特別寄稿 秋以降の原料高騰、コスト高対策 青果編 ①販売規格、②調達、販売方法、③付加価値の3本柱
2022.08.03
もともと相場商品である青果物は、昨今の世界的インフレの影響を受けているのかいないのか。いま1つ分かり難い部分もある。
しかし、肥料など農業資材や包装資材、輸送コストの値上がりの影響に加え、昨今の異常気象による入荷量減少により、足元の相場はジリジリと上がっているのが現実だ。
そこで今回は、青果物をとりまく原料高騰とコスト高要因を分析しつつ、それに対する販売現場の対策について考えることにする。
そもそも青果物はどれくらい値上がりしているのか?
前述の通り相場商品である青果物は、生産量と需要のバランスを取りつつ、常に価格が変動している。ところが、今年に入ってからは前述の理由から、確実に値上がり傾向が続いている。
東京都中央卸売市場の統計で今年の1月~最新の統計数値である5月の取引単価の前年比を見てみると、野菜・果実とも値上がり傾向が顕著だ。
野菜は単価前年比109%~116%で推移、果実は単価前年比111%~117%と野菜以上に高値推移。
この間、世界的インフレの影響を受けやすい輸入果実はさらに高い価格上昇率となっており、中にはアボカドのように一時、前年の180%の価格まで上がった商品さえある。
国内青果物については、産地生産者の高齢化による生産量の減少に加え、今後も続くとみられる肥料など農業資材の値上げで生産量減少が見込まれる。
輸入青果物に関しても産地での人件費や農業資材の高騰に加え輸送コストの上昇で今後数年間は値上がり傾向が続くと予想されている。
こうした青果物の値上がり傾向に対し、青果部門でできる対策としては次の3点が考えられる。
①販売規格の変更で値上げ回避
②商品調達、販売方法の見直しでコスト削減
③価格見直しに合わせての商品付加価値アップ
「①販売規格の変更で値上回避」から順に説明していこう。これは1パック当たりの内容量を変更し、値上げを回避する方法。例として写真の輸入ミカンは昨シーズンより1袋当たり約2割程度内容量を減らすことで売価を昨年並みに維持している。
この他に内容量は減らさない代わりにサイズダウンしてLサイズからMサイズに変更したり、無選別での仕入れを行うことで「サイズいろいろ」の企画で販売する方法もある。
この場合、商品の顧客価値は確実に下がるので、ネーミングの工夫や商品説明をしっかり行い、商品価値の維持を図っていく必要がある。

次に「②商品調達、販売方法の見直しでコスト削減」。現状の商品調達方法を見直し、生産者からの距離を短縮して中間マージンを省くことで仕入価格を軽減する方法がある。
ただし、この方法では、いままで中間流通業者が担ってきた物流、数量調整や青果物特有の多サイズの販売などを小売側が背負わなくてはならず、安易にできるものではない。
その点、販売方法を変えることによるコスト削減は販売現場で比較的容易に実施できる方法だ。
最も一般的な方法はばら売りだが、レジでの登録方法やばら売り特有の商品ロス管理などクリアすべき点も多い。
特にロス管理については次の写真のように、小まめに売場整理を行うことで傷みが軽微なうちに値下げ、売り切りを行わなくてはならない。

もう1つ、従来はアウト加工パック売りしていたものをインストア盛り売にする方法がある。
その際、次の写真のように丸カップにミカンを6個盛るようにすれば、内容量を減らして価格上昇を抑えつつ、販売商品のボリューム感も維持することができる。
これらの方法はいずれも、インストアでの作業量増加に結び付くため、いま一度、売場での作業の見直しを行い、優先度の低い作業を切り捨てるなどして手数を捻出する必要がある。

「③価格見直しに合わせての商品付加価値アップ」については、①の販売規格、②の調達方法、販売方法の見直し以外の方法として、商品付加価値を加えることで価格改定をお客に許容してもらう方法となる。
例えば樹上で完熟させて、より高糖度に仕上げた果樹の販売や朝採りの地元野菜の販売などがこれに当たる。