ローソンストア100が20周年を機に新戦略を発表、お客の「ライフスタイル」に寄り添い、売場を進化させ続ける店に

2025.05.16

2025.05.15

ローソンの子会社のローソンストア100が運営する「ローソンストア100」は、2005年5月の1号店オープンから今年で20周年目を迎える。ローソンストア100は、生鮮を含めた商品を値頃で販売し、また、時短、簡便といった要素を強化していることに特徴を持つ。

05年5月27日、「毎日の暮らしを支えるお店」というコンセプトの下に東京都練馬区に1号店をオープン。スーパーマーケット(SM)の品揃えとコンビニの便利さを融合させたフォーマットとしてスタートを切った。その後、同様のコンセプトを持つフォーマットを展開していた九九プラスとの合併などを経ながら成長を続けてきた。

新型コロナウイルスの影響が色濃かった21年7月にはストアコンセプトを「献立応援コンビニへ。」に変革。コロナ禍で外食、中食が内食にシフトする中、毎日の献立を支える商品展開を強化するなど、時代の変化に合わせた施策を打ってきた。

ブランド名にあるとおり、もともと100円(本体価格)均一のフォーマットとして展開が始まったが、次第にそれ以外の売価が増え、現在では100円売価の構成は2割程度にまで下がっている。

PBの刷新と生鮮カテゴリーのリブランディング

ブランド誕生20周年を迎えたことも踏まえ、今回、プライベートブランド(PB)を刷新すると共に、野菜を中心とした生鮮カテゴリーのリブランディングも進める。同社としては、「お客のライフスタイルの変化に合わせてローソンストア100も進化していく方針」を強調する。新型コロナウイルスの影響も落ち着くなど、生活者のライフスタイルも大きく変わったこともあるだろう。

5月13日に開催された「ローソンストア100ブランド20周年記念発表会」ではリニューアルされたプライベートブランドの「LAWSON VALUE LINE」が86種、展示された

「20年の節目を迎えるに当たって、われわれとして次のステージへどのように進化していくかを考えた。結果、これまでの『安価、時短、簡便』といったキーワードも前提としながらも、新たに『あたらしい・おいしい・うれしい』の提供価値を付加していくことで、次の20年につなげていきたいと考えている」(小栗知義社長)

20周年に際して、今後の方針を説明する小栗知義社長

「あたらしさ」については、もともと同社は1号店のときからコンビニとSMのハイブリッドの新たなフォーマットとして、新しい価値を提供していきたいという方針を持っていた。今後も変化し続けるライフスタイルに対し、常に「あたらしさ」を提供することを改めて確認する。

おかずが1品だけの「だけ弁当」シリーズ、1000kcalを大きく超えるサンドイッチ、ドーナツの「THE カロリー」シリーズなど、尖ったコンセプトを持つ商品はしばしば話題になっている。

5月14日から20周年を記念して現在は販売していない一部商品を復刻商品として発売する企画も用意。18年発売の商品をイメージした「20周年祭 復刻!悪魔のおにぎり」(138円、本体価格、以下同)、13年発売の商品をイメージした「20周年祭 なつかしの!リングドーナツ4個入」(135円)、12年発売の商品をイメージした「20周年祭 復刻!濃い味クリームチーズ」(178円)。

既存客に加え、今回のきっかけに新規客の獲得も狙う。「今後も、商品構成をアップデートしていく中で常に市場に対して、お客さまに対して『あたらしさ』というものを研ぎ澄ましていこうと考えている」(小栗社長)

提供価値の2つ目の「おいしい」については、弁当、おにぎりなどコンビニを代表するような即食商品を強化する他、生鮮商品、ドライ食材の品揃えをSM並みに強化する。

3つ目の「うれしい」については、季節ごとの新商品との出会いや店頭イベントなどを通じて、「思わず笑顔がこぼれる様な“小さなうれしさ”を提供」するとしている。同時に、ローソンストア100での「買物行動」そのものも重視。

「購入するプロセスが非常に楽しい、うれしい、喜びがあるといった声をたくさんいただく。これからも商品構成としての新しさをどんどん提供していきながら、お客さまがワクワクするような購買体験を提供していく。もちろん、われわれはバリューポジションを担っているブランドになるので、非常に価格競争力のある価格設定をしていく。価格戦略でもリーズナブルな価格でお客さまにうれしいを提供していきたい」(小栗社長)

「ライフスタイル」に焦点、それに沿って進化する

これらを踏まえた上で、次の20年を迎えるに当たってコーポレートビジョンを刷新した。刷新された「2025年新・コーポレートビジョン」は3段階からなる。まず、グループ理念として、ローソングループの「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」があり、それに基づくミッションとビジョンがあるといった形だ。

今回、このうちのミッションとビジョンを刷新した。ミッションは「食と暮らしを支え、笑顔・安心・これまでにない価値をお届けします。」。ビジョンは「毎日の生活を豊かにするライフスタイル・ブランド」である。

特にこの中にある「ライフスタイル・ブランド」は同社にとって大きなキーワードになる項目といえる。「さまざまなライフスタイルの変化がある中で、われわれとしてもライフスタイルの進化に伴って、われわれの売場、商品構成、マーケティングを進化させていく。それによってお客さまの生活を支えるブランドになろうということが込められている」(小栗社長)

その上で、25年以降、重点を置く戦略テーマを3つ設けた。

1つ目は、青果の改革の「LS marché」。同社にとっては非常に重要性が高い生鮮の青果の売場を強化する。「青果、野菜、果物の売場はブランドのDNAとしても非常に大切な売場でもあるし、お客さまに対して大きく貢献できている売場であると認識している。一方で、これまでと同じやり方を続けていても進化は難しい上、お客さまへの貢献を最大化できない」(吉田貫臣・上級執行役員商品グループ統括)

6月から青果の売場を大きく刷新、「LS marché」のブランドを掲げる。LSはローソンストア100の頭文字を取ったもので、marchéはフランス語で市場を表す。市場のようにカラフルで、旬、鮮度が感じられる雰囲気を実現することを意図している。

青果は仕入れルートの拡大、拡充しながら、旬や鮮度にこだわった商品を豊富な品揃えを目指し、取り扱いの品目数を約1.5倍に増加させる。また、売場の見やすさや鮮度感などの演出面の強化を図り、POPの見直しや買い得コーナーの設置なども実施していく。

生鮮の青果を重視、商品、売場を強化した上で「LS marché」と売場のブランドを掲げる

2つ目は、「LAWSON VALUE LINE」。これは05年から展開するプライベートブランド(PB)の「バリューライン」を、20周年を機にリニューアルし、ロゴを刷新した上でブランドそのものをアップデートしたもの。こちらは品目数で約3倍をターゲットに拡充する。

その上で、ロゴデザインには複数の意味を持たせた。まず、バリューラインの頭文字のVとLの両方を微妙な傾きによって表現している他、お客にワクワク、あるいはほっとするような商品を届けたいとの思いからハートマークも表現、さらに厳選していることを表すためにチェックマークの意味も持たせている。加えて、商品を通じてお客に笑顔になってもらいたいとの思いから口角が上がっている様子も表している。

パッケージデザインも品目ごとに色使いを変えたり、表示の見やすさにも配慮したりといった部分にも踏み込んだ。

「LAWSON VALUE LINE」のパン。惣菜パン系は緑色、菓子パン系は赤色、スイーツ系は黄色など、色分けされている
グリサリー系の「LAWSON VALUE LINE」

3つ目は、「マチの安心価格」。これは昨今の値上げ基調で価格高騰が進むなどさまざまな社会情勢を踏まえ、お客に資することを目的に、各カテゴリーの定番商品などの価格を下げる取り組み。

その意味するところは、「お客様の生活に欠かせない商品をいつでも安心して買える価格で提供すること」「卵・牛乳・パンなどの生活必需品を常に安価に提供して参ります」ということ。競合する他社と比べても競争力ある売価設定としていくとしている。

原資は物流の効率化や店舗オペレーションの改善など徹底したコスト削減と、商品の生産時の工夫としてのサイズ無選別、パッケージなどの仕様の見直しによる原価低減。

加えてどのような商品を、どの程度の価格で買いたいかといったことについてお客から聞きながら、それを商品政策、価格政策に反映させてもいく。

具体的な取り組みとして、まず5月21日水曜日から「おにぎり値下げ宣言!」を実施。ローソンストア100で現在販売しているおにぎりのうち、40%近くの商品を一斉に値下げする。値下げ幅は商品の位置付けや他社の価格との関係性などもあって一律ではないが、おおむね10%程度の値下げになる。その中でも特に人気のある5品については「マチの安心価格」に設定し、さらに競合に対して競争力を持たせる。

こちらは、包材や物流費などの資材費、オペレーションコストの削減の他、ローソンストア100全体での商品構成を見直すことによる原価調整、さらにビッグデータで買い合わせを分析し、日用品を含めたバスケット点数全体での利益配分のコントロールといった取り組みによって実現する。

おにぎりは5月21日から値下げする。人気の5品については「マチの安心価格」にラインアップ。ツナマヨが135円(本体価格、以下同)、辛子明太子が155円

日用品を含めたライフスタイル軸の商品構成を追求できることが強み

生鮮を一定程度品揃えする小型店では、イオングループが展開するまいばすけっとが業態という点では近いとみることができる。まいばすけっとも奇しくもローソンストア100と同じ05年の誕生。こちらは同年12月にひっそりと実験が始まった。まいばすけっとの店舗数は順調に増加を続け、25年2月末段階で1206店にまで増加。年商は2900億円を超えている。

ローソンストア100も合併を経てではあったが、かつては1200店を超えていたものの、25年3月末段階で637店にまで減少している。売上面でも、ローソンの他のコンビニエンススト事業が継続的に既存店売上高で前年を超えているのに対し、ローソンストア100は23年11月以降、1年半ほど前年比100%を割る状況が続いている。その意味では今回、20周年を機としたリブランディングによる新たな戦略の下、巻き返しを図りたいところだ。

小栗社長は同社の強みを次のように表現する。

「われわれの強みは、ライフスタイル・ブランドとして確立できていける点にあると思う。日用品などの生活必需品の構成が全く違う。他業態にもないようなさまざま商品がワンストップで購買いただける。かつ、お客さまからの評価として、われわれの店舗に来ていただける理由に、店舗に来て購買することそのものの楽しさやワクワク感、何か新しいものがある、ついで買いをたくさんすることができるといったことがある。こういったところがわれわれの強みであろうと考えている。だからこそ、われわれのブランド・ビジョンとして『ライフスタイル・ブランドとは何なのか』ということについて本当の意味で研ぎ澄ませていきたい」

小型店でどちらかというと低価格を武器にする業態は、その面積の制約から品揃えも必需品、かつ売れ筋のベーシックに絞られがちで、コモディティ商品をショートタイムショッピングで買うという買物行動がメインになるケースが多い。

ローソンストア100が目指す「来店、購買そのものを楽しみにすること」、あるいは「ワクワク感」などは、「必需品をぱっと買う」買物行動とはやや異なる要素といえ、独自の要素として作用するものとみられる。もっとも、小型店のディスカウントフォーマットとして欧米で存在感を増しているドイツ発のアルディなどの売場を見ると、コモディティではない商品をスポットで取り扱うことで、宝探し的な楽しみの要素をしっかり設けながら来店動機の創出に努めている。コモディティ商品の低価格販売とはいえ、めりはりを付けることも有効であるといえる。

また、小栗社長がローソンストア100の大きな特徴として挙げるのが、食品以外の日用品の商品構成の充実。「ここはわれわれのブランドの立ち位置としても非常に重要。やはりお客さまが日々の生活の中で、われわれの店舗に来ていただければワンストップで、さまざまなものをお買い求めいただける商品構成。その商品構成そのものも時代に応じて中身が変わっていく。そうしたブランドを目指すというのが、ライフスタイルに込めた意味」(小栗社長)

親会社であり5桁チェーンのコンビニ、ローソンとの連携もこれまで以上に強化していく方針。ローソンのPBの酒を販売するなど商品面での一部連携も進めている他、昨年からは「ハピろー!(ハッピー・ローソン・プロジェクト!)」企画をローソンストア100でも連動して進めるなどマーケティング面での連携も今後、強化していく意向だ。

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