セブン&アイ5月に社長交代、元西友トップのスティーブ・デイカス氏の就任など施策を発表

2025.03.07

セブン&アイ・ホールディングスが株主価値最大化に向けた経営体制、資本構造および事業の変革のための施策を発表した。

今後、スーパーストア事業などを分離し、コンビニエンスストア事業に集中することも含む戦略的施策の加速に向け、グループ経営体制を刷新。筆頭独立社外取締役として取締役会議長を務めるスティーブ・デイカス氏が井阪隆一社長の後任として、定時株主総会を経て代表取締役社長兼CEOに就任する予定。井阪社長はその後、特別顧問を務める。

社長交代などの施策を発表した井阪隆一氏(左)とスティーブ・デイカス氏

デイカス氏は2022年5月に取締役に就任し、24年4月には取締役会議長兼筆頭独立社外取締役に任命された。さらに在任中、デイカス氏は戦略委員会、特別委員会の委員長として、グループ価値創造を追求する戦略を監督する上で重要な役割を果たしてきたとしている。

同社によると、デイカス氏は日本語が堪能で、日本国内及びグローバルな消費財・小売企業における、豊富な経営、財務、業務経験を有しているという。

また、北米でコンビニエンスストア事業として「7-Eleven」を展開するSEI(セブン-イレブン・インク)の株式について26 年下半期までに、米国の主要な証券取引所のいずれかに新規株式公開(IPO)する方針を決定。

SEIのIPOによる資金は後述する自己株式取得にあてることで株主価値を向上させるが、同時にSEIの成長にもつなげるとしている。

上場後もセブン&アイ・ホールディングスが引き続きSEI株式の過半数を保持し、上場子会社となることでシナジーを維持する一方、SEIとしてもより柔軟な財務戦略を取ることが可能になり、北米最大手のコンビニチェーンとしての評価をさらに高められるとする。

以前から非連結化の方針を発表していたスーパーマーケット事業と専門店、その他事業を含むスーパーストア(SST)事業についてはヨーク・ホールディングスとしてコンビニエンスストア事業との分離をしていたが、今回、同社のSST事業を吸収分割の上、投資ファンドであるベインキャピタルの関連事業体の特別目的会社(SPC)に8147億円(53億7000万ドル、1ドル151.46円換算、以下同)で譲渡。

譲渡後、SPCにセブン&アイ・ホールディングスが35%強、創業家である伊藤家、大髙家が5%弱について再出資を行い、合わせて40%の株式を保持する体制とし、セブン&アイ・ホールディングスとして持分法適用会社化、さらにSPCを「ヨーク・ホールディングス」に商号変更する。本件取引については25年9月に完了予定としている。

SEIのIPOとSST事業グループの非連結化で創出される資金については、2兆円(約132億ドル)の自己株式取得に活用することで、株主への還元策とする。SST事業グループの非連結化完了時点から開始し、30年度までに完了させる予定。

さらに金融事業のセブン銀行についても非連結化。セブン銀行株の保有比率を40%未満に引き下げることで、コンビニエンスストア事業により集中する体制を強化する。

セブン&アイ・ホールディングスは、カナダなどでコンビニを展開するアリマンタシォン・クシュタール社(ACT社)による買収提案を受け、デイカス氏は委員長とする特別委員会で代替案を含めた検討を重ねてきた。

2月28日には特別委員会に対し、創業家として伊藤興業などを通じて買収を模索していたグループから買収提案撤回の連絡を受けるに至り、それも踏まえた形で今回の施策発表となった。

次期社長に就任するデイカス氏は、「スピードはとても重要だ。われわれはまだ十分なスピードで行動できていない。われわれはお客さまにより良いサービスを提供するよう努める必要がある。株主還元の改善も忘れてはいけない。過去にはこの点に十分な注意を払ってこなかった。これは今後、変わっていく」とする。

約16年前の09年にセブン-イレブン・ジャパン社長に就任、16年からはセブン&アイ・ホールディングスの社長として約9年間グループを率いた井阪社長は「心残りはない。思い切ってやった。自分のできる範囲でしっかりやったと思っている」と語った。

一方で停滞しているとも指摘される国内でのコンビニ事業の今後については、「ドラッグストアもスーパーマーケットも中食、グラブトゥゴー(持ち帰り惣菜)に入ってきて、レベルも上がってきている。いままで持ち帰りの惣菜、おにぎりはセブン-イレブンが圧倒的に強かった。そこに面で競争の範囲が広がってきている。次に向かっていかなければいけないのがメイドトゥゴー(店内で最終加工する惣菜)の世界だと思う」と語り、店内のフライヤーで揚げたてを提供するカレーパンの事例を挙げた。

このメイドトゥゴーが今後の鍵となるとの見通しに対してデイカス氏も同様の認識を示し、「グローバルトレンドになっていると思う」と語った。

次期社長に就任予定のスティーブ・デイカス氏。日本ではウォルマート傘下の西友のトップを務めるなど小売業の経験が長いが、小型店のコンビニチェーンの経営については22年からの約3年間のかかわり。一方で父親がセブン-イレブンの加盟店オーナーであったため、10代のころ金曜日、土曜日の深夜シフトで働いた経験も持つ。友人が遊んでいる週末の夜のシフトが「いやだった」と語った

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