イトーヨーカ堂の新フォーマットが原宿竹下通りにオープン、エンタメ特化型店舗 TOYLO MART原宿店が狙うもの
2025.03.05
イトーヨーカ堂が東京の原宿に新フォーマットをオープンした。3月5日、JR原宿駅から徒歩数分の竹下通り沿いにエンターテインメント(エンタメ)特化型店舗の「TOYLO MART(トイロマート)原宿店」が開業した。

出店場所は人通りの非常に多い竹下通りに面した建物内で、売場面積は約30坪の小型店だ。この場所自体はイトーヨーカ堂が1980年代から借りている物件で、衣料品店の「グッディ原宿店」(以前は「グッディハウス」の店舗名)としてテストマーケティング的な位置づけの店舗として営業を続けてきた。
2020年の新型コロナウイルス対策によって来店客が減り、売上げに大きな影響を受けたこともあって、今回のトイロマートへの転換に先んじて21年から今回のトイロマートの主力商品であるキャラクターグッズの取り扱いを開始。結果、売上げは順調に回復し、22年には衣料品店時代のコロナ前の売上げを上回り、23年、24年にも大きく売上げを伸ばしてきた。
そうした背景もあって今回、24年から同社が自主企画衣料品の撤退などの構造改革に伴ってエンタメ商品一色に変更することを決断、今回の新フォーマットの開発に至った。

もう1つの背景として、イトーヨーカ堂では21年4月からファミリー向けの玩具体験型売場として「トイロパーク」を展開してきた。600~800坪の規模で、現在、ショッピングセンターのアリオなど大型施設に入るイトーヨーカドー内に7店展開。
「従来の子どもの『ものがそろう』売場から、子どもが『遊べる』売場に大きく変更している。来店動機は従来は買物だったが、子どもが遊べる売場ということで、来店動機を買物ではなく『遊ぶ』に変更。ポイントとなるのは子どもが『行きたい』と言う売場。若いファミリーはとにかく子ども中心に行動する。お子さまが『行きたい』と言えば、家族がそのまま動くであろうということで、子どもが行きたいと言う空間、場を作っている」(山幡耕司・専門店事業部スクール&ホビー部統括マネジャー)
ただし、少子化もあって子どもの数自体は減っている。実際、イトーヨーカ堂でも子ども関連の売場の集客も悪化していた。
「ただ、週末にちょっと大きな公園に行くと、若いファミリーがものすごくたくさんいると常々思っていた。私たちは、この公園からこのファミリーを集客すべきであろうと強く感じた。競合は同業他社ではなくて、公園だと考えた」(山幡統括マネジャー)
公園のような「場」を作るために、トイロパークでは玩具を売るだけでなく、「日本で一番おもちゃで遊べるおもちゃ屋さん」を目指し、かつ「有料の屋内遊戯施設を導入」するなど、物販を超えた施設としている。結果としてトロイパークへの転換後は子ども関連の売上げ、客数は1.3~1.8倍に大きく伸長し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でも「子供にとって夢の国」「子供が帰らない」「大人でもワクワクする」といった声が投稿されるようになった。
施設全体への効果も見られ、例えば、23年4月に導入したららぽーと横浜(横浜市都筑区)ではその他の改装とも合せた効果ではあるが、23年は食品で5%ポイント、衣料・住居で15%ポイントの売上前年比の押上効果が見られた上、24年もそこからさらに3%伸びるなど、水準を維持している
24年11月に導入したアリオ亀有(東京・葛飾)でも3月~10月のトレンドと比べ11月~25年2月の数字では食品で2%ポイント、衣料・住居で10%ポイントの売上前年比の押上効果があったという。
3つの「トイロ」フォーマットでさまざまなニーズに対応
今回のトイロマート原宿店は「トイロパーク」の新しい店舗の位置づけとなるが、成長分野の商品を集約したアンテナショップのような存在となる。「戦略的拠点として活用していきたい」(山幡統括マネジャー)。
同社としては、流行の発信地である原宿エリアに出店することで、「TOYLO(トイロ)」ブランドの認知 拡大とさらなる強化を目指すとしている。
キャラクターグッズ、コレクショントイ、カード、TVゲームなどを中心としたトレンド性の高いエンタメ商材を豊富に取りそろえ、訪れるたびに新たな発見がある「“ワクワク”する店舗」を目指す。







特に同店では大人、あるいは増加しているインバウンドの外国人もターゲットとしている。「子どもが年々減っている中でも、おもちゃの市場は大きくなっている。これは大人の参入しているため」(山幡統括マネジャー)、トイロマートについては大人もターゲットに入れた。
イトーヨーカ堂ではこの「トイロ」ブランドを「トイロ戦略」として戦略的に活用し、3つの「トイロ」を設定。トイロパークは「遊び」、トイロマートは「トレンド」の位置づけとなるが、もう1つ、文房具やスクール用品を中心とした「TOYLO SCHOOL(トイロスクール)」を60~80坪の規模で「学び」の位置づけとして現在、3店を展開している。今後、既存店でも売場の状況を踏まえ、「トイロスクール」の看板を掲げていきながら拠点を増やしていく意向だ。
今後はトイロマートで限定商品やイトーヨーカドーの既存店舗では取り扱いのない商品のテスト販売を実施しながら、お客の反応や売れ行きを分析しながら今後のトイロパークの品揃え強化と拡大につなげていく流れを想定。イトーヨーカドー店舗への来店動機を創出していく。
トイロマートで情報発信をすることで認知度や展開商品を紹介、その関連商品について深い品揃えができる売場面積の広いトイロパークへの送客を図る。さらに、どちらかというとトロイパークはハレの日の買物を想定し、逆に日常性の高い文房具、スクール用品などを扱うトイロスクールを日常の買物の場として位置付ける。
「昨今のキャラクター商品を見ていると、本当に欲しいものがあれば、県をまたいで(遠くまで)買いに行くのも当たり前になっている。ほぼ『押し活』に近いので、この形は成り立つと思っている」(山幡統括マネジャー)
また、現在、トイロパークは関東の他、大阪市のあべの店で展開しているが、大阪では例えば道頓堀といった繁華街にトイロマートを出店し、あべの店などへの送客を図るというように都市圏ごとにこうした3つの「トイロ」を用いた送客戦略を構築していく方針。
さらに今後、「トイロ」でのロイヤルティ施策やトイロブランドでの商品開発なども視野に入れる。また、トイロパークはイトーヨーカ堂関連の施設では10店ほど展開が可能と見ているが、今後はグループ以外の施設への外部出店もしていきたいという。
TOYLO MART原宿店概要
所在地/東京都渋谷区神宮前1-16-2竹下館高松ビル1階
オープン日/2025年3月5日
営業時間/10時30分~20時
売場面積/99㎡(30坪)