第1回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」金賞商品の開発秘話 綿半魚類一宮漁港「海鮮パフェ」

2022.08.15

2022.08.04

2022年6月1日~21日、第1回全国スーパーマーケット「おいしいもの総選挙」が実施されました。約4万5000投票+約40万「おいしそう!」によって、全国のスーパーマーケットで販売されているおいしいものの中から各受賞商品が決まりましたが、今回、リテールガイドでは、栄えある「金賞」に輝いた3商品の開発物語を取材しました。今後の商品開発の参考に、ぜひ、ご覧ください!

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デリカ部門 金賞

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綿半魚類一宮漁港

海鮮パフェ

1382円(税込み)

鮮魚強化型店舗の看板商品として開発、「高さ」にフィーチャーしたインパクトある形状&ネーミングでSNSでも話題に

綿半グループで6店のスーパーマーケット(SM)を展開する綿半フレッシュマーケットは、1店を鮮魚専門店として鮮魚強化型の店舗として「綿半魚類一宮漁港」の店名で運営している。

同社の店舗はいずれも内陸に立地するが、同店はその中でも鮮魚の支持が高かったこと、また、SMとしての集客面ではやや課題を抱えていたこともあって今年3月3日にリニューアル。鮮魚を徹底的強化することで差別化を図り、かつ商圏を広げることで集客を図る戦略に出た。

結果、売上高構成比で約60%が寿司を含む鮮魚という圧倒的に鮮魚の支持が高い店に生まれ変わった。「ただし、鮮魚専門店という形でリニューアルしたわけだが、本当に鮮魚店が成功するかといえば、それは50年ぐらい前に結論が出ていて、なかなか難しいであろうと。われわれがそれを成功させていくのに当たって、1つは惣菜がキーだと思っていた」(大矢秀人・綿半魚類一宮漁港店長)

そこで魚惣菜の開発に注力し、その中でも「柱となるような商品が必要」と考えた中で生まれたのが今回、デリカ部門で金賞を受賞した「海鮮パフェ」だ。

同店の惣菜部門はほとんどの商品が何らかの形で魚を含んだ惣菜となっており、売上高構成比では10~15%に上る。

「目玉になるものをということで、当社の社長が山登りが趣味ということで高さをフィーチャーした。他のスーパーにはないような商品ということで取り組んだ」(田中勝己バイヤー)

リニューアルオープン日の3月3日から販売を開始。本体価格1280円、消費税8%の税込みで1382円となる高単価商品への挑戦だった。リニューアルオープンに際しては、同様のコンセプトで「マグロマウンテン」(本体価格1280円)、「海老天タワー」(同999円)も投入するなどインパクトのある商品作りが行われた。

皿の上にあるいろんな食べ物
自動的に生成された説明
左から「マグロマウンテン」(本体価格1280円)、「海老天タワー」(同999円)、そして今回金賞を受賞した「海鮮パフェ」(同1280円)。インパクトある「高さ」が売りの商品群。海老天タワーはブラックタイガーを7本使い、さらにオニオンリングでバランスを取るという斬新な発想

総重量は500g超え、ご飯1人前、具は3人前

海鮮パフェは、女性に好まれるアイテムであるアトランティックサーモン、国内産のホタテ貝の貝柱、イクラを基本の具材とし、そこにそのときに用意できる白身魚を組み合わせるという商品設計。このシンプルな組み合わせのために、味がぼやけない印象がある他、塩気のあるイクラがアクセントになっている。

ご飯は「より飽きがこないと考えた結果」(田中バイヤー)寿司飯とし、220~230gほど盛り付ける。メインの具は約300gにも及ぶことから総重量は500gを超える。通常の海鮮丼のバランスからすると、ご飯が1人前のやや多め、具が3人前といった形になる。

ちなみに、女性を意識した商品の一方でこのボリュームになっているのは、複数人でシェアしてもらうことも前提にあるためだ。

具を高く積み上げるため、製造の難易度は高い

その名のとおり形状自体にインパクトがある商品のため、製造の際は工夫を凝らしている。1人前用容器に盛り付けるため高さを出すのが大変であるが、崩れないように周りにフィルムを巻き、積み上げるようにしているという。販売の際はそのまま袋に入れて販売するなど、形状維持に細心の注意を払う。

販売時の状況

冷蔵ケースでの販売で、売れ行きを見ながら店内で都度、製造して販売していることから鮮度も高い。ヒット商品のため、多く売れた際には陳列までに時間がかかることもあるというが、それもあくまで鮮度重視の姿勢の表れといえる。

実際、3月3日の販売開始から4カ月以上たつが、コンスタントに売れ続けている。確かに単価は高めだが、ボリューム感があることからリピーターも含め支持を得ているようだ。鮮魚強化型に改装したことで商圏が広がったことも大きいとみられる。

週末には、具のみをパックしたキットの商品と併せ最多で1日73個売れる日もあるなど、確実に手応えを感じている。代理購買の可能性もあるものの、客層についても性別で特に偏りは見られない他、若年層から高齢層まで購買層の幅が広いのが特徴。これは当初の女性を意識した商品設計からするとやや意外といえるかもしれない。

特徴的な商品のため、当然、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などでも話題となった。実際に「指名買い」のお客もいるという。「買って帰られて、話題が作れるという要素があると思う」(田中バイヤー)。もちろん、「パフェ」という鮮魚としては意外ともいえる商品名も影響しているだろう。

海鮮パフェは定番商品として、今後も販売し続ける予定だという。

今後はさまざまな「白身」を活用した商品開発を視野

日常の食を支えるSMだが、今回の海鮮パフェのように新たな切り口の商品を開発し、提案しながら需要を喚起することも重要な取り組みの1つであるといえる。

その意味では、同社は海鮮パフェ以外にも着々と新しい商品に挑戦し続けている。例えば7月、8月の土用の丑に向けて、6月25日からはピザにうなぎを載せた商品として、「ひつまぶし」をもじった「ぴつまぶし」を展開。8インチ(約24cm)のホール、ハーフ、6分1サイズ2ピースといったSKUで販売している。

うなぎを載せたピザの「ぴつまぶし」を開発。8インチのホールで本体価格1800円

海鮮パフェについても、今後のアイデアとして「白身」を深掘りした商品として、炙った白身、湯引きした白身なども生かした形の商品を視野に入れているという。

「白身は淡泊だと思われているが、意外に味にバラエティがあるのでおもしろいと思う」(田中バイヤー)

「販売の現場からすると鮮魚の回転を速めるためにも、白身をうまく消化できていくと良いと思って研究している。使いながら回転が早まっていくと、魚の品揃えもパワーアップしていく」(大矢店長)

綿半魚類一宮漁港は鮮魚強化型の店舗として生まれ変わったため、あくまで「鮮魚」をベースとした商品開発が進むことになるが、それが結果として同店の大きな特徴、強みとなり、広がった商圏と共に差別化要素として作用していることは、今後のSM経営にとっても示唆を与えるものであるといえる。

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