ボランタリーチェーンとは? 意味や事例、フランチャイズチェーンとの違い等を解説

2022.10.05

2022.01.31

ボランタリーチェーンは、フランチャイズとは違い、経営の自由度が高く、加盟店同士、同業の企業がさまざまな情報を共有・交換しながら事業を継続できるなどの特徴がある。

本記事では、ボランタリーチェーンの定義や事例、またフランチャイズチェーンとの違い、メリットデメリットなど詳しく解説していく。

ボランタリーチェーンの意味とは? 分かりやすく解説

小売流通業界の用語で「ボランタリーチェーン」がある。ボランタリーには、「自発的」という意味があり、それぞれ独立資本で経営している小売店でありながら、同じ目的や利益を共有するために協力して組織としてチェーン展開していく団体である。

ボランタリーチェーンにもフランチャイズのように、加盟している小売店を指導するチェーンの本部がある。しかし、ボランタリーチェーンは基本的に加盟している小売店が結成するもので、主体となって活動するのが小売店であるため、横のつながりも深いのが特徴だ。

ボランタリーチェーンの目的

ボランタリーチェーンの目的は、小売店同士の相互助成である。同じ目的を持った小売店同士がボランタリーチェーンに加盟して助け合う。ボランタリーチェーンに加盟することで、大企業や一極集中のシステムなどに対抗しやすくなる。

たとえば、1店舗または数店舗だけを展開している店の場合、どの業者から仕入れを幾らで行うか、自力でリサーチし取引しなければいけない。しかしボランタリーチェーンに加盟していれば、同じ業種同士の小売店で一括で安く仕入れを行うなどコスト削減もできる。

また、それぞれの小売店が持っている情報を共有しあって、よりよいビジネスモデルの展開も可能だ。

ボランタリーチェーンの定義

ボランタリーチェーンは加盟店が結成するものであるが、その定義は幾つかある。まず同じ目的を持った独立資本で経営している小売店同士が主体的に加盟、結成すること。

ボランタリーチェーン結成後は、小売店同士が相互に協力して活動していく。ボランタリーチェーンは、最初は小売店を対象とした組織であったが、近年はサービス業などでも結成や活動が可能だとして、小売業の他にサービス業も対象の業種になっている。

加盟している小売業はチェーンオペレーションの仕組みを作り、活用しながら、地域の消費者のニーズに対応したサービスや商品を提供する。

ボランタリーチェーンの仕組み

ボランタリーチェーンは、本部と加盟店で構成されるが、本部が加盟している小売店を管理するという性質のものではなく、加盟店が主体となって本部を形成するため、加盟店同士の横のつながりがある。

本部は加盟店が成長できるようビジネスモデルの方向性を示したり、商品の供給をしたりするなどのサポートを行う。加盟店は、商品に対する対価を本部に支払う他、活動への協力も行う。

また加盟店総会が定期的に開かれ、その場で加盟店から意見を申し立て、本部に伝えられる。総会では加盟店の意見を本部に反映させたり、加盟店へ相互助成の支援を行ったりもする。

ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンの違い

ボランタリーチェーンとは?フランチャイズチェーンとの違いとは?

ボランタリーチェーンはフランチャイズと似ている部分もあるが、両者には明確な違いがある。

フランチャイズは、本部と加盟店が1対1でフランチャイズ契約を結び、経営ノウハウや商標を提供する。加盟店は本部に対して商標使用のロイヤリティを支払う。

一方、ボランタリーチェーンは加盟店同士が組織を結成する。本部から提供される商品やリテールのサポートに対して対価を支払う仕組みになっている。

ボランタリーチェーンは横のつながりが深いが、フランチャイズは加盟店同士の横のつながりがほぼない点も、大きな違いである。

ボランタリーチェーンのメリットとは?

本部が各加盟店と契約を結び、商標や経営ノウハウを提供するフランチャイズとは違い、ボランタリーチェーンは、加盟店自らが積極的にかかわって活動する。そのため、加盟店同士の横のつながりを生かしたメリットがいろいろある。ボランタリーチェーンに加盟するメリットについて詳しく解説する。

情報共有

ボランタリーチェーンは、加盟店同士が主体的に結成し活動するため、同じ目的を持った加盟店同士でさまざまな情報共有ができる。

自社で導入していないシステムや経営戦略について他社から詳しい話を聞いたり、マーケットのトレンドや消費者のニーズの情報を共有したりなど、店舗の運営に反映できる情報を教えてもらい、自社が成長・発展につなげられる。

加盟店総会や普段からの加盟店のオーナー同士のコミュニケーションで情報共有することもあるが、POSやクラウドシステムを使い情報交換をしているところもある。

仕入れコストを抑えられる

ボランタリーチェーンへ加盟することで、本部から商品や材料などの仕入れを大量に一括で行えるようになる。

小売店がそれぞれで仕入れるよりもコストを削減できるという大きなメリットがある

一度に注文する量が多くなれば値段の交渉がしやすくなり、大口の取引先は仕入先の業者にとっても優良な顧客になる。仕入れコストを抑えられる分、各加盟店の利益が増えることにもつながる。

また、本部で商品の仕入れを集中して管理すれば、商品全体のマーチャンダイジング情報も集められるため、仕入作業の効率化が可能だ。

運営や展開などの自由度が高い

フランチャイズの場合、基本的に本部が提供するマニュアルや経営ノウハウを実行しなければならない。

業界によっては細かな規定やマニュアルなどが用意されていて、それに沿った経営をする必要がある。店舗の外装や内装、制服や取り扱う商品やキャンペーンの指示などもある。

ボランタリーチェーンの場合、運営や展開などはそれぞれの加盟店に任せる傾向が強く、細かい規則やルールがあるわけではないので自由度が高い

店舗独自のサービスやキャンペーンを行ったり、オリジナルメニューを開発したりと自由な店舗運営をする例も多く、小売店の独自性を維持した経営をしているところが多い。

仕入れコストは下げられて、運営の自由度は確保できる点が、ボランタリーチェーンの大きなメリットといえるだろう。

ボランタリーチェーンのデメリットとは?

ボランタリーチェーンにもデメリットはある。まず、ボランタリーチェーンに加盟するためには、入会金と会費が必要になる。金額はそれぞれのボランタリーチェーンによって違うが、会費を支払って仕入れコストを下げられるなどのメリットを享受できても、入会金や会費の方が高くなってしまうなら、加盟を考えた方がよいだろう。

ボランタリーチェーン加入前に、必要な入会金や会費が幾らかは調べられる。しかし、金銭的な意味だけでなく、他にもボランタリーチェーンのデメリットは存在する。

自力で運営する必要がある

ボランタリーチェーンの場合、フランチャイズのような今まで構築してきたマニュアルや経営ノウハウなどを提供してもらって運営するわけではない。

ボランタリーチェーンに加盟しても経営は自力で行う必要がある。アドバイスや情報共有はもちろんあるが、あくまでも経営方針は小売店が決定して運営していかなければいけない。

フランチャイズなら、ブランドのネームバリューとノウハウに沿った経営で、比較的早い段階で安定した店舗運営ができるようになるケースが多いが、ボランタリーチェーンの場合は加盟後も経営戦略をしっかり立てる必要がある。

フランチャイズよりも自由に経営ができる分、小売店の経営者は経営努力も続けなければいけないことを覚えておこう。

ブランドの打ち出しは、フランチャイズほどではない

ボランタリーチェーンは、フランチャイズチェーンのような強力なブランドの打ち出しをしない。例えば大手のフランチャイズチェーンならば抜群の知名度があり、その商標を利用してビジネスができるので、多額の宣伝広告費を使ったりしなくても集客が可能だ。

チェーン本部もそのブランド力を高めるための活動を積極的に実施することから、そのメリットを享受しやすい。

しかしボランタリーチェーンの場合、独立した小売店同士で結成していることもあり、ブランドの打ち出しは、フランチャイズチェーンほど強くはない

経営だけでなく、店の知名度を上げていく宣伝も自分でやらなければいけない。ボランタリーチェーンは、あくまでも相互助成の団体で、知名度や売上を上げていく工夫や努力はそれぞれの小売店で行う必要があるといえる。

ボランタリーチェーンに適した業種や企業の例

ボランタリーチェーンが適している業種や企業などを紹介しよう。

スーパーマーケット

多数の品目を取り扱うスーパーマーケットは、ボランタリーチェーンを結成して、商品の仕入れを効率的に安く行える。また、加盟店同士でプライベートブランドの商品開発などにも取り組めるだろう。

さらに加盟店の売上POSデータを本部で一括で管理することで、売れ筋商品や地域ごとで異なる消費者のニーズなどが分かる。POSデータの分析を行えば、新規店の業務効率の改善などの支援も行える。

ボランタリーチェーンに加盟することで、経営安定化の相互助成の支援を受けられ、本部は各加盟店の情報を管理してマーケティングに活用する流れが作れる。

全国に約1600店以上の加盟店を持つ「全日食チェーン」や、全国約3700店舗が加盟する「CGC」などが代表的なボランタリーチェーンだ。

ドラッグストア

ドラッグストアなども、ボランタリーチェーンに適した業種である。医薬品の共同購入によってコストを抑えられる。規模の小さい薬局でも、大手のチェーン薬局が医薬品卸と取り決めしている仕入価格に近い値段で医薬品を手に入れられる。値段の交渉は直接薬局が行うのではなく、ボランタリーチェーンで行うので手間も省ける。

他にもドラッグストアの経営ノウハウの共有や在庫管理、レセコン、薬歴、在庫管理システム、デッドストックの売買なども可能である。後継者がいない薬局や、将来独立して薬局を経営したい薬剤師などにとってもボランタリーチェーンは役立つだろう。

ボランタリーチェーンは加盟者同士で助け合える仕組み

ボランタリーチェーンは、加盟店同士が集まり結成して活動する団体である。経営の自由度は高いまま、共同仕入れなどで仕入れコストを下げたり、経営ノウハウや売れ筋商品などの情報を共有したりと経営に役立つサポートを加盟店同士で行う。

ボランタリーチェーンは、個人事業主とフランチャイズの間のようなシステムだが、経営努力はそれぞれの加盟店で続けなければいけない。ボランタリーの意味である「自発的」の言葉どおり、自発性が求められる点を覚えておこう。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…