第1回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」金賞商品の開発秘話 ヤマナカ「東海道」
2022.08.15
2022.08.03
2022年6月1日~21日、第1回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」が実施されました。約4万5000投票+約40万「おいしそう!」によって、全国のスーパーマーケットで販売されているおいしいものの中から各受賞商品が決まりましたが、今回、リテールガイドでは、栄えある「金賞」に輝いた3商品の開発物語を取材しました。今後の商品開発の参考に、ぜひ、ご覧ください!
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目次
スイーツ部門 金賞

ヤマナカ
東海道 86円(税込み)
65年販売され続けるロングセラー核商品、姫路の人気商品から学び、東海でも大人気商品に
今年2月に創業100周年を迎えたヤマナカは名古屋市内を地盤に愛知県、一部三重県、岐阜県に60店以上を展開するスーパーマーケットチェーン。
そのヤマナカのデリカ部門で核商品となっているのが、今回、「おいしいもの総選挙」のスイーツ部門で金賞を獲得した「東海道」だ。大判焼や今川焼、あるいは回転焼などと呼ばれる中に餡が入った焼き菓子で、焼き印が入っている以外は一見、普通の商品に見える。
しかし、こうした定番商品こそ、飽きの来ない商品として頻度高く買われる核商品とすることが重要であることは確かだろう。
2代目が兵庫県姫路市を訪問した際、人気の商品に注目
「東海道」は、創業時の中野商店が新たにヤマナカとして設立された昭和32年(1957年)から約65年間販売を開始された非常に歴史ある商品。きっかけは、2代目社長の中野富彦氏がスーパーマーケットの勉強会の一環で兵庫県姫路市を訪問した際、現地で非常に人気のあった大判焼店の「御座候(ござそうろう)」に感銘を受けたことだという。
その後、御座候に同様のものをヤマナカでも販売させてもらえないか打診。それが叶い、原材料や焼き方の指導も受けながら当初は全く同じレシピで1個10円の売価での販売が始まった。
その後、次第にヤマナカ独自の改良を加え、現在のレシピに至っている。その過程で焼き印も入れるようになった。

例えば、当初は生地には小麦粉のみを使用していたが、現在では糖分などを付加したミックス粉を使用。さらに製造時に生卵を加えてふんわりするようにするなど工夫している。
小倉餡についても現在ではプライベートブランド商品を使用。常温保存ができるぎりぎりまで糖分を抑えながら、少し塩分を加えることでより甘みが感じられるような工夫を凝らし、全体としては甘さを控えめにしている。
「マニュアルで餡子を60g入れることになっているので、あまり甘すぎると、途中でくどいと感じてしまう。そこで少し甘さを抑えた餡子になっている」(大野数馬・商品ユニットデリカチームバイヤー)
1つ当たりの全体の重量は100~110gに対し、餡子が60g。比率としては過半を上回るが、この高い餡子の比率は御座候からの教えでもある。店内で焼く際は生地が薄いことから難易度もそれなりに高く、教育にも注力しているという。

一方で当初から原料の小豆については北海道産にこだわっている。
また、粒餡ではあるが、粒感を残しつつも、最後にあまり粒が残らないように多めにつぶしているという。そのため、食感としては、確かに粒感は感じられるものの、こし餡に近い印象を受ける。
今後は保存性の高い冷凍の商品も開発、いつでも楽しめるように
同社の愛知県、三重県の36店で販売されている東海道だが、現在は税込86円の売価で冬場で月間約6万個、夏場でも約5万5000個を販売する商品となっている。1店当たりの月間販売数は約1700~1800個、1日当たりでは60個程度となるが、売れる店だと一日中焼いているような状態だという。
1人当たりの購買数はばらばらではあるが、比較的高齢のお客さまにまとめ買いの傾向が見られる。冷凍保存して電子レンジ加熱で温めて食べているようだ。
店内で販売状況に応じて焼き、惣菜売場で売り切ることもあって、ロスは少ない。
基本的にセルフサービスの惣菜売場で1個、2個、5個の3SKUのパック販売で販売しているが、店舗によっては焼き物コーナーの「リトルクック」を展開し、そこでも対面販売をしている。


中に入れる餡にはバリエーションがあり、メインは売上げの約7割を占める小倉餡だが、それ以外にカスタードと季節の餡子がある。例えば、冬には甘栗餡、あまおうイチゴのクリームなど、夏にはラムネ餡、パイン餡といったように年ごとに開発している。今年は夏の餡として7月21日からピスタチオのクリームを導入した。
核商品として、確固たる位置づけを確保している東海道だが、今後は冷凍化した保存性の高い商品の開発を計画している。生地も餡について同じ仕様でメーカーに製造委託する形で、今期の下期には販売開始したい意向だ。
電子レンジ加熱、もしくは自然解凍の形で食べてもらう設計となっていることから、これまでまとめ買いし、冷凍していた人にとってはより便利な商品となる。
また、今後の拡販についても現状販売できていない30店弱の店舗については、改装によって導入が可能になる店舗については菓子製造業の許可も含め、進めて行く意向。
また、作業場の広さなどの面でどうしても展開が難しい店舗についても、日配品を製造するグループ会社で製造し、店舗に配送するといった方式も検討していきたいという。