ビオセボンがおよそ1年半ぶりに出店を再開、既存店全店改装、狙いはコンパクトの中にあっての「品揃え強化」
2024.08.14
ビオセボン・ジャポンは7月26日、東京都渋谷区の代々木上原駅北口駅前に代々木上原店をオープンした。代々木上原駅から約20mの距離で、店舗北側は閑静な戸建て、南側には中低層のマンションが立ち並ぶ住宅街に立地している。
同社としては、「代々木上原は都心へのアクセスがよく、洗練されたグルメやユニークなお店が軒を連ねる人気のエリア」と捉えていて、ビオセボンの商圏として適していると判断した。
近隣には公園もあることから、ピクニックなど行楽の需要も多いと考えられるため、惣菜やチーズ、スイーツ、自然派ワインなど幅広いオーガニック商品を豊富に取りそろえるとしている。商圏内にはオーガニックを含む自然派の商品を取りそろえる店が複数あることから、同社としては地域最大級となる約2000SKUのオーガニック商品を取りそろえ、差別化を図る戦略に出た。
もともと飲食店が出店していたスペースに居抜き出店。売場は38.32坪で、小型店ではあるが、既存店には30坪以下の店もあるため同社としては最小規模ではない。
「ビオセボン」はフランス発のオーガニックスーパーマーケットで、日本ではイオンが事業主体となってビオセボン・ジャポンを設立し、2016年から事業を手掛けている。これまで有機野菜をはじめヨーロッパ各国から直輸入した菓子や調味料など、グロサリーを販売してきた。
「有機(オーガニック)」は日本において認証制度がある商品分野だが、認証自体のハードルの高さの一方で需要の広がりが限られることもあって、全体の中での構成比がなかなか高まっていない。そうした状況から生産者もなかなか投資に踏み切れず、量産も進まないことから価格も高止まりしてしまっている状況がある。
一方で、欧米ではオーガニック商品は大きな広がりを見せていることから、ビオセボン・ジャポンでは日本においてオーガニックを「日常使い」にまで拡大することを目指している。
一時期、短期間に多くの出店をしていたが、ここ1年半ほど新規出店を止め、内部固めをしていた。代々木上原店は22年12月の旗の台店(東京・品川)以来、久しぶりの新店となる。同店のオープンで、24店体制となった。
1年半あまりの期間に20店以上、全店を改装
新規出店を止めていた背景について八木盛之社長は、「23年は改装に全力を注いだ」と語る。特に注力したのは各店における売場尺数とそれに伴う品揃えの充実だ。「既存店磨くぞということで注力して、基本的に全店、何かしら触っている。店舗にもよるが、基本的にはグロッサリーを中心に棚を増やした。純粋に述べ尺は少ない店でも10%は増えている」(同)
商業施設内の店舗で面積を増やしたり、ゴンドラの高さを高めたりすることで、店によっては述べ尺が30~50%増えている店もあるという。
売場尺数が増えた分、各店、取扱SKU数が増えているが、これはビオセボン・ジャポンとして全体の商品数が増えたわけではない。同社で最多の品揃えをしているのは1号店の麻布十番店(東京・港)で、3600~3700SKUを展開しているが、「それぞれのお店についてわれわれのベスト(麻布十番店の品揃え)に近づけていく」(八木社長)ことが狙いだった。
棚割りを進化させるために、もう1段棚を入れるにはどうしたら良いかという視点でゴンドラの高さを上げたり、レイアウトを変えたり、そうしたことを組み合わせながら、「いかに小型店でもSKU数をきちっと確保するか」(八木社長)に注力した。改装の効果もあって、23年は年間で既存店売上げは2桁伸びたという。
今回オープンした代々木上原店の品揃えSKU数は2743と、面積当たりの品揃え数は以前と比べてずいぶん増えている。平台や冷蔵ケースについては、低床のタイプを導入することで棚段を増やしている。40坪弱の売場に2700を超える品揃えができたのはそうした取り組みによるところが大きい。
ビオセボンのような専門性の高いフォーマットは、やはりお客の店舗に対する期待もあってか、「それぞれの店についてなるべく品揃えが多い方が良い」ということなのだろう。八木社長は、全店改装を経たいまも「まだまだ」と言う。
「グロッサリー系でいえば、いま3、4フェースのところを1フェースにすればSKUは増やせる。まだまだ同じ面積でも品揃えは増やせる」(八木社長)
フェーシング数を増やして補充の効率を高める方向性とは逆であるが、専門性の高い小型店に関しては、「企業として充実した品揃えがあって、それをコンパクトな店でもきっと展開し、お買物の楽しさをきちっと提供する。それをやっていきたい」(八木社長)という。
昨年11月には神奈川県川崎市にEC(電子商取引)との共用の形で在庫拠点を設け、各店への小分け配送に対応するようにした。商品には仕入時の単位が大きなものもあるため、これまで個店のバックヤードにやむを得ず保管していた在庫を減らすことにつながった。改装店の取扱SKU数を増やせたのにはそうした背景もある。
また今後は、全体の品揃えについても、「深さを追求したい。夢に近いところもあるが、(現状の品揃えを)いかに全部オーガニックでやるかを目指す」(八木社長)とする。
現状、野菜については99%以上がオーガニック(有機)になっているが、果物は難しい部分もある。それでもモモなどは生産者の広がりもあるなど、徐々にオーガニック比率は高まっているという。広がって来れば、価格を打ち出すこともしやすくなる。まさに同社が目指すオーガニックを「日常使い」にする方向性だ。
ビオセボンの核売場ともいえる量り売りのナッツ、ドライフルーツ類は値下げすることでトライアルを促す。
一方で、この間、イオングループ店舗への商品供給は増えていて、現在では1000店程度まで広がっている。もちろん、店舗ごとに取扱量が異なり、コーナー化してそれなりの商品数を扱う事業会社もある一方で、多くが棚1本や単品ベースの取り扱いの店であるため、1000店といっても店舗売上げを超えるような規模にはなっていない。
ちなみに1000店規模で行き渡っているのは、ビオセボンがイタリアから直輸入で引いている植物性ミルクの「イソラビオ」。製造メーカーにとっても非常に大きな取引になっている。
売上げは2桁増、既存店客数も5%以上の伸び
全店改装の効果もあって、出店をストップする中にあっても売上げは2桁増で伸びているという。注目すべき点は、既存店客数が5%以上伸びているということで、確実にすそ野の広がりを感じさせる状況になっている。
同社は、コロナ禍に大きく売上げを伸ばしたこともあるため、伸び率自体は鈍化しているものの、引き続き力強い成長を遂げていることは重要になる。コロナ禍には特に農産の伸び率が高かったが、最近では農産が継続的に伸びる一方で、他の生鮮(肉、魚)やデイリーも伸びてきているということで、「ようやく生鮮、デイリーが追い付いてきている形で、日常使いのカテゴリーの伸びが強い」(八木社長)。
「なかなか海外視察に行けていなかったが、2月に行ってみて改めてフランス、ドイツのドラッグストア、SMではベビー食品がオーガニックしかないということに気付いた」(八木社長)
改めて日本でも伸びしろがあることを実感したという。
全店改装を伴う内部固めを経て、今年からは出店も再開する。すでに候補地は複数上がっているもよう。
出店誘致は全国からあるというが、商勢圏については当面の間、東京都、神奈川県に限定するのは変わらない。同社のフォーマットは基本的に小型店ということもあって、物流効率には特に注意を払っていることもある。
「日常使い」のオーガニックの定着に向けて同社が再び成長に向けて動き出す。
ビオセボン代々木上原店概要
所在地/東京都渋谷区西原3-11-8NODEUEHARA1階
オープン日/2024年7月26日
営業時間/9時~21時
売場面積/38.32坪
駐車場/無
駐輪場/無
コーヒーマシン/無
イートインスペース/無
商圏特性/人口2万5706人、世帯数1万3635世帯(徒歩10分圏内)