代替食品の現在地|イトーヨーカ堂では大豆ミートの売上げが前年比3割伸長

2022.06.13

植物性の原料から作られた「代替食品」の存在感が⽇本でも⾼まってきた。⼤⾖で作られた「⾁⾵」の商品など、⾁の代替品が数多く商品化され、⽇配売場、もしくは精肉売場でコーナー化されるなどの動きがある。

⽇配売場にはもともと⼤⾖を原料とした⾖腐があることから、これらの商品との親和性も⾼く、違和感なく、売場が広がってきている感がある。

一方で、特に欧米のマーケットでは、その存在感がかなり高まりを見せる。背景には動物福祉といった考え方の他、家畜を育てることの環境負荷の問題、さらには増加する人口に対して食肉が足りなくなるといった将来を見据えたものがある。

あるいは、もともとこうした商品はビーガン(乳製品なども⾷べない完全菜⾷主義)、あるいはベジタリアン(菜⾷主義)の人たちが利用するものといった性質が強かったが、さらに⾁を⾷べる機会を減らす「フレキシタリアン」と呼ばれる⼈も増加しているとされるなど、植物性の商品に対する需要が大きくなっていることもある。

日本の状況も、こうした動きを受けたものということができるが、こと売上げの面では十分に需要があるといえる状況になく、一旦導入されるものの、次第に売場が縮小していくという店も少なくない。

そうした中、イトーヨーカ堂は、取り扱う大豆ミートの売上げが毎月伸び続けている状況だといい、直近では前年に比べて3割程度の伸長傾向を示しているという。

イトーヨーカ堂では、2019年の秋から、袋物の大豆ミートの商品を精肉売場にて取り扱い始め、20年春には全店舗に取り扱いを拡大。21年春からは素材としてのひき肉タイプの大豆ミートの取り扱いを開始するなど、お客の理解の深まりやメニューへの応用など多様化する大豆ミートの使われ方に合わせた品揃えとしているという。

現在では15種類程度まで品揃えを拡大し、店によっては3尺のコーナー化で展開を図っている。

企業によっては冷凍の商品を取り扱っているが、イトーヨーカ堂の場合、全て冷蔵の商品となる。

ひき肉タイプの大豆ミートは乾燥した原料に店で水を加え、戻す形で商品化している。マルコメの国産丸大豆を使用している商品で、取材した6月7日には100g当たり98円(本体価格、以下同)で販売。隣で展開している豚ひき肉は同138円ということもあり、価格メリットもある。

プライベートブランドのセブンプレミアムでは、いきなり大豆ミートのみの商品は味などの面でハードルが高いということで、肉とのハイブリッドの商品を開発。大豆ミートと牛肉をミックスしたハンバーグ2アイテムと大豆ミートと鶏モモ肉をミックスしたナゲットを開発している。

今後、素材系の普及が進むに従って大豆ミートのみの商品化も視野に入ってくる可能性もあるという。

大豆ミートのような代替食品は、日配売場で展開する企業も多いが、同社の場合、精肉売場で展開していることは1つの特徴となっている。

「新しい分類なので、お客さまのニーズに対して試行錯誤しながら進めているのが事実」とマルシェ部精肉担当の工藤秀夫マーチャンダイザーは語るが、今後、素材系の普及が重要性を増す中では精肉売場での展開ということには大きな意味があるといえる。

また、今後、素材系をさらに売り込んでいく上では食べ方を含めたメニュー提案が肝となるとみる。販促と連動しながら、サンプルを置いたりしながらのメニュー調味料などとの関連販売などを仕掛けていきたいという。

工藤マーチャンダイザー

「牛肉などの相場高騰など厳しい状況にあることもあり、イトーヨーカ堂としては率先してチャレンジしている。新しいことにチャレンジしながらお客さまのニーズに対応することに対しては、敏感にアンテナを張っていなければいけないと思っている」と工藤マーチャンダイザーは語る。

また、今後のマーケット拡大には、食品小売業だけでなく、外食の取り組みも鍵を握るとみる。さまざまな局面での取り組みで認知度の向上が図られれば、コーナーとしての定着、拡大も視野に入ってくるだろう。

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