フェイシングとは?店舗の販売促進や商品構成グラフにおいて重要な技術を基礎から解説
2022.10.05
2022.04.21

本記事では、小売店舗においてお客への訴求や購買につなげるために極めて重要な技術の一つであるフェイシングについて基礎から解説していく。
フェイシングの概要
物理的な商品には、パッケージも含め、幾つかの「表面」がある。商品を陳列する際、それらのどの表面を正面に向けるか、何列にするかといったことを陳列棚の大きさも含めて検討するが、そうしことを受けてある表面を向けて陳列することを「フェイシング」と呼んでいる。そしてその表面自体は「フェース」と呼ばれる。
商品がお客の目にとまり、購買につなげるために極めて重要な技術である。
「フェイシング」は英単語では「表面」を意味する名詞、あるいは「面する、向く」を意味する動詞の「フェース」の動名詞と捉えることができるが、それを受け、「(商品のどこかの)表面を向け(て陳列す)る」といった意味で捉えると良いだろう。
一般的に店舗では、陳列数が多い商品ほど目立ち、訴求力が高まる。そのため、特に売り込みたい商品については陳列数を増やして目立たせたりする。また、売り込みなどとは別に、商品の補充の頻度を効率化するために陳列数をコントロールしたりする。
例えば良く売れる商品とそれほど売れない商品の2つの商品があったとする。同じ陳列数であれば、良く売れる売れ筋商品は頻繁に補充をしなければならないが、一方で、それほど売れるものではない商品はほとんど補充をしないといった状態が発生する。
それを、前者について陳列量を増やすことで、まず補充の頻度が減る。さらに後者の補充の頻度と近づけていけば同じタイミングで2つの商品の補充を一気に行うことが可能になるかもしれない。商品の補充の頻度の効率化はこのような形で目指されることになる。
店舗の商品の陳列棚を見ると、その陳列数がばらばらであることが分かるはずであるが、それには主にこうした事情がある。ちなみに、陳列棚にどの商品を、幾つ陳列するかを決める作業を「棚割り」と呼ぶ。
いずれにしても、売り込むため、あるいは売れ筋商品の補充の頻度を減らすために陳列数を増やす際には、陳列する列を増やしたり、縦に積み重ねたりする。結果、お客には必然的にその商品のフェースがたくさん見えることになるが、その「フェースが見えている数」を「フェイシング数」と呼ぶ。
チェーンストアの店舗調査手法「商品構成グラフ」でも重要な役割
チェーンストアの店舗調査手法に「商品構成グラフ」と呼ばれるものがあるが、それを作成する際にもフェイシングは大きな役割を持つ。
商品構成グラフは幾つかの視点で作成されるが、特に価格軸、「店の安さイメージ」を把握するものが多い。作成に当たっては、グラフの横軸に価格を取り、その縦軸に「フェイシング数」を取り(縦軸は商品の種類数であることもある)、特定の品種について実際の売場の状況をプロットしていく。そしてそのプロットした点を線でつなぎ、折れ線グラフにすれば完成である。それを店ごとに取り、比較する。
チェーンストアで理想とされるのはそのグラフの左側に山ができるものとされ、その意味するところは「より価格の低い商品の陳列数が多い」、つまり「低い商品を売り込んでいる」、あるいは「低い商品が売れ筋である」ということになる。
結果、「その店は安いイメージが強い」ということにつながるわけである。
チェーンストアの商品構成を語る際、「商品を左寄せにする」という表現が用いられることがあるが、それはこの商品構成グラフの山、あるいはそもそもプロットされている価格帯自体を低くすることを示す。つまり、商品の価格帯を下げることを意味しているというわけだ。
フェイシングのまとめ
「フェイシング」は、商品のどの面をどのくらい向けるかということを検討することを意味し、お客への訴求、商品の購買につながる重要な技術である。
商品の売り込みや補充作業の面で、陳列数を管理する際、あるいはチェーストアの調査手法の「商品構成グラフ」を作成する際などにも大きな役割を持つ。
より効果的、効率的な商品展開を実施することにもつながるため、しっかり意識していきたい要素の1つである。