グリーンビーンズが八王子CFCで冷凍関連の自動化など新技術採用、事業開始3年経過の現在地

2026.10.27

イオンネクストは10月22日、東京都八王子市滝山町にネット専業スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」の物流施設の2拠点目となるイオンネクスト八王子CFC(顧客フルフィルメントセンター)を本稼働させた。稼働自体は9月19日から開始した。

本稼働したイオンネクスト八王子CFC。鉄骨造の地上4階建てで、延べ床面積は約4万㎡。誉田CFCに続くグリーンビーンズの2拠点目となる

2023年7月に千葉市緑区で稼働した誉田CFCに続く施設で、英国Ocado(オカド)社の自動化技術を基盤に、冷凍エリアの保管ピッキングを自動化する「AutoFreezer(オートフリーザー)」を同社として初めて導入した。

加えて同社としてはGoogle CloudのAI(人工知能)技術を活用した「AIコンシェルジュ」による新たな買物体験の構想も発表するなど、事業開始から3年を迎える中、随所で新技術の導入を図っている。

八王子CFCは中央自動車道、八王子インターチェンジの北側に立地。イオン、イオンネクスト準備(当時)、イオンモールの3社が2021年12月に発表した(仮称)八王子インターチェンジ北計画の一角で、CFCに隣接する形で26年6月26日、複合商業施設イオン八王子滝山がグランドオープンしている。CFCはグリーンビーンズ専用の拠点だが、敷地全体で見れば商業施設や他のテナントと混在する形になっている。

CFCの西側、位置づけとしてはイオン八王子滝山のNorthの1階には、グリーンビーンズの世界観に触れられるブランド体験ラボ兼受取スポット「Green Beans Park(グリーンビーンズパーク)」が同日開業している。

グリーンビーンズは23年7月のサービス開始から3年余りで会員数が120万人に達する規模になっている。26年5月に会員数が100万人を突破したとは発表していたが、5カ月ほどで20万人増加したということになる。提供エリアも東京23区と22市、千葉、神奈川、埼玉、茨城の95市区町村に広がったという。「買い物を変える。毎日を変える。」をミッションに掲げ、生活者に自由な時間と心のゆとりを生み出す「生活インフラ」を目指してきた。

八王子CFCの本格稼働に際して事業の概要を説明する野澤知広社長。グリーンビーンズは累計約120万人が利用する規模に育ったと説明した

野澤知広社長によると、会員の6割超を東京都、15%ほどを神奈川県が占め、およそ75%が首都圏の西側に寄ってきている。千葉の誉田CFCから運ぶのは効率としても好ましくなく、今回、八王子に拠点ができたことで東京西部、多摩地区から神奈川にかけての配送効率が高まることになる。2025年9月に八王子市へのサービス開始を発表していたが、これまで千葉から運んでいたこともあり、地元での認知は千葉に比べてまだ低いと話す。今回の稼働を機に八王子を中心にさらに会員を広げていきたい考えだ。

利用者にとって大きく変わるのは、当日配送の対象が広がることだ。誉田CFCから直接届けているエリアでは、当日12時半までの注文をその日のうちに届けている。八王子CFCからは吉祥寺(東京都武蔵野市)辺りまでが直送エリアとなる見込みで、そこでも当日注文、当日配達が可能になるという。野澤社長は、店舗出荷型のネットスーパーが持つ「当日注文して当日届く」利点に、センター出荷型でも対応できるようになる点を最大の利用者メリットに挙げた。

八王子CFCは鉄骨造の地上4階建てで、敷地面積は約5万4000㎡、建築面積は約2万4000㎡、延べ床面積は約4万㎡。誉田CFCで25年6月に導入した自動ピック&パックロボットや積載作業ロボットの導入数を最大3倍まで増やし、施設全体で誉田CFC比約115%の生産性向上を見込む。働く人数は非公表としたが、誉田よりも15%ほど少ない人数で運営できる形になっているという。

施設は大きく3層で構成する。1階は入荷、デカント(移し替え)と出荷のフロアで、常温、冷蔵、冷凍それぞれのデカントエリアに加え、配送用の緑色のトートを台車に積み込むフレーム積み込みエリア、出荷を終えた空トートを処理するデキットエリアを置く。2階はピッキング、バギングのフロアで、常温と冷蔵のピッキングエリア、冷凍エリア、バギングエリアが並ぶ。3階は「Bot(ボット)」と「OGRP(On Grid Robotic Pick、オングリッドロボットピック)」が稼働するグリッド(商品棚)のフロアで、チルドと常温のグリッドに加え、見学者向けの展示スペースを設けた。

CFCの心臓部は、格子状に組まれたグリッドだ。その上を「Bot」と呼ぶロボットが走り回り、グリッド内に積み重ねた在庫用の銀色のトート(商品の入った箱)を出し入れする。同社によると、秒速4mで移動するBotは6分間で50商品をピッキングできるとされ、人の約10倍の効率になるとしている。グリッドの段数は常温が21段、冷凍が13段。冷蔵は賞味期限が短く在庫をあまり持たないため8段で足りるという。冷蔵の温度帯は8℃以下に保たれ、それを上回るとアラートが鳴るようになっている。

ピッキングは、人がいる場所に在庫がやって来る仕組みだ。Botがピックステーションの前に集まって在庫トートを下ろすと、グリッドの下にいる作業者は画面の指示に従って商品を顧客用のトートに移し、終われば緑のボタンを押す。単純な作業だが、集中力がないと間違えやすいという。

また、人に代わってこの作業を担うのが、アーム型ロボットのOGRP(On Grid Robotic Pick、オングリッドロボットピック)だ。OGRP自体は移動せず、Botが運んでくる在庫から商品をつかんで買物袋に入れる。約1万SKUを認識可能で、野澤社長は今後は袋詰め作業の半分ほどをOGRPが担う形になると説明した。

グリッドの上を走るボット(車輪付きのロボット)とOGRP(オングリッドロボットピック、アーム型のロボット)。ボットは積み重ねた在庫トートを出し入れし、ピックステーションまで運ぶ。OGRPはピッキングまで行う。これは3階の冷蔵のグリッド上部
OGRP以外の、従来のピック、パックは人手による。2階、グリッドの下の部分で、Botが詰めるべき在庫を落とす
1階はデカント(移し替え)スペース。写真は常温のデカントエリア。AGV(無人搬送機)が入荷した商品を必要数だけ人のいるところまで運ぶことから人はその場所で作業に集中できる。AGVは入荷商品の台車を同時に2台搬送可能。あらかじめ設定されたルートを自動走行し、目的地まで入荷商品を無人で搬送する

また、冷蔵エリアには、LexxPluss社製のAMR(自律走行搬送ロボット)を新たに導入し、商品を載せた台車を自動で運ぶ。入荷した商品の段ボールは、コンベアに投入すれば自動で運び出される。顧客用トートに1分間に50枚以上の袋をかける「オートバギング」や、最大20kgになる配送用トートを専用台車に自動で積み込む「オートフレームロード」も稼働する。誤ってピッキングした商品は、各温度帯に設けた確認エリアで人が正誤や傷みを必ず確認しているという。

冷蔵のデカントエリアに新たに導入したAMR(自律走行搬送ロボット)。商品を載せた台車を自動で搬送するが、AGVとは異なり、自律的に在庫を運び、空の台車を戻すといったことも可能
冷蔵のデカントエリア内にあるMSC(マニュアルサービスカウンター)。農産品の加工などを実施する他、鮮度や虫の混入なども人の目でチェックする

最大の目玉は冷凍エリアのAutoFreezerだ。グリーンビーンズは冷凍食品を硬く凍った状態のまま届けており、冷凍の商品の売上高構成比は従来のネットスーパーの倍ほどあるという。一方で、冷凍環境での作業は作業者の身体的な負担が極めて大きく、厳格な温度管理と作業効率の両立が長年の課題だった。AutoFreezerは冷凍食品の保管から取り出しまでを自動化し、誉田CFCとの比較で入出庫の処理能力を2.7倍に高める。

加えて格子状のグリッドによる高密度保管で保管面積を約50%削減する一方、在庫量は約1.5倍に増やし、品揃えの充実につなげる。人が冷凍環境で作業する時間は誉田CFC比で5%以下に抑える。扉の開閉による温度変動が減るため、品質の維持に加えてエネルギー使用量の削減にも寄与するとしている。

冷凍のグリッドの下の部分。トートが積み重なって収納されている。上には常温、冷蔵同様、Botが走る。銀色は在庫のトート、青(冷凍の場合)が配送用のトート
冷凍のグリッドの上を走るBot
入荷した冷凍の商品はデカントステーションで段ボールを開けて商品を確認し、日付を入れてグリッドの中に自動的に収納される
デキットエリアと呼ばれる1階の出荷バース。冷蔵管理。頭文字がVのものは近隣の直接配送する分、Lのものは中継地点のスポークまで運ぶ分
戻ってきた配送用のトートに自動で袋をセットするオートバギング。1分間に50袋以上の袋をトートにセットする。トート1個当たり最大3袋を設置することが可能。これを導入する前は人手で1時間当たり70~100袋だったところ、桁違いの効率アップとなった

商品面では、コールドチェーンとセンター出荷型の強みを打ち出す。牛乳や卵などの必需品は値打ちでの提供を目指す他、配送日を含めて7日間の鮮度を保証する「鮮度+」や果物などの食べごろの目安まで保証する「食べごろ+」といった保証体系を整備するといったことを先駆けて行ってきたが、さらに9月16日からは「冷蔵お届け米」を販売開始した。冷蔵お届け米は、精米後からお届けまで冷蔵で管理し、精米したての鮮度を届ける商品。新たな発想の商品といえる。

鮮度+、食べごろ+を合わせたSKU数は124にまで拡大。鮮度+だけでもSKU数は野菜36、水産で20、畜産で48に拡大してきた。商品を「鮮度+」に切り替えることによって売上げが1.5倍になるといった状況で、その信頼の効果は大きい
米を冷蔵で保管するという新たな発想の商品を展開

ネットスーパー専業のため、商品を店頭に並べることはない。そのため持ち帰るのが大変な重い大容量商品はもちろん、パッケージでの商品のアピールなど見た目に対するこだわりも必要ないことから、捨てる際に手間がかからないラベルレス商品も拡充。その考えは生鮮についても同様で、精肉では酸素に触れないことから鮮やかな赤色になっていない状態のスキンパックの包装なども積極的に採用。さらにセンター出荷型であることを生かし、全国の名産品やお取り寄せスイーツなども拡大している。

ネットスーパー専業の新しい小売業を立ち上げた形のグリーンビーンズは、当初、品揃えを5万品目程度の総合小売業レベルの規模を掲げていたが、サービス開始から3年を経て品揃えを見直している段階だという。現在の取扱品目数は3万品目程度。絞り込む一方で八王子CFCの稼働に合わせ、地元のメーカーなどの協力を得て、豆腐や菓子などの八王子関連商品も多数そろえた。地元の豆腐やあんみつなど「こだわり商品」として訴求する商品も展開する。

稼働に合わせ、地元の商品の取り扱いも始めている

事業開始から3年が経過した現在の客単価は約1万1000円、買上点数は30~40点といった状況。開業当初の客単価は7000円台後半だったというが、リピーターの買上点数が伸びることで上昇したという。野澤社長によると、ネットスーパーを使い始めるお客はまず重い商品から入り、次第に野菜や日配品など冷蔵の商品などが加わることで買上点数が増えていく傾向にあるという。現在の約1万1000円の客単価、30〜40点の買上点数は、利用し始めたばかりのお客も含む数字ということで、その意味では客単価、買上点数は確実に増加してきていることになる。

ネットスーパーのビジネスを効率性を維持しながら成立させるための条件として、客単価や買上点数を大きくすることに加え、いかに配送頻度を減らす、あるいは平準化するかがポイントになるが、同社としてはそれに関連する指標として「1週間に1回の買物」を1つの目安としている。鮮度+が7日間の鮮度を保証しているのもその一環だ。その意味では客単価、買上点数に加え、購買頻度が大きなポイントとなるが、それについて野澤社長は「ノーコメント」とした。ただし、客単価、買上点数が上がってきているのは好材料であることは確かだろう。

今回、八王子CFCの稼働に合わせ、グリーンビーンズパークでは10月22日10時から「受取スポット」のサービスを始めた。グリーンビーンズで注文した商品を、最短3時間でカウンターで受け取れる。対象は薬品を除く商品で、最低購入金額は本体価格3000円、受取手数料は無料。つまり配送料がかからない。受取当日7時までの注文であれば10〜18時、当日12〜14時の注文であれば17〜18時に受け取れる。CFCで仕分けた商品は温度帯を守るため、建物が隣接している極めて短距離でもわざわざトラックで運び、エレベーターで受け取り場所まで上げているという。店舗での受取サービス自体はすでに千葉県内のまいばすけっと7店で実施している。同社としては今後、都心のまいばすけっとでの店舗受取サービスの展開にも意欲を示す。

併設したグリーンビーンズパークに受取スポットを設けた。最短3時間で受け取れる

グリーンビーンズパークは入場無料で、親子でアクティビティを楽しめるブランド体験ラボとして運営する。医薬品やサプリメントなど約1500品目を扱うイオンネクスト八王子薬店も併設する。11月中旬からは、会員限定の「CFC見学ツアー」も始める予定。展示スペースまでのツアーは平日に2回の開催を予定し無料、CFCの内部を見学するツアーは月1〜2回の有料開催を予定する。普段は見られない物流の舞台裏を見せることで、サービスへの理解と信頼を深めてもらうことが狙いだ。

グリーンビーンズパークは情報提供を含め、グリービーンズに親しんでもらうための施設といえる
物販機能として薬店を設置。ネットでの医薬品の販売には実店舗が必要であることへの対応で、誉田CFCでも薬店が設置されている

ハード面に加え、ソフト面の強化も打ち出す。冒頭でも言及した「AIコンシェルジュ」がそれだが、野澤社長は今回これを導入する背景として、これまでのネットスーパーが解決できたのは物を「運ぶ」工程だけで、何を作るか悩み、小さなスマホで検索し、比較して選ぶという「頭脳労働」は生活者に丸投げの状態だったことを挙げる。

AIコンシェルジュは26年度中の実装を目指すとしているが、野澤社長は年明けのサービス開始が目標だと語った。デモ動画では、利用者が家にある食材を撮影してアップロードすると、AIが豚こま切れ肉約200gとジャガ芋4個を認識。顧客のプロフィールや売場の特売、旬の情報をかけ合わせ、買い得のカレー、旬のポトフ、お勧めの肉じゃがの3品を提案した。

そこで例えば利用者がカレーを選び、「生クリーム以外を一括追加で」と伝えると、必要な食材がまとめてカートに入る。続けてカレーに合わせた福神漬け、前回の注文から1週間たったことを踏まえて牛乳や卵など「いつもの商品」を提案し、最後に配送枠を選んで注文と決済を終える。一連のやり取りはすべて音声で完結する。

野澤社長はこの流れを5つのステップで説明した。写真からの献立、食材提案では、購買履歴から中辛を好む家庭だと分かれば中辛を提案するといった形で、提案には理由が添えられる。2つ目は過去のデータに基づく併売商品の提案、3つ目は購入頻度やサイクルに基づく「よく買う商品」の提案、4つ目は配送履歴に基づく配送枠の提案で、いつも土曜日に受け取るお客には次に空いている土曜日の枠を示すといったものになる。最後に確認画面で「OK」と伝えれば決済と注文が完了する。食の領域で、マルチモーダルAI(複数の種類の情報をまとめて扱うAI)を使って食材提案から配送、決済まで完結させるのは国内初の事例ではないかとした。

マルチモーダルAIにこだわっているのには理由がある。グリーンビーンズでは1人のお客が1回に30〜40点を購入する。1点をカートに入れるのに30秒かかるとすれば、30点で15分になる計算だ。単純なレシピ提案などであればマルチモーダルAIである必要はないが、同社では小売業としてお客の悩みをどう解決するかという着眼点からAIの使い方を模索する中、マルチモーダルAIの活用に舵を取った。そして、それを通じて「エージェンティック・コマース(AIがお客に代わって商品の購入から配送手配など買物を自律的に行う仕組み)」を実現していきたいとしている。

その上で、その実現を支える仕組みとしてOcado社の柔軟なインターフェース基盤を通じた外部AIとの連携、特定原材料の含有情報や認証情報など数百項目に及ぶ商品マスター、在庫管理から注文、自社配送網までを一気通貫でつなぐシステムの3点が強みとなるとする。

ネットスーパーの存在感が増し、展開企業もずいぶん増えてきたが、特に日本において店舗出荷型ではないセンター特化型のネットスーパーがなかなか収益性を高められないという課題は、古くから指摘されて続けている。センターなどの初期投資が非常に重いことに加え、日本の場合は購買頻度の高さ、あるいは1カ所でのまとめ買いをしないことによる客単価の低さなども影響しているものとみられる。

実店舗の小売業とは違い、配送能力に上限があることから、ある程度の客単価のある客数が増えることが重要であり、逆に客単価の低い注文で配送が占められると効率が上がらないといったことが起こる。その意味では、前述の「1週間の1回の買物」はこうした問題をクリアするための重要なポイントとなるわけだ。

グリーンビーンズは今回の八王子CFCに加え、27年度には埼玉県久喜市に久喜宮代CFCを稼働予定となっているなど、「投資フェーズ」が今後も続く他、この既存企業がなかなか越えられなかったハードルについても真正面から取り組むことになる。

イオンネクスト八王子CFC(顧客フルフィルメントセンター)

所在地/東京都八王子市滝山町1-885-1

本稼働日/2026年10月22日(木)

敷地面積/約5万4000㎡

建築面積/約2万4000㎡

延べ床面積/約4万㎡

構造規模/鉄骨造地上4階建て 主な自動化設備/Bot、OGRP(On Grid Robotic Pick)、AutoFreezer、自律走行搬送ロボット(AMR)など

お役立ち資料データ

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