ザ・トップマネジメント 令和4年新春特別編 ライフコーポレーション 岩崎高治社長

2022.01.04

「いまこそマインドセットを変え、『質の競争』に転換すべきとき、SM業界は、いかに付加価値を付けられるかの競争を」

岩崎高治ライフコーポレーション社長

——2021年はどのような年だったか。

岩崎 21年はコロナ感染症が猛威を振るい、第5波は多少収まっているものの、オミクロン株の話も出ているので、結果的には1月から12月までほぼコロナ対策の1年だったかなと思う。

そのような環境で、前年から継続して「守る」「攻める」「変える」ことを軸に取り組みを進めてきた。「守る」ことについてはとにかく従業員、お客さまの安心、安全を重点的に、「まず、これが大事」ということで進めてきた。

店内環境、ワクチン接種、特別有休休暇制度、それから従業員には相当負担がかかったので、しっかりと休んでもらえるようにということで、この年明けについてはテナントとして入っている2店舗を除いて1月3日まで休みを取ることにした。

一方で「攻める」こと、「変える」こと。環境変化が起こることは、小売業にとってまさに力が試されるときだと思うので、お客さまのニーズの変化をしっかりと捉えつつ、品揃えにしろ、ネットスーパーにしろ、しっかりと対応することが重要だ。

改装も、この下期、過去最大のものを準備しているが、これは必ず22年に生きてくると思う。

その他、キャッシュレスの導入、働き方の改革という意味で電子棚札の導入等々を進めている。

本来、21年度は、第六次中期計画4年間の最終年度だったが、まだまだコロナの影響が続いた。途中、中断したこともあって、1年延ばして22年度を第六次中計の完成の年と位置づけて、取り組んでいく。

——ちょっと話が早いが、23年度からの次期中計の方向性は。

岩崎 (コロナ対応で)準備が整っていないということもあって、(次期中計については)ちゃんとつくるべきということで、あえて1年延ばした。

いままでのスーパーマーケット(SM)は、「良い店、良い品、良いサービス」が大事で、これをやっていれば絶対に生き残れるということで、自分も数年前までは社内でも「これをとにかく徹底してやろう」と言っていた。

それはそれでやっていかなければいけないということだが、やはりいまはデータとテクノロジーをいかに活用するかというところにも注力しないと時代遅れになってしまう。お客さまの購買データ、行動データなどいろんなデータが取れるような環境になり、さらにオンラインで買ったお客さまと統合して、分析もできるような環境にもなってきている。

テクノロジーをお店のオペレーション、ネットなどにどれだけ活用できるのかというところまで踏み込んだ中計にすることが重要になる。

いまは、リーマンショックのときとは「全く」異なる

——足元の売上げの状況は

岩崎 外部環境では、足元の既存店売上げは、21年度第1四半期が96%、第2四半期が100.5%。9、10、11月の第3四半期は101.5%となった。客数が100.9%、客単価が100.6%。

その前の20年度は、第1四半期が110.3%、第2四半期が106.7%、第3四半期が101.7%だったので、21年度をコロナ前の19年度と比べると第1四半期が105.8%、第2四半期が107.2%、第3四半期が103.2%となる。多少でこぼこはあるが、19年度に比べると、まだ内食需要が残っているのかなと思っている。

それを踏まえて22年度がどうなるかということだが、社内でもはっきり言っているが、正直に言ってコロナがどうなるか分からない。分からない前提で、しかし、何が起こっても良いように考えようということだ。

ただ、よく言われる「景気が悪化する」ということに関しては、自分は「そういう風には思っていない」と社内では言っている。そもそもテレワークの定着だとか、職場、取引先との会食の機会が減ったといった行動様式の変化による外食から内食への市場規模の変化は、コロナの前には戻らないと思う。

その中で、SM同士、コンビニ、ドラッグストア等々、あるいは外食のテイクアウト、これらの中での競争になると思う。

ネットについても、ネットでの買物は引き続き好調。第5波のピークの8月からすると、2割程度は落ちているが、それでも前年と比べると170%程度にまだ伸びているので、引き続き2桁成長ということが見込める。

そういった変化があることを前提に、さらに景気について言うと、お客さまの価格志向を心配する声もあるが、東証一部上場企業の決算を見ても7割が増益、過去最高益のところもある。

加えて国がコロナ対策費として過去2年間で65兆円の経済対策を行っていて、衆議院選挙への公約、22年夏の参議院選挙もにらんで55兆円の追加経済対策も検討されている。

足元では人手不足が再燃している。海外では物流、工場にコロナの影響で働く人がいない、日本でも外食の営業再開で、われわれのところも採用環境が厳しくなってきている。

その人手不足に加えて、原油高、半導体を始めとしたサプライチェーンの分断等々もあって、いろいろなものが値上がりしている。

物価高、インフレという状況なので、リーマンショックのときに、みんなが「デフレ、デフレ」「景気が悪い」ということで、消費不振で価格下落、安売り競争でポイント合戦というような流れになったが、そういう環境とは「全く」異なる。

むしろ、日本はいままでずっとデフレ脱却ということを言い続けて、日銀が金融緩和をし、マイナス金利になり、何とかインフレに持っていこうということをやっていた。それが、今回のコロナという外的要因があるにしろ、政府がこれだけのお金を使ったということ、また、それ以外にもいろいろな要因があって、値上げ基調になってきている。

そういうことなので、小売業もマインドセットを変えないとだめだと思う。当然、お客さまは安い方が良いということがあるので、価格対応は必要だが、しかし、それだけではなく、「質の競争」。付加価値をいかに付けるかという競争をSM業界もしっかりと行って、国民全体の賃金上昇につなげて、日本国として好循環を生み出していくことをやっていくべきだと自分は思う。

少なくとも、ライフコーポレーションとしてはコロナ前の、ポイント合戦や安売り合戦に引き込まれないような努力を引き続きやっていきたい。それをやるのが22年だと考えている。

ビオラルはコロナが収まっても引き続き伸びると思う

——値上げに際して、経営者の中には、今回はこれまでと違って消費者に受け入れられやすいという環境にあるとみる人もいる。これまでの値上げに対する反応は。

岩崎 全体的な話としては、足元でお客さまの数が減っているわけでもなく、買上点数が落ちているわけでもない。また、値上げの理由が明確で、マスコミなどがしっかりとお客さまに伝えていることもあるので、比較的受け入れられていると思っている。

——「質の競争」をする上で、どのようなことに取り組むのか。

岩崎 要は「安売りに頼らない」「ポイントに頼らない」ということなので、例えば、商品が出来たてであったり、売場の完成度、商品の陳列の方法など、いわゆるSMとしての基本的なところをもっとしっかりとやっていこうということ。

その延長線として、当社としては、品揃えを増やしていこうということでやっている。松竹梅はしっかりある、それに加えてお店によっては、さらに松よりも上の商品を品揃えすることでお客さまに選択の幅を広げるということにチャレンジしている。

それに加えて「ビオラル」事業に力を入れているし、手応えも感じている。方向性は店舗展開と商品の拡充とコーナー展開の拡充の3つ。店舗展開については、下北沢(東京・世田谷)にスタンドアローンの店という意味では首都圏2店舗の店を出す。さらにもう1店を近々にオープンできると思う。

商品開発ではビオラルのプライベートブランド(PB)商品の開発をさらに加速してやっているし、ビオラルのコーナーも既存店の120店ほどに入れた。首都圏はほぼ入れるべきところには入れたし、今度は近畿圏に同じように展開をしている状況にある。

「ビオラル」はオーガニックやサステナビリティといったことをコンセプトとする新たなフォーマットとして開発した事業。出店および店舗へのコーナー展開、さらに同名のPBの商品開発で拡大していく(写真は21年7月にJR大船駅直結の大型複合施設「グランシップ(GRAND SHIP)」1階にオープンしたコーナー)

「質の競争」は、同質化競争からの脱却なので、ライフにしかない商品、それがビオラルであり、商品の鮮度であり、惣菜のおいしさである、ということ。これを突き詰めていく。

ただ、加工食品でも、オリジナルの商品がもっと増えていくということはやっていきたいが、究極的にトレーダージョーみたいにPB100%になれば良いかといったらそうは思わない。

ナショナルブランド(NB)商品を必要とされているお客さまもいらっしゃるので、しっかりとお客さまのニーズのなるNBをそろえながらも、オリジナル商品をもっと充実させたい。

ビオラルや他社にない惣菜、お弁当などがあることによって、「やはりライフに行こう」と思ってもらえるようなSMになっていきたい。同時にそれがリアルのお店でもネットでも買える。どこにいてもネットでも買えるということになれば、お客さまにとっての豊かな生活がご提供できるのではないのかなと思う。

——ビオラルに手応えを感じているとのことだが、コロナとの関係をどう考えるか。

岩崎 確かにコロナがあって、健康需要で売上げが上がっているということもあるが、もう1つは、Z世代(1990年代半ばから00年代に生まれた世代)の消費に対して巷で言われるような、自分なりのリーゾニング(根拠)、買うことの動機付けといったトレンドにもマッチしたこともある。

共感をして手を伸ばしていただいているということだと思うので、仮にコロナが収まったとしても、おそらくビオラル事業については引き続き伸びると思う。

ビオラルは必ずしも健康だけでなく、サステナブル、地球環境にもやさしいということを打ち出しているので、これこそ、もっともっとやっていかなければいけないという位置づけだ。

お客がリアル、ネットのどちらでも買物できる環境に

——ネットスーパーの利用動向は。今後、2030年度にEC(電子商取引)事業を1000億円の規模に拡大するとの方針だが、その道筋は。

岩崎 お客さまの使い分けについて、ライフとしてはお客さまとシームレスにつながること、お客さまがオンラインでもオフラインのリアルの店舗でも、その瞬間、「買物をしたい」と思ったときに便利な方で買物をしていただくというのがわれわれの目指す姿。

同じ人がときにはリアルのお店に来ていただいて、「今日は時間がないから」「雨が降っているから」、あるいは「重いものを買うから」ということで、オンラインで買うという風になるのが良いと思うし、実際にそういう形になってきている。

アマゾンと自社のネットスーパー(の2つのチャネル)があるが、多少お客さまが違うところがあるが、雨の日に需要が多かったりといったことからすると、同じような動向かなと思う。

また、アマゾンで初めてライフのことを知り、お買い上げいただいた結果、商品をお気に入りいただいて、リアルのお店にも来ていただいているという良いサイクルも出来てきている。

1000億円に向かってどう広げていくかということだが、1つは対象店舗を広げること。自社のネットスーパーは対象店舗を広げ、さらに1店舗当たりのキャパシティを引き上げる。

アマゾンの方は対象エリアを広げていく。順次拡大していっているが、それによって自社のリアルのお店があるエリアでは基本的に全てネットで買物ができるようにし、お客さまが(リアル、ネット)どちらでも買物ができる環境を整える。

1店舗当たりのキャパシティを引き上げるために行っていることが大きく3つ。1つはシステムの刷新、もう1つは物流システムの増強で、物流は自社化し、間口ホールディングスと会社を作り、配送の能力を上げている。3つ目は店舗の人員を含めたオペレーションの見直し。

加えて、ダークストアについてもトライをしている。いま都内1店舗あるが、めどとしては見えてきているので、うまくいけばダークストアのようなものを増やしていこうと思っている。2店舗目のダークストアのような形で、ハイブリッドの店を近々オープンしようと考えている。

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