角上魚類所沢店の強さの源泉を見る! 出店から26年を経て所沢店の売場環境を最新鋭にリニューアル
2024.08.02
2024.07.29
鮮魚チェーンストアの角上魚類ホールディングスが角上魚類所沢店を7月12日、リニューアルオープンした。同社は鮮魚専門店を23店運営し、2024年3月期の売上高は約426億6000万円に上る。
所沢店は約26年前の1998年3月のオープン。93年に埼玉県初の単独出店となった川口店(埼玉県川口市)で想定を超える来客が続いたことから、新たな単独店舗の出店を目指した末に同じ埼玉県内に出店した経緯がある。
同社では本社近くの新潟県寺泊港をはじめ、新潟市場、豊洲市場から鮮魚を店舗へ直送し、販売している。
鮮魚はさまざまな加工技術を必要とする他、鮮度の重要性の高いという、いわば取り扱いの難易度が高い商材の代表といえる。
スーパーマーケット(SM)の生鮮3部門として、青果、精肉に並ぶ主力部門の位置づけを占めるが、その取り扱いの難易度の高さゆえ、SMの多くが赤字であるといわれている。作業人時の多さ、ロス率の高さなどがその原因だが、さらに昨今は、魚自体の消費が落ち込むことで売上面でも厳しい状況に置かれている。
そのため、消費が高く、かつ利益の出やすい精肉を重視し、鮮魚については品揃えや売場を縮小する企業も増えている。
一方で、こうした時代だからこそ、あえて逆張りの意味も込めて鮮魚を強化するSM企業も存在する。丸魚などの対面販売による活気やコミュニケーションのある売場づくり、あるいは切り身、サクといった加工から刺身盛り合わせ、カルパッチョなどの鮮魚を用いたメニュー商品、さらに寿司といった形で加工度を高めることで付加価値を加えながら売上げも取っていくといった手法が追求されている。
もちろん、「利は元にあり」ということで、調達を追求することも重要になる。
その意味では、角上魚類は「鮮魚のみ」で経営をしている鮮魚専門店であり、現代の日本において「鮮魚」を販売する上での貴重なナレッジを持っているといえる。
対面の丸魚は60種類、年商目標は21億円
今回、所沢店ではリニューアルによって現在展開されている既存ロードサイド店舗同様、通路幅を広く確保。壁面には刺身を切る様子などが見えるガラスをはめ込んだオープンキッチン仕様を導入した。
その流れで、壁面の「鮮魚対面販売」売場はしっかりと維持。一方で、改装前は壁面の対面販売売場と、売場内の島の対面販売売場の2カ所があったものを、今回、通路幅の拡大のため、島対面をなくし、壁面の対面販売に集約。
通路幅については以前から課題となっていたことから、今回、実験的に島対面をなくしたが、その代わりに壁面側の対面販売売場を4尺分広げ、総尺数24尺という同社でも最大規模の対面販売売場とした。
品揃えについては、丸魚以外に刺身、寿司、惣菜、自家製漬け魚など600点以上取り扱う。これは改装前と変わらず。
丸魚は、例えばリニューアルオープン日には60種類以上を各市場から調達。24尺の対面販売売場での展開は非常に活気がある。
所沢店の売場面積は約400㎡だが、リニューアル後の年商目標は21億円となっている。物量もすごいが、やはり鮮魚専門店としてのノウハウは、売体変更を含む加工の技術と売り切りの技術といえるだろう。同店の営業時間は、平日は10時、休日は9時から19時までだが、その19時までしっかりと売り切ることが、ポイントとなる。
「鮮度を扱う部分に関しては、やはりわれわれは慣れている。もともと鮮度が良いものを維持する保鮮が当たり前の感覚。われわれの店舗運営原則の最初に来るのが鮮度。そこは絶対の保障がありつつ、それに加えてどういうものを仕掛けていくか」(飛田和幸夫・営業統括本部第一営業部部長)
寿司、惣菜が主力カテゴリーに、いかに付加価値を作り出すか
一方で、もちろん、生産性向上や利益確保の方向へのシフトもしている。自家製漬け魚は埼玉県鶴ヶ島市にある自社センターで一括製造。同センターでの製造も増加しており、店舗での作業効率改善に寄与している。
また、レジは昨今ではセミセルフレジ主体になってきている。
昨今では、やはり家庭で料理をしない傾向が強まっているためか、惣菜の売上高構成比が上がってきていて、寿司を除いて揚げ物、焼き物、煮物、弁当などを合わせると売上高構成比で10%を超えている店も出てきている。所沢店ではリニューアル後の売上高構成比は9%程度になると見込んでいる。
また、鮮魚、特に本マグロを主力に取り扱っている強みを生かした寿司は同社の主力カテゴリーとなっていて、こちらは売上高構成比で25%程度ある核カテゴリーになっている。寿司飯は外部から調達しているが、配合を指定した酢、国産ブレンド米としている。炊いた状態で仕入れ、店内の寿司ロボットでしゃり玉にしている。
「以前は鮮魚が一番だったが、やはり入荷が少なくなってくる中、いかにわれわれはそれを加工していくかが重要になっている」(飛田和部長)
もともと鮮魚にはそれほど値入れは入れられないが、加工によって付加価値を上げる流れは刺身などにもあった。それが寿司や惣菜へとシフトしているということだろう。ここにもやはり鮮魚専門店のノウハウが生きる。「やはり、加工の技術が一番。ロスが少ないことがポイントになる」(飛田和部長)
目下、やはり円安による影響はあり、商品の半数以上を占める輸入品の価格が上がるなど調達が大変になってきているという。
そうした中にあって、いかに付加価値を付けながら利益率を高め、かつ鮮度の高い状態で売り切ることでロス率を減らすか。
この辺りの戦略は、SMの鮮魚売場が今後、向かう方向性とも共通となる。ただし、いずれにしても「鮮魚が強い」という強いイメージがこうした構図を支えているともいえる。まずは「鮮魚」、特に定番商品である「マグロ」についての信頼をいかに得ることができるかということになるだろう。
角上魚類所沢店概要
所在地/埼玉県所沢市北中2-272-1
リニューアルオープン日/2024年7月12日
通常営業時間/(平日)10時~19時、(土・日・祝日)9時~19時
売場面積/401.07㎡
駐車場台数/総計90台
アクセス/公共交通機関:西武鉄道池袋線小手指駅最寄り、自動車:関越自動車道所沢ICより約25分