イニシャルコストとは?意味や概要をランニングコストとの違いを交えて解説
2022.10.05
2022.07.21

新たに製品を購入する際や、設備・システム・サービスなどを契約する際に必要となるイニシャルコスト。事業展開・営業活動などを行う上では、必ず知っておきたい経営学用語の1つである。
本記事では、イニシャルコストの意味とランニングコストとの違いをまとめた後、イニシャルコストを抑えるメリット・デメリット、削減方法まで解説していく。
目次
イニシャルコストとは?
イニシャルコストとは、初期費用を表す用語である。イニシャルには「初めの・最初の・初期の」といった意味があり、そこに「費用」を表すコストを組み合わせ、「初期費用」として使われるようになった。
イニシャルコストの事例として、例えばシステムの導入を考えてみる。システムを本格運用するには、要件定義・カスタマイズ・ハードウェアの導入・既存システムからのデータ移行・操作指導など、さまざまな工程を経なければならない。
開発費用や導入支援費はもちろん、加えてハードウェア調達費・ライセンス費用なども発生。このように、システムの構築から導入までに要する費用が、イニシャルコストに該当する。
ビジネスシーンにおいて、イニシャルコストは業界を問わず利用されている。なお、イニシャルコストは収益を上げるために必要な費用であり、売上に左右されない。よって、会計上は固定費で分類するのが基本だ。
イニシャルコストとランニングコストの違い
イニシャルコストと同様、経営学用語として理解しておきたいのがランニングコストだ。ランニングコストとは、建物・機器・設備などを維持するために必要な費用のことを言う。
前述のシステム導入で考えてみると、例えば本稼働後は、サポート・ソフトウェアアップデートを受けるための保守費用が発生する。保守費用は年単位で必要になるので、ランニングコストに当たる。
その他、コピー機を例に挙げると、コピー機本体の購入費や設置費はイニシャルコスト、用紙代・インク代などはランニングコストに該当。費用発生のタイミングが、イニシャルコストとランニングコストで異なると言えるだろう。
イニシャルコストを抑えるメリット・デメリット
製品の設計から解体に至るまでの費用はライフサイクルコストと呼ばれ、イニシャルコストとランニングコストから成る。イニシャルコストとランニングコストの割合は、製品によって大きく異なるのが特徴。
ここでは、イニシャルコストを抑えることによるメリット・デメリットを解説していく。
コストの回収に時間がかからない
イニシャルコストを抑える大きなメリットとしては、黒字経営に繋げやすい点が挙げられる。発生したイニシャルコストの回収は必要不可欠であるが、費用が高額であれば、回収に時間を要してしまう。
場合によっては赤字経営が続き、社員のモチベーション低下にも繋がりかねない。しかし、イニシャルコストは抑えれば、早期に黒字経営に転じやすいと言えるだろう。
ランニングコストが高くなる
イニシャルコストを下げるメリットは大きいが、逆にランニングコストが高くなるデメリットも存在する。
例えば、駐車場を経営する際、全自動で料金精算を行うコインパーキングを導入すれば、システムや設備に係るイニシャルコストは高くなるが、無人経営のため人件費は発生しない。つまり、ランニングコストを抑えられる。対して、有人で駐車場経営を行う場合、システム・設備の導入が不要なのでイニシャルコストは抑えられるが、日々人件費が発生するため、ランニングコストが高くなる。
その他、本体代の安い中古・型落ちの業務用家電を購入した結果、イニシャルコストは抑えられたものの節電効率が悪く、ランニングコストが高額になるというケースも。
イニシャルコストとランニングコストの間には、基本的に相関関係が成り立っているため、トータルコストで判断することが大切と言えるだろう。
イニシャルコストとランニングコストどちらを抑えるべき?
相関関係にあるイニシャルコストとランニングコストはバランスが重要だが、強いて言うなら、削減する際はイニシャルコストを重要視したい。なぜなら、イニシャルコストの削減は、金銭的リスクの回避にも繋がるからだ。
高額なイニシャルコストを費やして事業を展開する場合、回収しきる前にライバル企業の登場や災害など外的要因を受け、赤字経営が続く可能性も。また、システムやサービスを導入した結果、ギャップがあり使い物にならなかったというケースも考えられる。
しかし、イニシャルコストが低ければ、ランニングコストが高額であっても黒字に転じる期間は短く、金銭的リスクも低い。早期にシステム・サービスを解約する場合でも、高額なイニシャルコストをかけるより、資金面の負担は比較的少なく済むと言えるだろう。
イニシャルコストを抑える方法
イニシャルコストを抑える方法は業界にもよるが、検討して欲しいのがクラウドサービスの利用だ。クラウドサービスを契約すれば、自社でサーバーやネットワーク機器を調達・保有する必要がなくなり、イニシャルコストを大きく抑えられる。
コスト面以外にも、スムーズなシステム構築で導入期間が短い、システムやハードウェアのメンテナンスが不要など、豊富なメリットが揃っているのも特徴。
サービスの種類は幅広く、会計管理・販売管理・在庫管理・人事管理・給与管理といった基幹システムをクラウドで提供する企業もある。新たにシステムを導入する際は、イニシャルコストを抑えられるクラウドサービスも視野に入れて欲しい。
イニシャルコストのまとめ
会社を経営する上で、必ず直面するのがコストに関する問題。初期費用や導入費用などに該当するイニシャルコストは、固定費の中でも大きな割合を占める。
しかし、イニシャルコストは高額であれば、それだけ投資資金の回収に時間がかかる。早期に黒字化経営に繋げ、金銭的なリスクを低減したい場合は、イニシャルコストを抑えた投資が有効と言えるだろう。
また、ランニングコストも忘れてはならない重要な運用資金。イニシャルコスト・ランニングコストの両方を考慮し、自社の損益分岐点を知った上で経営戦略を立てていこう。