首都圏ネットスーパーをチェック! 食品購入に欠かせない、あの情報が落ちてない?
2024.08.02
2024.07.31

ネットスーパーがもっと利用されるために、「必須ではないか」と思われる情報が、意外とおろそかにされていると思っている。商品の「そこ」が分からないと買えないから、結局ネットでは知っている商品しか購入できないというユーザーは多いと思う。
試しに首都圏で展開している有力チェーン10社のネットスーパーをチェックすると、その情報提供が行き届いているのは1社、部分的が半数、残りはほぼなしという状況だった。
その情報が得られることで、ネットスーパーの使い方は「店に行けない時の間に合わせ」から、「商品との出会いを探求する機会」に変わると思うのだが?
原材料や栄養成分、知りたくない?
調べた企業は以下の通り(7月15日時点・五十音順)。
イオンリテール、イトーヨーカ堂、オーケー、コープみらい、西友、ベイシア、ベルク、ヤオコー、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)、ライフコーポレーション。
コープみらいは生協だが、宅配事業とは別に店舗起点の「コープのねすぱ」も埼玉、千葉、東京の一部エリアで展開している。
それでは、食品販売チャネルとしては当然あるべき情報であるにもかかわらず、ネットスーパーで欠落しがちなその情報とは何か? もったいぶるほどのものでもない。「原材料表示」と「栄養成分表示」である。
「そんなもの見て買ったりしないよ!」 という人が多いことは知っている。私もかつてはそうだった。しかし世の中には、それらをチェックしない限り購入できないと考える層が存在し、その人が往々にして家庭の食生活を差配するキーパーソンだったりする。
子どもや家族、自身のために気になるあれこれの判断材料は、原材料表示と栄養成分表示に集約されている。これらの表示を基に「安くたってこれは買えない」とか「値は張ってもこちらの方がいい」といった判断が下される。
各社のネットスーパーを確認したところ、そのような重要項目の情報提供を抜かりなくやっていたのは、西友だけだった。抜かりなくとは、生鮮素材は難しいとしても、グロサリーや日配品はナショナルブランド(NB)もプライベートブランド(PB)も表示していて、惣菜まできっちり押さえているという意味だ。ただし西友も、惣菜の原材料表示は見当たらなかった。

惜しいかな、ベイシアとオーケーは、惣菜については原材料も栄養成分も落ちていた。もとより惣菜の栄養成分は参考値になるが、それは店頭でも同じこと。何もなしでは判断できない。
イオンリテール、イトーヨーカ堂、コープみらいは、PBに関しては十分な情報提供がなされていた。オリジナル商品をアピールする姿勢として意欲的で、さすがはいずれも日本屈指の巨大PBシリーズといったところだ。
原材料表示と栄養成分表示、食品の中身を知る手がかりであるこれらの情報がオンラインサイトで欠落するのはなぜか? それらは製造メーカーが個々のパッケージに記載する情報だからだ。
リアル店舗であれば商品を陳列するだけで済む。しかしオンラインでは、そ
れら情報を提供するために新たな業務が発生してしまう。
前述のチェーンでは、情報をテキストデータとしてアップしている場合もあれば、パッケージの記載部分を画像としてアップするやり方も見られた。
どちらにせよ手間であり、それも1万前後かそれ以上の品目数でやるとなれば相当な作業量になる。パッケージの表(おもて)面画像を上げるだけでも大変なのに、裏面、ときには側面まで別々にアップする必要も出てくる。
商品画像の解像度が低すぎない?
手間をかけてアップした商品画像に、別の問題が生じることもある。画像解像度が小さくてパッケージ記載の情報がほぼ読めない、読みづらいサイトが少なからず存在する。
これは裏面画像ではなく、表面の話だ。
パッケージの表面は、NBであれば商品の魅力を表現しようとそのデザインに全力を尽くす。PBの場合、表面に商品の特徴やアレルギーに関する表示など細々説明していることもある。
店頭なら、実物を手に取ってじっくり読むこともできるが、ネットではアップされた画像が不十分ではどうにもならない。ここにも、「ネットでは知っている商品しか購入できない」と思われかねない要因がある。
ついでに言えば、購入者レビューを備えているサイトは、イオンリテールしかない。それもPB「トップバリュ」を対象とした別サイトへのリンクがあるだけだ。食品以外のオンラインショップならあって当然のレビュー機能だが、ネットスーパーにはほぼ存在しない状況にある。

やはり膨大な品目数の問題はあるだろう。商品個々の価格や粗利益率の低さも原因かもしれないし、そもそも食品のレビューは、おいしいか、そうでないかのどちらかにしかならないかもしれない。
しかし、これまで見てきたように、オンラインチャネルにおける食品の情報量は、リアル店舗に比べて優っているどころか、劣っている部分が相当にある。視覚情報だけではない。
店頭では存在しうる質感や香り、音といった情報は落ちてしまう。一方、口コミに相当する商品レビューは、店頭では提供が難しいタイプの情報だ。
イオングループの倉庫出荷型オンラインマーケット「グリーンビーンズ」は、自社事業の定義として「ネット専用スーパー」という表現を使い始めた。リアル店舗を持たない事業という意味で、店舗がないからこそ可能な品質、サービスを追求する。
そのグリーンビーンズのサイトは、購入者からの商品レビュー投稿を実装している。店舗がないために提供できない諸情報の埋め合わせに、店舗では提供できない情報を活用している。
配達日時は、買うものを決めてからでよくない?
ネットスーパーが「知っている商品しか買えない」チャネルになりがちな理由は、情報提供の在り方だけではない。買物前に配達日時を指定するサイトが多いことも、本来ならもっと自由であるはずのオンラインの買物を制約している。
配達日時を決めて買物を始めたら、その作業はいっぺんに終わらせるしかない。リアル店舗の売場を回るのと同じで、そこに費やせる時間は限られてしまう。ネットスーパーの利用者の多くは、できれば送料が優遇される価格帯までまとめ買いをしたいと考えるだろう。
そうなると大概、1万円近い購入単価になる。それだけのバスケットを作るには
かなりの数量を買わねばならず、時間はそれなりにかかる。それでいて知っている商品しか選べないから、水を数十km単位で買い込んだりする。
ほとんどのネットスーパーが、いつでもどこでも購入できる便利さをうたう。そのようなオンラインチャネルのメリットは、買物シーンを数日単位で分散できるからこそであり、買うと決めたら決済まで一息に、ではハードな作業になる。買い物バスケットを完成させてから配達日時の指定、その順番が望ましいと思う。
商品情報を詳細に確認できて、買物時間を分散できて初めて、ネットスーパーはじっくり商品を吟味できるチャネルになる。
知っている商品をバスケットに詰め込む買い方から、時間をかけて新しい商品との出会いを探し求めるチャネルになっていく。