ダークストアとは?日本国内の取り組み事例を交えて分かりやすく解説

2022.10.27

2022.01.13

コロナ禍による外出自粛の影響もあり、ネット販売の需要は年々高くなっている。

そのような中、昨今においては、ネット販売される商品の配送拠点である「ダークストア」が大きな注目を集めている。

海外で普及を見せているダークストアだが、国内でもダークストアを設ける事業者は増加していくと考えられる。

本稿では、ダークストアの概要や特徴について詳しく解説するとともに、国内でダークストア事業を開始した企業の事例を紹介する。

ダークストアとは?

そもそもダークストアとは、一体どのようなものなのか。ダークストアの概要や特徴について、詳しく解説する。

ダークストアの概要

ダークストアとは、ネット販売された商品の配送拠点としての機能を持つ店舗のことである。店舗内は、実際のスーパーマーケットと同じように商品の陳列がされているが、消費者が実際にそこへ足を運ぶことはないことから「ダークストア」と呼ばれている。

ダークストアの特徴

ダークストアの特徴の一つとして、既存店舗を有効活用できる点が挙げられる。IT技術の進化や、新型コロナウイルスの影響により、ネット販売の需要は年々高くなっている。そうした需要の変化に伴い、閉店を余儀なくされる店舗は少なくない。

閉店を余儀なくされた店舗をどう活用するのか、経営者にとって大きな課題となっている。

そこで期待されるのが、既存店舗をダークストアへと転換することだ。

閉店された店舗には、販売する商品や在庫を抱えるためのスペースなどがすでに確保されているため、コストを抑え、迅速にサービスを開始できる。

しかしその一方で、専用倉庫と比較するとスペースは限られるため、取り扱い可能な商品数には限りがありターゲットにできる商圏は考慮する必要がある。

事業規模を拡大する際に、既存店舗をそのまま活用するのか、はたまた専用倉庫を確保するのか、経営者の判断が重要となるだろう。

日本国内におけるダークストアの事例

ここからは、わが国のダークストア事業への取り組み事例として、以下3つの事例を紹介する。

  1. 1.Uber Eats
  2. 2.OniGO
  3. 3.Wolt Market

1.Uber Eats

米ウーバーテクノロジーズの日本法人ウーバージャパンは、2つの観点からダークストアの展開に着手している。それぞれの具体的な参入内容は、以下の通りである。

永和物産株式会社との連携

ウーバージャパンは、2021年1月、ホテルやレストランなどに食材の販売を行っている「永和物産株式会社(永和物産)」と提携し、同社が扱う食材の宅配サービスを開始した。

この取り組みにより、Uber Eatsの利用者は、海外原産の果物や調味料などといった、プロ向けの食材を気軽に購入することが可能となる。

永和物産との取り組みは、Uber Eatsの国内では初となるダークストアを展開して、多様化する消費者のニーズに応えるのが狙いだ。

一方、永和物産にとっても、新型コロナウイルスの影響により、収益の獲得が厳しくなっている中、新たな収益先の獲得が期待される。

ウーバージャパンは今後も、他の食材卸事業者と連携し、サービス提供地域を拡大する方針だ。

宅配専門店の開設

ウーバージャパンは、21年12月、オンライン注文専用の店舗「ウーバーイーツマーケット日本橋兜町店」を新たにオープンした。

店舗面積は、一般的なコンビニよりやや大きい約170㎡。午前7時から翌0時まで営業する。

自社で用意した食品や日用品に加え、生鮮食品、衛生用品なども取り扱っており、その数は1100点以上に及ぶ。

最低注文料金は設けられておらず、利用者は1品から注文することが可能。料理宅配と同じく、配送距離に応じて配達料が決まる仕組みだ。

今後は酒類の販売も行う方針で、競争が激化している料理宅配市場において、料理以外の新たな需要獲得を図っている。

2.OniGO(オニゴー)

OniGOとSHAREDINEの提携

OniGO株式会社は、21年8月、東京・目黒に宅配スーパーマーケット「OniGO(オニゴー)」をオープンしている。

OniGOは、生鮮品や日配品、冷凍食品など幅広い商品を取り扱っており、注文からわずか10分で届けるスピートが最大の売りである。

注文可能距離を店舗から半径1〜2km以内に絞り、配達員を店舗に常駐させることにより、10分というスピードを実現させている。

オープンから4カ月後の12月には、出張シェフサービス「シェアダイン」を運営する株式会社シェアダインとのサービス連携を開始した。シェアダインは、栄養士からレストランのシェフまで、約1800名登録する国内最大級の出張サービスである。

新型コロナウイルスによる外出自粛が続く中、出張シェフサービスの需要は拡大している。

しかし、OniGOとサービス連携を開始する前までは、利用者もしくはシェフが食材や調味料を調達する必要があり、そこが大きな負担となっていた。

そこで、OniGOとのサービス連携を開始した。

食材や調味料を調達する負担が軽減されることは言うまでもなく、調理を開始した後でも、食材や調味料を調達することが可能となった。

ダークストアと出張シェフサービスのサービス連携が今後、われわれの食生活に与える影響にも注目したい。

参考:出張シェフ「シェアダイン」 x 10分で届く宅配スーパー「OniGO」サービス連携開始

3.Wolt Market(ウォルトマーケット)

デリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」を運営するWolt Japan株式会社の関連会社、Wolt Market Japan株式会社は、21年12月、北海道、札幌市内2拠点に配達専用スーパーマーケット「Wolt Market(ウォルトマーケット)」をオープンしている。

オープン前には、パナソニック産機システムズ株式会社から、冷凍、冷蔵設備一式が納入されたことでも注目を集めた。

Wolt Marketは、食料品や日用品など全2000品目以上の商品を取り扱っており、注文を受けてから30分程度で配達するという。

「Wolt」のアプリやウェブサイト、配達ネットワークを活用することで、30分程度でのスピード配達を実現する仕組みだ。

また、低価格での販売を実現させるために、メーカーから直接仕入れ、コストを削減するとともに、独自のアルゴリズムによるデータ活用も行っている。

Wolt Market Japanは、将来的に「Walt Market」の全国展開を目指しており、更なる事業拡大を進めていくという。

参考:おもてなしデリバリー「Wolt (ウォルト)」ほしいが見つかる!配達専用スーパー「Wolt Market」を12月2日(木)札幌に2拠点同時開設

3.ヨーク

ヨークはダークストア専業スタートアップのOniGOと協業し、3月18日からヨークが運営するコンフォートマーケット西馬込店(東京・大田)でクイック宅配サービス事業の実証実験をスタートした。

同店の商品の一部、約2000種類を周囲約1.5km程度の商圏のお客に注文から最短10分で届けるサービスで、配送エリアは実証実験の結果を受けて検証していく。

ヨークが得意とする生鮮、惣菜を中心とした商品力とOniGOの商品配送力を相互補完的に組み合わせることによって「幅広い品揃えで素早く便利な宅配サービス事業」の確立を目指す。

役割分担としては、ヨーク側はリアル店舗における商品提供、店舗在庫の管理、商品情報の提供、OniGO側はアプリを通じて注文を受けた商品のピッキングと配送を担う。

ダークストア のまとめ

今回は「ダークストア」について、その概要や特徴、国内におけるダークストアの取り組み事例について紹介してきた。

現状、わが国では一部の地域、事業者に限られているが、今後はより多くの地域、事業者でダークストアの導入が進んでいくだろう。

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