ESG経営とは?注目される背景やSDGsとの違い、メリットや課題を解説

2022.05.17

2022.04.22

持続可能性(サステナビリティ)に関連する課題への関心の高まりとともに、注目されるようになったのが「ESG経営」だ。持続可能性への取り組みは人類や社会全体のマクロな観点だけでなく、企業や個人といったミクロな観点からも求められている。企業がESG経営を導入することで多くのメリットがある一方、課題があることも忘れてはいけない。ESG経営の概要や注目される背景、SDGsなどの似ている言葉との違い、企業が導入するメリットや課題を解説する。

ESG経営の概要と注目される背景を解説

ESG経営の概要と、注目される背景を解説する。

ESGの観点を重視した経営

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(管理体制)」の頭文字を取った略語だ。社会における持続可能性の実現には、企業がESGの3分野での主要課題へ取り組むことが求められている。ESGの観点を重視した企業経営が、ESG経営だ。

人類が豊かさを求めて経済的な発展をした結果、地球環境に多くの課題を残した。「Environment(環境)」は、環境課題を解決するための取り組みを指す。おもな環境課題解決の取り組みには以下のものがある。

  • 気候変動対策
  • 温室効果ガスの排出量の削減
  • 産業廃棄物や公害の撤廃
  • 水やエネルギーの効率的利用
  • 森林破壊の抑制
  • 生物多様性の尊重

「Social(社会)」は、利益の追及を重視した結果生まれた企業や個人の社会課題を解決するための取り組みだ。より豊かな社会の実現のために、以下のような取り組みが企業へ求められている。

  • 労働条件の適正化
  • 機会均等の遵守
  • 人権の保護
  • 従業員の多様性(ダイバーシティ)の促進
  • 安全かつ衛生的な職場環境の整備
  • 児童労働・奴隷制度の反対

「Governance(管理体制)」とは、社会の持続的な発展の前提となる企業統治を指す。企業が健全な経営を行うために、以下のような自己管理体制の整備が求められている。

  • 企業倫理の遵守
  • 役員報酬の適切な支給
  • 取締役会の多様性と構成の適正化
  • 贈収賄や汚職の撤廃
  • コンプライアンスの遵守

投資家の評価指標として注目される

ESGが言葉としてはじめて登場したのは、2006年に国連が発表した「責任投資原則(PRI)」の条文といわれている。その後2008年のリーマンショックによる世界的恐慌を受け、ESGは企業の長期的な存続を踏まえた新しい投資評価判断基準として注目されるようになった。

ESG経営を行っている企業を評価し、投資を行うのが「ESG投資」だ。ESG構成銘柄として評価された企業は、ESGへの取り組みがESG指数として可視化される。投資家は、ESG指数や企業が公表しているESGへの取り組みを参考に、投資を行う。

持続可能な社会の実現のために注目される

ESG経営が注目されているのは、投資評価基準としてだけではない。元々ESGの概念が生まれた背景には、人類が豊かさを求めるために経済や技術を発展させた結果、環境や社会体制に多くの課題を残したことがある。企業が自社の発展のみを重視し経営を続けると、社会との共存は叶わない。今後も企業と社会が相互に発展し、持続するために企業が持つべき社会的責任として、ESG経営が注目されている。

ESGと似ている言葉との比較

ESGと同じ持続可能性の課題への取り組みとして注目されている言葉に「SDGs」がある。また、企業の社会的責任という観点では「CSR」という言葉もある。それぞれの言葉の意味とESGの違いを解説する。

SDGsとESGの違い

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略語。2030年までに誰一人取り残さない、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標を指す。SDGsは以下の17のゴール、さらに169のターゲットから構成されているのが特徴だ。

  • 貧困をなくそう
  • 飢饉をゼロに
  • すべての人に健康と福祉を
  • 質の高い教育をみんなに
  • ジェンダー平等を実現しよう
  • 安全な水とトイレを世界中に
  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 働きがいも経済成長も
  • 産業と技術革新の基礎をつくろう
  • 人や国の不平等をなくそう
  • 住み続けられるまちづくりを
  • つくる責任つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を
  • 海の豊かさを守ろう
  • 陸の豊かさも守ろう
  • 平和と公正をすべての人に
  • パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsの17のゴールと169のターゲットの中には、ESGの3つの観点と共通する課題も多く含まれている。

SDGsとESGの違いは、適用範囲や概念だ。SDGsは国連サミットによって採択された国連や各国政府全体の目標であるのに対して、ESGは経営や投資の分野において、企業の長期的な目標を指している。

CSRとESGの違い

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略語で、企業の社会的責任を指す。具体例を上げると、環境への配慮や社会貢献などの取り組みが該当する。企業が利益を追及するのみではなく、ステークホルダー(利害関係者)との対話を通じた持続可能な社会の発展に貢献する取り組みがCSRだ。

CSRは企業が自社の特徴を活かして、社会課題の解決を図るための社会的責任を指す。そのため、ESG経営は企業での具体的なCSRの取り組みのひとつといえるだろう。

ESG経営を取り入れる5つのメリット

ESG経営を取り入れると得られる、5つのメリットを解説する。

投資評価の向上

ESG経営を取り入れている企業として認められると、ESG構成銘柄として評価され、ESG投資の対象となる。投資家はESG指数や企業の具体的なESGへの取り組みを指標として投資を行うため、ESG経営を取り入れることで投資評価の向上が期待できるだろう。銘柄として評価されることで、企業にとっても安定的にESGへの取り組みや事業推進ができるメリットがある。

経営リスクの軽減

災害、金融危機、国同士の衝突など、自社努力では防げない企業の経営に大きく影響する要因は多々ある。近年ではコロナウイルスによる世界的パンデミックや、ウクライナ危機が代表的だ。利益のみを追求した企業経営を続けていると、想定外の事態によって企業の経営に大きな打撃を受ける可能性が高い。

さまざまなリスクに対応できる施策や能力を身に付けておくことも、事業継続におけるリスクマネジメントとして必要だ。ESG経営は直接的な利益には直結しにくい一方、企業の事業継続のための対応力を身に付けられるメリットがある。ESG経営での新事業によって、リスクの軽減や回避につながるケースもあるだろう。

企業イメージの向上

社会における持続可能性への取り組みが企業にも求められているため、ESG経営を公表することでステークホルダーや消費者へ好意的なイメージを与えられるメリットがある。企業イメージが向上することで純利益が上がるだけでなく、採用希望者の増加による優秀な人材の確保や資金調達面で有利になり、キャッシュフローが増強されるなどのメリットも得られるだろう。

商品や企業のブランディングにつながる

ESG経営での事業や取り組みが、商品やサービス、企業のブランディングにつながるメリットもある。社会的な貢献を行っている企業と消費者から判断、評価されることで、商品やサービス、企業のファンづくりにもつながる可能性も高い。

イノベーションの創出につながる

再生可能エネルギーやサステナブルファッションなど、持続可能性に着目したことで付加価値のある、新しい商品やサービスも多く誕生している。ESG経営における具体的な取り組みは、企業の特徴や能力を活かしたものを模索していく必要があるが、その中で新規事業や新しい価値を創出する機会が得られることも多い。

持続可能性に着目した商品やサービスは、社会的ニーズが高く注目されやすい傾向にある。ESG経営が企業に安定的な利益をもたらすイノベーションを生み出し、ビジネスチャンスの拡大にもつながる可能性があるだろう。

ESG経営への課題と対策方法

ESG経営は多くのメリットが得られる一方、導入には多くの課題がある。ESG経営導入前に知っておきたいESG経営の課題と対策方法を解説する。

指標や基準が明確ではない

ESGは誕生が2006年とまだ歴史が浅い概念だ。そのため、世界的に注目されているものの明確な指標や基準がまだ存在しない。これからESG経営を自社で取り入れるにあたり、取り入れる定義や指標、基準が分からないという企業や担当者も多いだろう。さらに、ESG経営に舵を切っても、正しい方向へ、順調に進んでいるかも判断できない。

ESG経営を行う企業が増えていくにつれて具体的な定義や指標、基準は今後明確になっていくことが期待されているが、現時点では最適な経営指標を自社で判断するしかない。定義や指標、基準のヒントを得るには、すでにESG経営を行っている企業の事例を参考にするのも良いだろう。

長期的な施策が必要となる

ESG経営は、企業が3つの観点からの課題解決への取り組みを行う、社会貢献が目的だ。そのため、短期的な施策では成果が判断しにくく、長期的な施策が必要となる。成果がすぐに出ないためフィードバックにも時間がかかり、次の取り組みへも向かいにくいのもデメリットだ。

ESG経営における取り組みの中でも、自社の現在の業務に直結するものを選んで積極的に進めていくのが有効だ。そのために、ESGのなかでもS(社会)とG(管理体制)に関する取り組みを優先しよう。たとえばSの観点で多様な働き方を認める取り組みとしてテレワーク業務を拡大させる、地方社員を設置する、ハラスメント対策を強化するなどがある。Gの観点ではコンプライアンスの遵守として積極的な情報開示を行うなどが該当する。現段階で取り入れられるSとGの取り組みを行い、成果を見極めたあとにE(環境)への取り組みとして書類のペーパーレス化、オフィスの消費電力の削減などに講じると良いだろう。

コストがかかる

ESG経営における取り組みのために、今まで発生しなかったコストの負担が大きくなる課題がある。たとえばSの取り組みとして従業員の福利厚生を充実させたり、給料を見直したりすれば、労務コストが上がる。

前述通りESG経営には長期的な施策が必要となり、短期的な成果が出せない。ESG経営だからこそ、長期的なコスト負担増も覚悟しておく必要がある。コストを投じて従業員への待遇を改善した結果、企業のイメージアップによる採用機会の増加により、優秀な人材を多く確保し企業の利益に寄与する可能性も高い。初期投資よりも、結果的に大きな利益や成果を上げることも期待できる。SDGsの取り組みと同じく、ESG経営も長期的な目で成果を見るのが重要だ。

全社員の協力や周知が必要

ESG経営における取り組みのなかには、経営陣だけでなく従業員全体の協力が必要となるものも多い。たとえば、自社オフィスの周りの清掃活動やボランティア活動への参加などは、従業員の協力なくしては実現できない取り組みだ。

ESG経営での取り組みへ従業員を参加させることで、現在の業務に加えて別の負担をかけてしまうこともあるだろう。ESG経営は短期的な成果は期待できないため、従業員によっては、ESG経営に対して不満や反発を持つ者が出てくる可能性もある。

ESG経営を行う意義や目的を明確にし、全社員に周知することがESG経営を成功させるために必要だ。社内報やポータルサイトなどでESG経営について周知し、全社員が同じ方向を向くための取り組みをしよう。定期的にESG経営での成果を提示し、協力している従業員へ成果を認識させるのも重要だ。

ESG経営では短期型投資の対象にならない

企業のESG経営の取り組みが評価されると、ESG投資の対象となり評価も上がるメリットがある。ただし、ESG経営の取り組みは短期的な成果が出ないため、投資家にとっては早期収益化の銘柄と見なされないことが多い。そのため、ESG経営を導入しても、短期型投資の対象とならないことに注意が必要だ。

短期型投資の対象と見られるためには、ESG経営以外の取り組みが必要となる。企業として注目される、評価が上がるための施策や行動へ向かおう。

ESG経営は今後活性化が期待されている

ESG経営の概要や注目されている背景、似ている言葉との比較、ESG経営を取り入れるメリットや課題と対策方法を解説した。企業は利益や経済の発展のみを追い求めるのではなく、社会の持続可能性を社会の一員としてともに考える立場にシフトしている。歴史の新しい概念であるESG経営はまだ取り入れている企業も少なく、明確な指標や定義がない。

だからこそ、自社の特色を活かした経営や取り組みへ柔軟に舵を切れる。今後持続可能性を考えるにあたり、ESG経営を取り入れる企業の増加や活性化が期待されている。社会のために自社が何をすべきかを考え、踏み出すことが日本企業に求められているといえるだろう。

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