ポップアップストアとは?出店の目的やメリット等を出店事例と併せて解説

2022.10.05

2022.03.25

店舗PRや売上向上、顧客との信頼関係構築などを目的として、小売業を中心に運営されているポップアップストア。昨今のコロナ禍においては、常設店に代わる店舗形態としても注目が集まっている。

本記事では、ポップアップストアの概要とメリットをまとめた後、実際の事例を紹介していく。

ポップアップストアとは?

ポップアップストアとは、期間限定で営業されるショップを言い、ポップアップショップと呼ばれることもある。「突然現れる」という意味を持つ、「ポップアップ(pop up)」に由来しており、一般的にショップの開設期間は数日~数週間程度となっている。

ショップの展開スペースとしては、空き店舗・レンタルスペース・商業施設・移動販売車などを利用。常設店を設置しないのが大きな特徴だ。

また、単に商品や作品を陳列するのではなく、顧客との直接的なコミュニケーションも生まれやすいイベント性が重視される傾向にある。企業の特色が顕著に表れるポップアップストアは、売上の向上はもちろん、認知度拡大や話題性・ブランド価値の創出にも繋がるマーケティング形態として、導入する事業者も増加中だ。

ポップアップストアのメリットとは?

ポップアップストアには、通常の店舗にはない特有のメリットも存在する。ここでは、ポップアップストアをマーケティング戦略に取り入れるメリットを解説していく。

顧客と直接コミュニケーションを取れる

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、苦戦を強いられる業界は非常に多い。巣ごもり需要など、消費者の生活様式は変化しているが、それにあわせてEC市場に参入する企業も増加してきた。

しかし、ECサイト運営は対面の接客ができず、密にコミュニケーションを取れないデメリットが存在する。一方で、ポップアップストアでは顧客と直接コミュニケーションを取れるため、商品・サービスをアプローチできるのはもちろん、信頼関係の構築にも繋がりやすいと言える。

期間限定出店で希少価値を与えられる

短期間で出店されるポップアップストアでは、時間の限定性を利用し、消費者に希少価値を与えることができる。希少性のある商品やサービスは、価値が高く感じられ、購買意欲を搔き立てやすいと言われている。

これは「希少性の原理」に基づくもので、実際にマーケティング戦略として取り入れる企業も多い。ポップアップストアの出店開始日・終了日を明確に提示し、消費者に危機感を与え、購買行動などに繋げたい。

出店エリア・期間を柔軟に決められる

コロナ禍における緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響により、時短営業を余儀なくされる店舗は少なくない。しかし、時短営業に関わらず発生する賃料などの固定費に、頭を悩ませる店舗も多く、常設店開業のハードルは高いと言える。

その点、ポップアップストアは短期間だけ開設するという特性から、さまざまなエリアに出店できるメリットがある。自店のコンセプトに沿ったターゲット層の多いエリアや、競合店の状況なども加味した上で、柔軟にエリアを選択可能。都心部への人流が鈍化する昨今において、仮にエリア選定に失敗した場合でも、期間限定であるためリスクを抑えられる。

出店エリアに限らず、期間を柔軟に決められるのも大きなメリット。平日はオフィス街、休日はファミリー層の多いエリアへ出店するなど、常設店では実施困難な戦略も企画可能。

Withコロナ時代において、ポップアップストアは新たな販売チャネルとしても効果的と言えるだろう。

認知度の拡大を図れる

ポップアップストアを開設する目的は、認知度拡大といったPR活動も1つとして挙げられる。先述の通り、ポップアップストアは柔軟に出店エリアを決められるため、人通りの多い場所にオープンすれば、潜在顧客に自社サービスをアプローチできる。

さらに、話題性を創出できるのも、ポップアップストアの特徴。期間限定出店やイベント性といった話題になりやすい要素が多く、来店がなくてもSNSでの拡散など、認知度拡大に繋がるケースもある。ポップアップストアを出店する際は、SNS・チラシ配布などのPR活動も並行したい。

ポップアップストアの事例

ポップアップストアのマーケティング形態を実際に利用し、成果に繋げている企業は数多く存在する。次に、ポップアップストアの事例を見ていこう。

VR上で販売された「ファイナルファンタジーXIVコラボ商品」

伊勢丹新宿店は、2021年12月8日~14日の期間限定で、大人気RPG「ファイナルファンタジーXIV」とさまざまなブランドとのコラボ商品を、ポップアップストアで販売した。ゲームに登場するデザインを再現した商品から、ブランドエッセンスを取り込んだオリジナル商品まで、多様なアイテムが展開された。

実店舗の出店期間は1週間だったが、三越伊勢丹が提供するVRアプリ「REV WORLDS」上でも、2021年12月14日~2022年2月末にかけてバーチャルでポップアップストアを出店。VR上でコラボ商品が3D化されているため、実店舗と同様に商品を見て確認でき、気に入ったものがあれば、そのままオンラインストアへ遷移して購入可能となっている。

オフラインが主たるポップアップストアであるが、期間内は24時間365日バーチャルショッピングを楽しむことができる。ポップアップストアをオンライン上でも実現した、好例と言えるだろう。

店舗内の仕掛けを楽しめる「レノボ Yoga」

コンピュータメーカーのレノボは、新宿マルイ本館1階の「b8ta Tokyo – Shinjuku Marui」に、ポップアップストアを開設した。レノボのYogaシリーズを体現しているのが、本ポップアップストアのコンセプト。

実際にパソコンが設置されており、Yogaの軽さ・手触り・最先端機能などを体験できる。さらに、見る角度によって色が変わる仕掛けを施した壁面や、ビジュアルが変化する3D BOXのトリックアートを再現。フォトスポットとしても楽しめ、来店者の滞在時間を延ばすことにも繋がるだろう。

有名人を起用して話題性を創出した「バーバリー」

人気ファッションブランドのバーバリーは、「六本木ヒルズO-YANE PLAZA」にて、ポップアップストア「THE IMAGINED LANDSCAPES POP-UP」を開設した。期間は2021年11月3日~16日の約2週間で、ブランドのアイコニックなアウターウェアにフィーチャーし、展開された。

会場内には、さまざまな仕掛けが施されているのも特徴。イギリスのカントリーサイドで撮影されたランドスケープを背景として、地形をイメージしたミラー棚を設置し、自然と深い繋がりをもった未来的なスペースが広がっている。

また、デジタルとフィジカルが交錯する要素を、展示会に取り込んだ。会場内のスクリーンに囲まれたルームでは、キャンペーンムービーの世界を体験しているような没入感を味わえる。

さらに、開設の前日には、各界の有名人がオープンを祝うため来場した。多彩なゲストがバーバリーのアウターウェアを纏い、ポップアップストアをPR。話題性を創出し、見込み顧客の獲得に繋げた。

カフェにイベント性を取り入れた「星のカービィ」

任天堂が発売する人気ゲーム「星のカービィ」をテーマにした「Kirby Café(カービィカフェ)」が、2022年3月17日~5月15日の期間、東京と博多で開設される。「もしもカービィの世界にカフェがあったら…」というコンセプトを設定し、キャラクターが来店者のお腹と元気をいっぱいにしてくれる。

メニューとしては、春をイメージしたパスタやタルト、ドリンクなどを用意。星のカービィの世界観に没頭しつつ、春の季節を感じられるカフェだ。

また、「カービィカフェ TOKYO」のある東京ソラマチ4階では、カービィカフェ限定品をはじめとして、星のカービィグッズを取り揃える「Kirby Café THE STORE(カービィカフェ ザ・ストア)」も営業。長年親しまれている任天堂の人気ゲームだが、ポップアップストアでさらなる話題性を創出する。

人通りの多い駅構内で認知度の拡大を図った「イケア」

家具量販店のイケアは、2021年8月8日~8月14日にかけて、JR大宮駅西口イベントスペースにポップアップストアをオープンした。JR大宮駅は、人口の多い関東近郊からのアクセスが良く、多様な路線が乗り入れるターミナル駅。

利用者数の多い駅構内にポップアップストアを開設することで、イケアをさまざまな人に知ってもらいつつ、コロナ禍におけるおうち時間のアイデアや、サステナブルに暮らすヒントを提案した。

ポップアップストアでは、SNSで話題のグッズや便利雑貨、イケアの味を自宅で楽しめるホットドッグセットなど、人気商品を100点以上展開。さらに、来場者特典として、対象のイケア店舗で利用できる割引クーポンも提供し、新規顧客の獲得、リピーターの創出に繋げた。

ポップアップスペースの提供を開始した「博多マルイ」

博多マルイは、オンラインとオフラインを繋ぎ、新しい発見・体験を提供するポップアップスペース「concept shops(コンセプトショップス)」を、2022年3月18日にオープンした。約2坪のスペースを最大11区画展開でき、カスタマイズ可能な什器を標準装備している。

売場運営や接客のノウハウを有する社員が常駐しているのも、本サービスの魅力的なポイント。製品デモ・ECサイトへの誘因・SNSフォロワーの獲得といった事業者のニーズに合わせ、ポップアップストアの展開をサポート。

また、食・コスメ・アパレル・雑貨などの物販だけでなく、PR活動・イベント開催といった幅広いカテゴリーに対応する。リソースやノウハウがないD2Cブランド・中小規模の事業者であっても、比較的始めやすいサービスだ。

さらに、消費者目線では、短期間で開設されるポップアップストアの特性から、訪れる度にショップが入れ替わり、新しい体験ができる。スモールプレイヤーの事業者に、オンラインとオフラインを繋ぐきっかけを与えつつ、博多マルイの集客も図れる試みと言えるだろう。

ポップアップストアのまとめ

消費者ニーズの多様化を受け、昨今ではEC市場が顕著に伸長しているが、ポップアップストアの注目度も一層高まっている。常設店を持たず、情勢を踏まえて臨機応変に出店できる特性は、コロナ禍において非常に有効と言える。

実際、EC市場拡大の裏では、新たな販路としてポップアップストアの準備を始めている事業者も多い。低リスクで出店可能なポップアップストアを、認知度拡大・商品プロモーションなどに役立ててみてほしい。

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