特別寄稿 秋以降の原料高騰、コスト高対策 加工食品編 ①設計、仕様の変更、②代替材料への置き換え、そして③商談ベースでの交渉
2022.08.08
2022年上半期だけで延べ6000品目以上。7月は1500品目以上の値上げがされ、8月以降も7000品目以上の値上げが予定されるということである。
もちろんこれはメーカーから問屋あるいは小売りに対する価格が上がるということで、店頭での末端価格が即上がるということを意味するものではない。小売業のプライベートブランド(PB)商品でも仕入値は上がっているが、店頭価格は上がっていない商品も数多くあるだろう。過去の特売価格を維持している場面も多いだろう。

しかし、最近では過去に例を見ないような原料、コストの高騰が起きており、いずれ店頭価格にも反映せざるを得ない状況になることは明らかであろう。
そもそも、値上げが起こる原因は?
この原因となったのが、まずは原油価格の高騰である。財務省貿易統計によると21年5月の原油価格は1㎘当たり4万4881円であったのに対し、22年5月の速報価格は8万7603円と前年比+95.2%と大幅に上がっている。
原油価格の高騰の背景は大きく3つある。①世界的な脱炭素への動きの中化石燃料への投資が落ち込み絶対量が減少する方向に動いていた。②そんな中20年以降新型コロナウイルスショックから各国経済が立ち直り、原油需要も急増した。③ロシアのウクライナ侵攻により各国が経済制裁を行い、この反動でロシアからの供給が減退した。
こういった原因が複雑に重なり原油価格の高騰につながったといえる。このような高騰が起きると、まずは直接的にガソリン価格が上がり、物流費が大幅に上がる。
そして原油を原材料とするプラスチック素材の価格が上昇し、商品の容器や包装資材の価格が上昇する。そして電気やガスといったインフラの価格も上昇していくことになる。
次に日本だけを見ると対ドルでの大幅な「円安」ということが挙げられる。21年6月のドル価格は1ドル110.1円程度であった。これが22年6月では133.8円程度と急速に円安が進んでいる。
円安になるとドルで決済している輸入商品の価格は上昇する。単純に比較すれば21年6月に1ドルの商品を輸入するのに110.1円で済んでいたところが、22年6月には133.8円出さないと輸入できなということになる。
このような円安が進んだ原因として日米の金融政策の違いがある。アメリカはインフレ抑制と金融引き締めに動き、日本は大規模な金融緩和の継続という政策を採っており、この結果両者に金利差が発生している。アメリカでは段階的な利上げを行い、日本ではゼロ%程度の金利の継続がなされ、その差が3%にもなってきている。その結果、金利の高いドルは買われ、安い円は売られるという方向になる。
そして穀物価格の高騰が起きている。この問題は世界でのさまざまな動きが複雑に絡んだ結果であるが、一例を挙げると、先の原油価格が高騰するとアメリカで代替エネルギーとしてバイオエタノール需要が増え、トウモロコシの需要が増え価格が上がる。

また、中国などでの肉食が増え、飼料としての穀物需要が爆発的に伸びた、ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁に対抗してロシアからの小麦の輸入が止まった、などである。
いずれにしても穀物は元々世界的に微妙なバランスの中で価格が成立しており、これがわずかでも崩れると価格の騰落につながるのだ。穀物価格が高騰すると厄介なのが、牛、肉、鶏肉はじめ、乳、卵の生産コストに反映してしまうことである。これらが上がると原料として使用する全ての商品価格に影響を及ぼすのである。
いまからできる3つの対策
こういった中で対策として考えられるのは、まず、①設計や仕様の変更。
例えばソーセージなどで実施されたが、巾着袋をやめることによって包装資材を削減したとか、箱に入ったレトルトカレーであれば箱をなくすなどがこれに当たる。内容量を減らすという方法も各社で取られているが、「適量」ということをいま一度考えるときかもしれない。

まだまだ過去の常識で無駄な部分というものは存在する。これを究極まで追求するのだ。
続いて、②代替材料への置き換え。
確かに円安は進んでいるが対ユーロでは1ユーロ130円台で1年前と大きくは変わっていない。最近店頭で見たがスペイン産ニンニクが販売されていた。またウルグアイ産牛肉も専門店ができている。小麦粉が高ければ米粉を研究してみる。このように世界ではまだソーシングされていない商品が多くある。こういった商品を探り当てることが新たな需要を引き出すのだ。

最後に③商談ベースでの交渉。
最後の手段ではあるが、これは実はここまで書いてきたようなことを全て踏まえて行う必要がある。物流費が問題であれば小売自ら工場に取りに行くから幾らにしてほしいとか、販促費を削って原価に充てるとかさまざまな視点で見ていく必要がある。
そのため、この商談ベースというのは最も簡単に見えて一番難しいので勉強が必要である。今秋以降小麦の再値上げや配合飼料の価格値上げなどが予想されているが、これらに対応した動きが求められる。