サステナビリティとは?企業経営における意味や、取り組み事例など紹介
2022.10.05
2022.03.31

サステナビリティという言葉を耳にする機会が増えている。企業のホームページを見ても、サステナビリティの取り組みが紹介されているのを目にすることがあるだろう。
サステナビリティは、企業にとってメリットがあるだけではなく社会全体に長期にわたって影響を与えるものだ。ビジネスにおけるサステナビリティについて解説する。
目次
サスティナビリティとは
サステナビリティ(sustainability)は、「持続可能性」という意味である。目の前にあるメリットや利益を追い求めるのではなく、全体のバランスを取りながら自然環境や社会のシステムを構築、維持しようという考え方を指す。
多くの人が理解しやすく、また共感できるのが環境面でのサステナビリティではないだろうか。
人間だけに住みやすい環境を作るのではなく、森林の伐採、海水汚染、温室効果ガスなどを減らし、ほかの生物との共存できる環境は、まさにサスティナビリティの最たるものである。自然災害が増え、地球温暖化が加速している今、地球にあるもの全体を保護し持続可能な社会を目指す動きは各国で高まっている。
サステナビリティは、もともとは水産業界で使われていた言葉で、水産の資源を減らさず漁獲量を持続するという意味があった。現在ではこのサステナビリティの考えは、企業の経営にも取り入れられるようになっている。
企業におけるサスティナビリティの意味
サステナビリティは、自然環境だけでなく企業にも当てはまる。多くの企業がこのサステナビリティを意識した事業活動を行っている。コーポレート・サステナビリティとも呼ばれるが、自社の利益のためだけではなく事業活動が環境や経済、地域社会に与える影響を考え、長期的に運営できる取り組みを行うことをいう。
企業のサステナビリティの取り組みは、それぞれの業態やサービス、取り扱う商品などによって異なるが、大企業だけでなく中小企業にも広く浸透している考え方である。
社会的影響を考える
企業が事業活動を行ううえでエネルギーの消費や産出など、環境の問題に深く関わることは多くある。
たとえば、最新技術や機械を用いて製造過程におけるCo2排出を減らす取り組みを行えば、エネルギー利用は自社の事業活動に必要なことではあるが、社会的影響を考えてサステナビリティな仕組み作りに取り組んでいるといえるだろう。
また、事業活動とは関係ない面でも社会的影響を考えてサステナブルな取り組みを行うやり方もある。事業活動で得た利益の一部を地域や自然保護活動に寄付する活動を行う企業も少なくない。
長期的に安定した事業活動を行う
長期的に安定した事業活動を行うための取り組みも、サステナビリティといえるだろう。たとえば、女性やシニアを積極的に採用することは、社会や経済への貢献の意味もあるが、自社の人材確保にもつながる。
また、原材料をコストの安い国から仕入れている場合、単に安い価格で利益が高く出せるという理由だけでなく、フェアトレードのように適正な料金を支払って取り引きを行えば、長期的に安定した事業活動ができるベースとなる。
サスティナビリティは対外的なイメージアップのためだけではない。短期的な利益だけを追うビジネスは、長い目で見ると逆に利益を損ねるばかりか、事業活動が成功しないと多くの企業や経営者がすでに理解していて、サステナビリティは一般的な取り組みとなっているといえるだろう。
サスティナビリティな経営を行うメリット
サステナビリティ経営を行う企業は増えているが、企業がサステナビリティな経営を行うメリットはいろいろある。
コスト削減
サステナビリティ経営をすることでコストを削減できる。
先ほどのフェアトレードの場合、目先のコスト削減ばかりを考えて賃金の安い第3国で生産や仕入れを行うと、商品のクオリティが下がる可能性がある。ひいては顧客からのクレームや客離れにつながることもあるだろう。
フェアトレードを取り入れれば、現地の仕入れ価格や現地スタッフに払う賃金などが多少高くなっても、確かな品質の商品や材料を仕入れられて、現地の雇用の維持もできる。生産効率やブランドの価値があがり、結果的にコスト削減につながることも少なくない。
社会的な立場の向上
サステナビリティな取り組みを行うことで、企業イメージが上がり企業価値も上昇する。事業活動の中で環境や社会に配慮した活動を行えば、社会貢献する企業であると、顧客やリード(潜在顧客)にアピールできる。
さらには、同業者や他業種の企業からもサスティナブルな企業であると認識されるので、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も広がる。
社員の満足度
サステナビリティ経営は、社外との関係を良好にするだけでなく、自社で働く従業員にとってもいい影響を与える。
たとえば、サステナブルな取り組みの一環として職場環境の改善を行えば、従業員が働きやすくなるので仕事に対するモチベーションが上がる。女性だけではなく男性も産休や育休をとりやすくしたり、リモートワークをベースにしたりするのもいいだろう。
従業員は、サステナビリティ経営をする企業の一員であるという認識が芽生えるので、会社の利益のために責任感を持って働くようになる。社員の満足度が高まれば、離職率が下がり優秀な人材の確保ができる。結果的に企業のメリットへとつながる。
新しい事業分野の展開
サステナビリティ経営を行うと、企業成長につながる。企業がサステナビリティ経営に率先して取り組むと、現代の問題点ややるべきことが明確になってくる。時代のニーズや変化を捉えやすくなり、それに対応するため企業も柔軟性が高まる。
環境、経済、社会問題などに取り組むうちに、新たな分野のサービスや商品に気付いたり、ビジネスチャンスが見えてきたりすることもある。サステナビリティが、ソーシャルビジネスの領域だけでなく、新たな未経験の分野に事業展開するなど企業が成長できるきっかけとなる。
サステナビリティとCSRの違い
サステナビリティとCSRの違いについて解説する。CSRはcorporate social responsibilityの略で、企業の社会的責任の意味である。従業員や取引先、投資家、顧客など企業が事業活動を行ううえで関わる、すべての関係者に対する責任を指す。
サステナビリティに似ているが、サステナビリティが環境や自治体、経済、個人など幅広いものに対する責任であるのに対し、CSRは自社と利害関係のある人に限定されている責任のことをいう。
顧客への安全な商品の提供や、従業員が健康的で働きやすい職場環境を整備することなどはCSRである。また法令遵守、内外への説明責任などもCSRになる。
企業のサスティナビリティの取り組み事例
日本の企業が実際に行っているサステナブルな取り組みを紹介していこう。
海外企業でのサステナビリティと日本の企業のサステナビリティには、少し違いがある。海外でのサステナビリティは、事業活動イコール社会や環境と統合して考えて、長期的に価値を高めていくものと捉えられていることが多い。温室効果ガスの排出を抑えるカーボンニュートラルや脱炭素などの議論は、すでに幅広い分野で行われている。
またサステナブル・ラベルも広く普及している。サステナブル・ラベルとは、環境に配した商品に付与される国際認証のラベルである。サステナビリティに関心が高く、力を入れている国では、サステナブル・ラベルのない商品を店頭で取り扱わないところもある。アメリカやヨーロッパ、特に北欧などは、サスティナビリティの意識が高いといわれている。
日本でのサステナビリティは、環境配慮、社会貢献などを行うことで企業価値を高めることを意識している企業が多い。社会的な環境問題の議論もされてはいるが、他国と比べると遅れているといえるだろう。サステナブル・ラベルに関しても認知度が低く、社会全体のサステナブルの意識もまだ十分ではないため、普及には至っていない。
ファーストリテイリング
日本だけでなく海外でも人気の高いユニクロを展開するファーストリテイリングは、地球(Planet)、人(People)・ソサイエティ(Society)の3つを中心にしたサステナビリティ活動を行っている。
具体的には、環境への負荷をなるべく少なくした服作りを行っている。原材料の調達、デザイン、縫製、そして商品の生産に至るまで、すべての工程で社会、環境への配慮を欠かさないようにし、持続可能な商品とライフスタイルの提案を行っている。
またユニクロでは、着なくなったユニクロ商品をリサイクルのために無料で引き取るサービスもある。これもサステナビリティな取り組みの一つだろう。
参考:服のチカラを、社会のチカラに。UNIQLO Sustainability
トヨタ自動車
日本の大手自動車メーカーのトヨタ自動車は、ライフサイクルや新車、工場のCO2排出量ゼロ、予備電源になる自動車の開発などさまざまなサステナビリティの取り組みを行っている。2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表。2050年までに達成する長期的な数々の目標を設定している。
「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」というビジョンと、「幸せを量産する」というミッションを掲げ、トップ自動車メーカーとしてサステナビリティ経営を率先して実践している。
参考:6つのチャレンジ
ユニリーバ
ヘアケア商品や洗剤などを製造、販売するユニリーバは、2010年からサスティナビリティな取り組みを行っている。「サステナビリティを暮らしのあたりまえに」がスローガンで、環境、経済発展、健やかな暮らしの3つを柱に、温室効果ガスの削減や衛生的な習慣への支援などを行っている。また、小規模業者とも積極的に取引し、事業活動を展開している。
参考:地球と社会
エーザイ
大手製薬会社のエーザイでは、EWAY 2025という中期経営計画を策定。さまざまな問題を段階的に解決できるようサステナビリティの取り組みを行っている。スローガンは、「必要な医薬品を必要とする人々に届ける」で、2040年までに、排出するCO2と吸収するCO2を同じにするカーボンニュートラルの実現を宣言している。
サステナビリティのまとめ
サステナビリティな取り組みを行う企業は、日本でも数多くある。それぞれ企業の事業内容や特徴などを踏まえて、中長期的な目標を掲げ、可能な限り持続可能な社会を実現するためにさまざまな取り組みを行っている。
このような取り組みは、企業価値、ブランド力を上げるだけでなく、地球、社会全体、そして従業員や関係者に対しても責任を果たそうとするためであることがわかるだろう。
国連で示された基本理念SDGは、今後企業がリスクを回避して正しく成長するための新しい基盤であり目標である。目の前の利益だけを追う事業活動は、長くは続かない。サステナビリティについてもう一度考え、できるところから企業努力をしていくべきだろう。