【22年4月施行】プラスチック新法とは?概要や対象品目、罰則などを分かりやすく解説
2022.10.28
2022.03.10

昨今、マイバッグの持参や詰め替えボトルの利用など、プラスチックごみを減らす取り組みが活発化している。これらの取り組みに加え、プラスチックの資源循環を一層推進していくため、2022年4月1日に施行されるのが「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」だ。
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」は、略してプラスチック資源循環法や、プラスチック新法などと呼ばれている。
本記事では、プラスチック新法の内容や、試行される背景、罰則などを紹介していく。
目次
プラスチック新法とは?
政府が新たに施行を予定しているのが、プラスチック新法(プラスチック資源循環促進法)だ。正式名称は、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律。
プラスチック製品設計時の素材見直し、提供時の合理化、再資源化などを実施し、廃プラスチックの削減を目指す。
3R+Renewableを促進する
プラスチック新法では、3R+Renewableを促進するための措置を講じていく。廃棄物の発生を少なくするReduce、繰り返しの利用で廃棄物を減らすReuse、廃棄物を原材料・エネルギー源として再利用するRecycleの総称が3R。そこに、再生可能な資源に替えるRenewableを加えたのが、3R+Renewableだ。
事業者・自治体がプラスチック資源の循環を促し、消費者とも相互に連携しながら、環境問題の解決につなげていく。
プラスチック新法の施行日
プラスチック新法は、2021年3月9日に法案が閣議決定され、21年6月4日に参院本議会で可決。来たる22年4月に施行予定だ。
プラスチック新法に違反した際の罰則規定
主務大臣が必要と認めた際、後述する特定プラスチック使用製品の提供事業者、およびプラスチック排出事業者には、指導・助言が入る。
さらに、特定プラスチック使用製品12品目を前年度に計5t以上使用した特定プラスチック使用製品多量提供事業者、および前年度の排出量が計250t以上の多量排出事業者には、勧告・公表・命令措置が下ることもある。
命令にも違反すると、50万円以下の罰金が処せられるため注意したい。
プラスチック新法が施行される背景

プラスチック新法が施行される背景には、第一に環境問題が挙げられる。プラスチックは軽くて丈夫、さび、腐食に強い、着色しやすいなど性質面で多様なメリットがある。加えて、大量生産も容易であり、昨今の生活に欠かせない存在だ。
一方で、廃プラスチックに起因する環境問題が、世界的にも問題となっている。プラスチックを燃やす際、地球温暖化につながる温室効果ガスが発生する問題や、プラスチック製品が海に流され、海洋汚染、生態系に悪影響を及ぼす問題など、さまざまである。
さらに、諸外国の廃棄物輸入規制強化なども、プラスチック新法が施行される背景の1つ。中国をはじめとして、東南アジア、南西アジア諸国は廃プラスチックの輸入規制を実施しており、日本の輸出量も減少。
環境問題にとどまらず、廃棄物処理施設もひっ迫する中で、プラスチック資源の循環を促進し、地球規模・国内の深刻な問題の解決を進めていくことが本法の狙いだ。
プラスチック新法の内容

プラスチック新法は大きく分けて、「設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の3つのライフサイクルが存在し、事業者、自治体、消費者それぞれが3R+Renewableを目指して対応を求められる。ここでは、プラスチック新法の詳細内容を見ていこう。
設計・製造
プラスチック使用製品設計指針と認定制度
設計・製造に関するプラスチックのライフサイクルにおいては、廃プラスチックの排出抑制、および再資源化に資する包括的な環境配慮設計が求められる。本制度では、プラスチック製品の製造事業者が取り組むべき下記事項が定められている。
- プラスチック製品・素材の減量化
- 包装の簡素化
- 長期使用化・長寿命化
- 再使用が容易な部品の使用・部品の再使用
- 単一素材化
- 分解・分別の容易化
- 収集・運搬の容易化
- 破砕・焼却の容易化
根本的に、プラスチック素材、製品の利用を減らす取り組みから、再使用して廃プラスチックを削減する取り組みまでさまざま。
また、プラスチック素材を削減するため、下記対策も設計指針に盛り込まれている。
- プラスチック以外の素材への代替
- 再生利用が容易な材料の使用
- 再生プラスチックの利用
- バイオプラスチックの利用
プラスチック製品の設計から廃棄に至るまで、一貫して環境に配慮することが製造事業者にとって必要になっている。
なお、プラスチック使用製品設計指針に則した、認定プラスチック使用製品の製造、利用を促進するため、特に優れた設計を主務大臣が認定する制度も創設されている。認定を受けた設計の下、製造された認定プラスチック使用製品は、国からグリーン購入法上の配慮やリサイクル設備の支援を受けられる。
販売・提供
特定プラスチック使用製品の使用の合理化
特定プラスチック使用製品を提供する事業者に対し、使用を合理化することで、廃プラスチックの排出抑制を目指す。12種の特定プラスチック製品が定められており、対象製品ごとに、業種も下記の通り指定されている。
業種 | 店舗・施設例 | プラスチック製品 |
各種商品小売業、飲食料品小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業 | 百貨店、コンビニ、スーパー、飲食店など | フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー |
宿泊業 | ホテル・旅館など | ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ |
各種商品小売業、洗濯業 | クリーニング店など | ハンガー、衣類用カバー |
特定プラスチック製品を削減するためには、消費者の協力を得ることも重要。例えば、下記のように提供方法を工夫することで、廃プラスチックの排出抑制を期待できる。
- 無償提供していたプラスチック製品を有償で提供する
- 無償提供していたプラスチック製品が必要であるか、意思確認を実施
- ポイント還元などを実施し、プラスチック製品を使用しないよう誘引
先行事例としては、飲食店、コンビニなどで木製スプーンや紙ストローを提供する、クリーニング後の衣類に使用されるハンガーを回収し、再利用するなどが挙げられる。消費者はもちろん、従業員に対して研修の実施、協力の理解を得ることも重要といえるだろう。
なお、主務大臣により必要があると認められた時は、特定プラスチック使用製品提供事業者に指導、助言が行われる。加えて、特定プラスチック使用製品多量提供事業者に対しては、取り組みが著しく不十分と判断されると、勧告、公表、命令などを行うことがある。
排出・回収・リサイクル
排出事業者の排出抑制、再資源化(排出)
小規模企業者を除き、事務所、工場、店舗などで事業を行う排出事業者に対して、プラスチックの排出抑制、再資源化を実施可能とする制度。
排出事業者は、プラスチック使用製品産業廃棄物を適切に処理する責任を有するが、さらなる資源循環を促進すべく本制度は制定された。
排出を抑制するための取り組みとしては、大きく分けて下記3種類が存在する。
取り組み | 具体例 |
製造・加工・修理時 | 原材料の使用を合理化端材の発生抑制端材・試作品を原材料として利用 |
包装時 | 簡易包装プラスチックの代替素材の活用 |
事業活動時 | 長期間の利用過剰な使用を抑制部品・原材料の種類を工夫した製品利用 |
一方、プラスチックの再資源化に関して、排出事業者が取り組むべき施策としては、下記の通り。
- リチウムイオン蓄電池など、再資源化を阻害するものの混入防止
- 再資源化を実施できない場合においても、熱回収は実施
- 熱回収時は、効率性の高い熱回収を実施する
- 生活環境の保全上に支障が生じない措置を講ずる
一般廃棄物および産業廃棄物の収集、運搬、処分を業とする者には、市町村長や都道府県知事の許可が必要となる。
しかし、排出事業者は再資源化事業計画を作成し、国からの認定を受ければ、廃棄物処理法に基づく業の許可を受けていない場合でも、再資源化事業を行える。
なお、主務大臣が必要と認めた時は、排出事業者に指導、助言を実施。多量排出事業者に対しては、勧告、公表、命令を行うことがある。
製造・販売事業者等による自主回収(回収)
プラスチック使用製品を製造、販売、提供する事業者が、自主回収、再資源化を実施可能とする制度。
製造、販売事業者が自主回収、再資源化事業計画を作成し、国から認定を受ければ、廃棄物処理法に基づく業の許可を受けていない場合でも、使用済みプラスチック使用製品の自主回収、再資源化が可能となる。
自主回収の先行事例としては、LOFTの化粧品容器回収、マクドナルドのおもちゃ回収、セブン-イレブンのペットボトル回収、ライオンの歯ブラシ回収などが挙げられる。回収拠点を増やし、消費者が協力しやすい環境を構築していくことが狙いだ。
市区町村の分別収集、再商品化(リサイクル)
市区町村が分別収集したプラスチック使用製品廃棄物を、再商品化できる制度。
従来、プラスチック容器包装廃棄物は分別収集・再商品化されていたが、同じプラスチック素材のプラスチック容器包装廃棄物以外に関しては、燃えるごみなどで処理されていた。本制度では、分別ルールを一層明確化し、プラスチック資源回収量の拡大を目標とする。
しかし、市区町村はプラスチック使用製品廃棄物の分別ルールを定め、市民に周知しなければならない。そこで、市区町村は分別収集したプラスチック使用製品廃棄物を、2つの方法で再商品化することが、本制度で可能となる。
1つ目が、容器包装リサイクル法に規定する指定法人に委託し、再商品化する方法。委託する際は、最大積載量1万kgの自動車に積載可能な容量の相当物を収集していること、圧縮していることなど、基準が設けられているため注意が必要。
2つ目が、市区町村が単独もしくは共同で再商品化計画を作成し、国から認定を受けて再商品化する方法。計画に基づき、事業者と再商品化を行えるが、「分別収集物に含めてはいけないもの」などの指定もあるため、事前のチェックは不可欠。
ここまで3つのライフサイクルに分け、プラスチック新法を紹介したが、いずれも事業者、自治体、消費者が一体となり、プラスチックの削減、再使用に取り組むことが大切だ。
プラスチック新法のまとめ
プラスチックは汎用性が非常に高く、便利である反面、海洋プラスチック問題など課題は山積みである。脱プラスチックを実現するのは不可能と言えるが、プラスチック新法の試行により、環境問題解決の足掛かりにはなり得る。