目的の言語化から始めることがDXの重要ポイント IoTで実現する現場のデジタル化 はじめの一歩

2023.07.25

DXにとってデジタル化は手段であって目的ではない。DXの第一歩は現場の課題を捉えて「デジタル化の目的を言語化すること」だ。IoTを活用したDXの事例を紹介する。

[PR/ITmedia]

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を用いてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増えている。2023年6月15日に開催された「リテールDXカンファレンス 2023夏」でのソラコム テクノロジー・エバンジェリスト 松下享平氏の講演「現場から始められるDX、課題の見つけ方とはじめの一歩」の内容を紹介する。

IoTはデータ活用までの時間が勝負

ソラコムの松下享平氏

人手に頼らずさまざまなセンサーやデバイスを通じてデータを集めるIoTは、モノやコトをデジタル化する仕組みだ。顧客の利便性向上や見守り、モビリティ、コミュニケーション支援、社会インフラの監視・制御などに役立ち、運輸・輸送や製造現場、商業施設など、社会のあらゆる場所で活用されている。

IoTの価値を最大限に引き出すために必要なことは何だろうか。松下氏は「DXの推進に当たって、現場で起こっている課題をどうやって発見し、皆で共有化するのか。デジタル化の目的を言語化することが最初の重要ポイントです」と語り、「IoTはあくまでも手段の1つに過ぎません」と強調する。

現場のデジタル化の本質を理解しておくことで、システムによる「労働力の置き換え」、業界を超えた連携による「新たな顧客価値の創造」、データの解像度向上による「既存ビジネスのスマート化」などを目指したIoTの活用が可能となる。

デジタル化の目的を「言語化」(提供:ソラコム)

次に松下氏は「IoTはデータ活用までの時間が勝負」と語った。IoTによって結果を得やすい現場があり、その結果は「利用頻度」と「規模」の掛け算によって決まると言う。講演では次の2つのケースを示し、どちらの現場がIoTでより大きな効果を得られるのか聴衆に問い掛けた。

(1)1拠点の設備で1日3回の稼働記録を行う

(2)100拠点の設備で年に1度の設備点検を行う

答えは(1)だ。(2)で結果が得られるのは最長で1年後だが、(1)は明日にでも結果が出るからだ。

「現場で毎日起こっていることをデジタル化することで、より早く結果を得られるのです。そして『IoTで便利になった』と多くの当事者が感じた成功体験を基に周囲を説得し、現場のさらなるデジタル化につなげていくことができます」(松下氏)

IoT製品を活用した現場のデジタル化の成功事例

どのような方法であれば、現場のデジタル化に踏み出せるのか。今すぐできる仕組みとして松下氏が紹介するのが、クラウドに接続し常時録画が可能な「Soracom Cloud Camera Services」(略称:ソラカメ)や、通信機能を内蔵し3つのボタンアクションによってどこでもボタンを実現する「SORACOM LTE-M Buttonシリーズ」の利用だ。

東日本を中心にスーパーマーケット(SM)を展開する小売業のベイシアは、ソラカメを導入することで、複数店舗の売場の状況をリアルタイムに確認できるようになった。「マネジャーが店舗を巡回しなくても、各店舗の棚割り(商品陳列の配置決め)の状況などを遠隔地から見て確認し、適切な指示が出せるようになりました」(松下氏)

SORACOM LTE-M Buttonシリーズの事例もある。自動車部品メーカーの旭鉄工だ。紙で記録していたライン業務の停止理由をIoTボタンで即時登録できるようにした。ライン停止の分析を始めるまでの時間を短縮でき、製造現場でデータに基づく改善や工夫を行う新たな文化を醸成できた。

紙からIoTに置き換えたとき、各ラインに「材料投入」「異常処置」「段替え」「掃除」「品質チェック」「休憩」という6種類のIoTボタンを設置した。ボタンを押すだけでライン停止の理由を入力できることはもちろん、最大のポイントは非常に面倒だった停止理由の記録と呼び出しを1つにまとめられたことだ。

「これまではラインを停止するたびに班長を呼び出し、班長が理由を聞いて記録。その後、『異常』であれば修理を依頼し、『掃除』であれば周囲の作業者を集めるなどしていました。IoTボタンを導入した現在は、ボタンを押した段階で呼び出し元が自動指定されるため、ラインの停止要因の記録と担当する作業者の呼び出しなどが自動的に実行されます。班長(管理者)と現場のどちらにも役立つという意味で、この仕組みは『1粒で2度おいしいIoTボタン』と言えます」(松下氏)

IoTボタンを「正しく押すメリット」を管理者と現場で共有(提供:ソラコム)

これらの事例から分かるように、人が頻繁に見回りをしている現場をカメラで監視したり、手書きで毎日している記録をワンタッチで済ませたりすることがIoTで可能になる。こうした労働力の置き換えを目的としたIoT活用によって削減した時間をより付加価値の高い業務に充てることが可能になり、生産性向上やコスト削減につながる。

「SPS 認定済パートナー」と共同で現場のデジタル化を支援

ソラコムはIoT機器だけでなく、IoTの「つなぐ」をより簡単に実現するプラットフォームを提供している。

「スマートフォンで利用している3GやLTE、5Gの他、LTE-MやSigfoxをはじめとするLPWA(Low Power Wide Area network)、Wi-Fi、衛星通信など幅広い無線規格に準拠したIoT通信をサポートしています。IoT通信を核として、各種通信デバイスやセンサーキット、クラウド型カメラなどのIoTデバイス、パートナークラウド(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud)に蓄積されたデータの可視化やデータに基づくアラート通知、遠隔操作、メンテナンスを可能にするクラウドサービスを提供しています」(松下氏)

もっとも、顧客の広範なニーズに対応するには、複数の専門領域にまたがったシステム構築が必要だ。そこでソラコムは、大規模なIoTパートナープログラム「SORACOM パートナースペース」(SPS)を展開している。

センシングデバイスやゲートウェー、LTE・3G対応モジュールなどのIoTデバイスを提供する「SPS デバイスパートナー」の他、システムインテグレーションやマネージドサービス、コンサルティングなどのプロフェッショナルサービスを提供する「SPS インテグレーションパートナー」、クラウドサービスやASPサービスを提供する「SPS ソリューションパートナー」、ソフトウェア、SaaS、PaaS、管理・セキュリティ製品、サービスなどを提供する「SPS テクノロジーパートナー」の4つのカテゴリーがあり、認定済みパートナーは150社を超えている。

このエコシステムこそがソラコムの最大の強みと言っても過言ではない。「IoTのプロフェッショナルであるこれらのSPS 認定済パートナーと一緒に、さらなる現場のデジタル化を支援していきます」と松下氏は訴求する。

現場のデジタル化に取り組む企業は、ソラコムの豊富な導入事例を参考にしたり、無料の個別相談などを活用したりして、自社の課題を解決する手段として、IoTの活用を検討してみてはいかがだろうか。

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