GMS跡地ということで、多層階のショッピングセンターを形成し、さらにヨークベニマルとしても食品の品揃えの充実に加え、久しぶりに衣料品を一定程度取り扱うなどより「総合」性を高める。

直営部分の初年度年商は42億7000万円のハイレベルを目指す

初年度年商見込みは、食品と住居、衣料品を合わせた直営部分で42億7000万円のハイレベル。それを実現するために特に主力の食品売場はイトーヨーカドー時代より広げ、約890坪をあてた。そのため以前はエレベーター、階段の部分で売場が区切られていたが、今回はそれらを加工食品売場が囲むような形となっている。

食品売場のレイアウト図。イトーヨーカドー時代より売場を広げ、中央少し下にあるエレベーター、階段より下の部分にまで売場を確保した

「イトーヨーカドーの特徴であった豊富な品揃えに加えて、ヨークベニマルの強みである地域性、鮮度、出来たて、ライブ感を加味した売場にしたい。それが実現できればしっかり(計画年商が達成)できるのではないかと思っている。2階以上の構成も含めて、『わくわく感』(を実現する)しかない。ヨーク・ホールディングスを挙げて絶対に成功させよう。ヨーク・ホーディングス全体で盛り上げていこうと考えている」(大髙耕一路社長)

テナントには「アカチャンホンポ」、福島県初出店の「ロフト」などグループ企業の他、こちらも福島県初出店となるアインズ&トルぺ、さらにユニクロ、大創産業の3フォーマット複合店、ABCマートとスポーツなど約30店が入る。まさにグループ挙げての一大プロジェクトになっている。施設全体の年商見込みは84億円となっている。

「(ヨークベニマル)全社の旗艦店、(ヨーク・ホールディングス)グループのモデル店になるようにがんばりますと、(セブン&アイ・)ホールディングスの経営会議で宣言した」(大髙社長)

一方で、特にイトーヨーカドー時代は18時以降の集客に課題を抱えていたが、この辺りの「夜の集客」も計画年商達成の鍵になると見ている。

鮮魚では「四季折々の旬の魚を食卓に」をテーマに、全国各地の市場を活用し、丸魚、活物の有人販売を実施。また、希少部位を含めたマグロ売場の充実を図り、「鮮度、味、品揃え、技術」で満足してもらえる売場を目指す。鮮魚の売上高構成比計画は7.9%とそれほど高くはないが、これは衣料品の13.6%を加味したものであり、食品内では9%強を占める換算となる(他部門も同様)。

第1主通路突き当たりの第2磁石には鮮魚売場の対面を大々的に展開。水槽も設置している。全社的には鮮魚強化の一環として各ゾーンのモデル店で月に1回、丸魚を前面に打ち出す「市場祭り」を実施する取り組みを開始した
マグロは核商品として多様なアイテムの展開とすることでデスティネーション性を高める
鮮魚はマグロの強化だけでなく、オープン日にはトラフグの刺身や昆布〆、なめろうといった商品も並んだ
店内に水槽があることを生かし、「朝〆魚」を展開。鮮度を訴求する

精肉の和牛コーナーでは、地元のヨークベニマルオリジナル厳選和牛「福島BEEF」をメインに、松坂牛、ステーキコーナーでは赤身の品揃えにこだわる。精肉の売上高構成比計画は13.6%。

精肉はプロセスセンターを活用せず、あくまで店内切りにこだわる。同社の最近の売場を象徴するL字型の平ケースを使って和牛を売り込む。地元の和牛「福島BEEF」を訴求するが、オープン日は松阪牛を売り込んだ
大型店のため、L字型の平ケースを2基設置
「生鮮惣菜」ではないが、惣菜部門で精肉との共通素材として松阪牛を用いた牛めし重を商品化し、精肉売場でも展開していた
精肉ではラム肉もコーナー化
鶏は骨付き肉をコーナー化するめずらしい展開
肉惣菜的な位置づけのローストビーフと馬刺し。馬刺しは最近はロス対策の意味も込め、冷凍での展開がメインになっているが、同店ではしっかり生で展開。多数の集客を前提としたGMS的な展開といえる

青果のカットフルーツコーナーでは、果物をトッピングしたプリン、杏仁豆腐や焼き芋ブリュレなど、店内で加工した商品を提案。また、フラワーコーナーでは、切り花からアレンジメント、観葉植物や季節の鉢花など、季節の訪れを感じられるような売場づくりを実施する。売上高構成比計画は、野菜が7.8%、果実が3.4%、青果計が11.2%。

広大な青果売場。柱にはデジタルサイネージが設置されている
壁面冷蔵ケースも陳列線が長いため、単品大量陳列を仕掛ける
花売場も広く取っている
既存店の大型店でも作業場を設けてのカットフルーツ売場展開はあるが、今回は売場尺数がかなり広くなっている
売場の広さを生かし、デリカ側で販売されることが多いサラダも青果売場で販売している

惣菜は同社最大級の売場スペースを確保し、生米を店内で炊き上げたおこわや弁当に加え、健康を意識した体にやさしい惣菜を取りそろえる。また、地元食材を使用した新しいジャンルの洋風総菜をラインアップする。惣菜の売上高構成比計画は7.7%。

デリカでは、カテゴリーごとブランドを付け、専門店のような売場づくりとしている。ブランド化自体は以前からあるが、今回は商品、売場づくり共に大幅に進化
デリカ側の売場の先頭には米飯売場を設置
多様な商品化をするおこわでは量り売りも実施する
焼き鳥、天ぷら、コロッケなどはカバー付きの什器を使用の上、ばら売りにチャレンジ
店内での作り込みにこだわり、見栄えも華やかな「レストランデリ」
工場製の冷惣菜シリーズが定番としてしっかり売場を支えることで、注力する店内製造の商品に集中することができる
デリカ売場でも店内製造を含めたサラダ、つまみ系の冷惣菜を展開
定番中の定番、「自社製 ぽてとサラダ」は工場からバルクで運び、全て店内でパック詰め。作業的には非常に大変だが、工場でパック詰めにすると、すき間が増えて物流が非効率であることと、表面から酸化が進み、鮮度が落ちてしまう問題があるため、あえて販売する直前に盛り付けることにこだわっている

寿司ではマグロを使用した特選握り寿司や海鮮丼、具材にこだわったおにぎりを提案。寿司の売上高構成比計画は3.3%。

寿司はあくまでデリカで展開。マグロのコロ(ブロック)を仕入れ、商品化する店舗が増えている。そのため、マグロは赤身から大とろまでバラエティに富んだ商品化が実現している

なお、今回、商業施設にイトーヨーカドー時代から出店していたインストアベーカリー「ROMIO(ロミオ)」が改めて出店するため、ヨークベニマルとしてはインストアベーカリーは設置していない。

食品テナントとして出店している「ROMIO」はイトーヨーカドー時代から出店していた
食パンに粘度の高い甘いクリームを塗った「クリームボックス」は郡山のご当地パンといわれるが、ROMIOはその発祥とされる。オープン日は特設売場で販売されるほどの超定番商品

ただし、自社工場製でラインアップも広がってきたサンドイッチや店内で生地を広げ、90秒で焼き上げるピザや生地を用いた洋風惣菜などは展開する。洋風惣菜はシェフが常駐し、メニューを実験しながら開発を進める。

ピザと生地などを用いた洋風惣菜のコーナー
ピザは生地から店内で製造
サンドイッチは全て自社工場製

デイリーでは店内で加工したワインに合うカットチーズや生活スタイルに合わせた即食商品コーナーなど、「ライフスタイルアソートメント」をテーマに、季節や食卓シーンに合わせた品揃えを充実させる。デイリーの売上高構成比計画は19.5%。

和日配では単価の高い豆腐も差し込む他、大豆関連で地元企業のおからドーナツなどまで品揃えを広げている
納豆でも福島県の企業の商品をそろえてバラエティを打ち出している

生鮮だけでなく、グロサリーも品揃えを徹底強化されていて、今回新規取扱商品は約1000アイテムに上る。そのうち地域商品も100アイテムほど差し込む。

グロサリーの酒コーナーは圧倒的な品揃えでさまざまな食のシーンに対応。また、「地元調味料」の充実や「洋風調味料」の品揃えの拡大、「簡便食品」のコーナー化を図る。加工食品の売上高構成比計画は21.1%。

酒は広大な売場で、ワインだけでなく日本酒やウイスキーなど各カテゴリーを深掘り
酒でも地域商品を差し込む
冷凍食品も売場を広く取った。専門店を冠した商品やワントレーの商品なども充実
店内カットのカットフルーツを急速冷凍した商品などにもチャレンジしている
グロサリーはコーヒーなど、特定のカテゴリーの品揃えを強化。棚板の照明をスポット的に使ってアクセントを付けている
ドバイチョコレートなどトレンド商品も提案

また、「ペットフード」は、鮮度感が高く、よりおいしさを追求した「冷凍食品」を新規に取り扱い、品揃えを充実させる。日用品の売上高構成比は2.1%。

ペットフードの冷凍食品を取り扱う
売場が広いことから、非食品の品揃え、売場も充実させている

衣料部門では、売場面積は約489坪と500坪近いスペースを確保し、子育て世代からシニア層まで幅広い年代の日常着、服飾雑貨、寝装関連までをトータルで提案。ファミリーがそろって買物を楽しめる空間を目指す。ゴールデンベア、クロコダイル、F.O.KIDS、東京イギン、ワコール、トリンプ、グンゼ、西川などのブランドを取り扱う。直営衣料品の売上高構成比計画は13.6%、初年度年商で約5億8000万円と高い目標。

アイテム数は、食品5部門で1万3115、住居が4375、デリカが惣菜280、寿司65のデリカ計345。

大髙社長は、この特別な店の位置付けを次のように表現する。

「この取り組みが全店に横展開できるかというと、建物の特性も含めて丸ごとそのまま生かせることは多分ないと思う。一方で、今年の目標として各お店が『考える』組織になってほしいと掲げていることもあって、各お店がベンチマークとして見に来たときに、1つ1つの売場の、小さな取り組みであっても、自分たちのお店の課題だったり、目標に何か1つでも役に立てるものがあったら、ぜひ持って帰ってほしいと思っている。ライブ感とか、カットフルーツなどのいろいろな取り組みができると思うし、グロサリーもコーヒーだったり、ワインだったり、ペットフードだったり、いろんなものを、テーマを決めてそれぞれ取り組んでいる」

「衣料も今回、大型(売場)で取り組んでいる。やはりヨークベニマルが食品スーパーとして衣料に取り組む意義が、私はあると思っている。地域の方々が日常に必要なものがどうしてもある。下着から高齢者の方々の介護の用品も含めて、われわれ食品スーパーのワンストップでしかできない品揃え、サービスを求めているお客さまが多数いらっしゃるというのは、われわれの出店エリアの中でははっきり声としていただいている」

大髙耕一路社長

全体を通して、この店をターゲットに相当の注力がなされたことが分かる品揃え、売場づくりにあふれた同店。まさに「ヨークベニマルがGMSの食品売場をつくるとこうなる」といった趣の売場だが、実際、オープン日には非常に大きな売上げを挙げた模様だ。

一方で、前述のようにイトーヨーカドー時代に課題であった18時以降の売上げ、また、広大な生鮮の売場を平日にどのようにこなしていくかなど、取り組みが大々的であるがゆえに通常店以上の難しさもある。今回の大きなチャレンジを中長期的に見守っていきたい。

広域集客の特別な品揃えの店ということで、買上点数は通常店より1点ほど多い12点程度、客単価は通常店より100円ほど高い約2600円を計画している。

ヨークベニマル西ノ内店概要

所在地/福島県郡山市西ノ内2-11-40

オープン日/2025年2月28日

営業時間/1階食品売場:2月28日~3月16日は10時オープン、3月17日からは9時30分~21時、2階衣料売場:10時~20時

駐車台数/1305台(施設全体)

駐輪台数/350台(施設全体)

売場面積/食品:2942㎡、衣料:1616㎡(ヨークベニマル)

年商見込み/42.7億円(ヨークベニマル、初年度)

施設全体の年商見込み/84億円

店長/吉田恒男

従業員数/205人(正社員21人、地元採用者184人)

商圏/人口1万525人、世帯数7447世帯(1km圏内)

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