クイックコマースとは? 拡大する背景や企業の取り組み事例などを紹介
2022.10.28
2022.02.16

新型コロナウイルスの蔓延を背景にデリバリーニーズが高まる中で、企業の参入が続くクイックコマース。2022年1月にヤフーなどを傘下にもつZホールディングスが本格的な参入を発表して注目を集めた。
本記事では、クイックマースとは何か、その概要から急速に広がる背景にある理由や、実際の企業の取り組み事例などを紹介していく。
目次
クイックコマースとは?
クイックコマースは、その頭文字からQコマースとも呼ばれ、注文からおよそ30程度で商品を配送する即配サービス。
注文は基本的にオンラインにて行われ、ダークストアと呼ばれる配達専用の無人店舗や、自店舗、提携店舗などから商品の発送が行われる。商品の配送は、専属の配達員や、フリーランスや個人事業主として配送を請け負うギグワーカーによって行なわれる。
通常のECやネットスーパーなどと比較して注文から配送までの時間が短い点が特徴。新型コロナウイルスの蔓延によって不要不急の外出を控えるように生活習慣が変容したことを背景に拡大を続けている。
日本では、Zホールディングスが、2022年1月26日に、傘下のヤフー、アスクル、出前館と共同で、ダークストアを活用し食料品や日用品などを配送する「Yahoo!マート by ASKUL」を展開を発表して、クイックコマース事業への本格参入を行っている。
それより以前には、2021年8月に目黒区にてサービスを開始した、注文から10分で届く宅配専門スーパー「OniGO(オニゴー)」などがダークストアを活用したクイックコマース事業を展開している。
一方で、ドイツの料理宅配グループ「デリバリーヒーロー」が展開するフードデリバリーサービス「foodpanda」が、2022年1月末に日本市場から撤退するなど、配達員の確保などを含めて企業間の競争は激化している。
下記は、2022年2月時点で、日本国内で展開されている主なクイックコマースサービス。
サービス名 | 運営会社 | 本社 | サービス開始時時期 | 配送までの最短時間 |
Yahoo!マート by ASKUL | アスクル株式会社 | 日本 | 2022年1月 | 約15分 |
OniGo | OniGO 株式会社 | 日本 | 2021年8月 | 約10分 |
Wolt Market | Wolt Japan株式会社 | フィンランド | 2021年12月 | 約30分 |
Coupang | Coupang Japan合同会社 | 韓国 | 2021年6月 (テスト運用開始) | 約10分 |
クイックコマースが拡大する理由とは?

以下では、クイックコマースが拡大する背景にある理由を簡単に紹介していく。
巣篭もり消費の増加
クイックコマースの市場が拡大した背景には、新型コロナウイルスの蔓延による生活習慣やニーズの変化がある。
感染症対策のため生活者は不要不急の外出を控えるようになり、買い物も実店舗に来店せず、EC(電子商取引)やネットスーパーなどで済ませる巣ごもり消費の機会が増えた。
経済産業省が発表した「令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)」によれば、巣ごもり消費が日本の物販系分野の BtoC-EC 市場規模を少なくとも約 1.2 兆円底上げしたとしている。
巣篭もり消費の増加が、EC需要を底上げし、それに伴いクイックコマースの需要も拡大していったと考えられる。
クイックコマースの利便性の高さ
クイックコマースが拡がる背景にはその利便性の高さもあるだろう。注文から配送まで30分程度で届くのであれば、実店舗に赴くよりも簡単に買い物を済ませることができる。
Amazonで展開されるライフのネットスーパーは最短2時間で生鮮食品を配達してくれるが、地域など条件次第ではあるが、宅配専門スーパー「OniGo(オニゴー)」では10分程度の配送、2022年2月14日出前館に出店した「カクヤス EXPRESS」では最短15分で商品を届けてくれる。
一概に配達時間の早さで決まるわけではなく、品揃えの豊富さや質なども重要ではあるが、従来よりも短時間で商品配送ができるのはクイックコマースの明確な強みといえるだろう。
クイックコマースに取り組む企業の事例
以下では、日本国内で、クイックコマースに取り組む企業の事例を紹介していく。
OniGO(オニゴー)
OniGO株式会社は、21年8月、東京・目黒に宅配スーパーマーケット「OniGO(オニゴー)」をオープンしている。
OniGOは、生鮮品や日配品、冷凍食品など幅広い商品を取り扱っており、注文からわずか10分で届けるスピートが最大の売りである。
注文可能距離を店舗から半径1〜2km以内に絞り、配達員を店舗に常駐させることにより、10分というスピードを実現させている。配達員を常駐させるために、フリーランスのギグワーカーなどではなく、自社所属の配達員を確保しており、これが最短10分のスピード配達につながっている。
オープンから4カ月後の12月には、出張シェフサービス「シェアダイン」を運営する株式会社シェアダインとのサービス連携を開始した。シェアダインは、栄養士からレストランのシェフまで、約1800名登録する国内最大級の出張サービス。
シェアダインは、「OniGO(オニゴー)」と提携することで、食材や調味料を調達する負担が軽減されることは言うまでもなく、調理を開始した後でも、食材や調味料を調達することが可能なり、利用者もしくはシェフが食材や調味料を調達する負担が軽減された。
Yahoo!マート by ASKUL
「Yahoo!マート」は、ヤフー、アスクル、出前館と共同で、ダークストアを活用し食料品や日用品などを配送するサービス。
2022年度中に都内23区全エリアに加え他の一部エリアへも拡大し、数十店舗規模の出店を目指している。
「Yahoo!マート」は、出前館のサービス上で、アスクルが販売する食料品や日用品を中心とした約1,500種(※店舗により品揃えや商品数は異なる)の幅広い商品の中から選択し注文・決済すると、最短15分で商品を配送してくれる。
配達は、出前館の配達員が、都内の専用倉庫(ダークストア)で該当商品を受け取り、自転車やバイクで商品を配送する。
クイックコマースまとめ
新型コロナウイルスによる巣篭もり消費需要を背景に拡大を続けているクイックコマース。参入する企業も増えつつあり、企業間の競争は激しさを増してきている。
従来のECやネットスーパーと比較しても、短時間で配送が可能という明確な強みをもつクイックコマースは、一過性のブームで終わらず今後もまだまだ拡大していくと考えられる。