ソーシャルコマースとは?特徴やメリット、企業の取り組み事例などを解説
2022.10.05
2022.04.28

インターネットやスマートフォンの普及とともに、Eコマース市場は年々拡大しているが、その中でも、ECとソーシャルメディアを掛け合わせたソーシャルコマースのニーズが高まっている。ソーシャルコマースは、ECサイト構築の手間やコストが省けるだけはでなく、顧客の囲い込みやカート離脱の防止といった効果が期待できる。ここでは、企業がソーシャルコマースを活用するメリットと成功事例について解説する。
目次
ソーシャルコマースとは?
ソーシャルコマースとは、Eコマースにおけるマーケティング手法のひとつであり、ソーシャルメディアとオンラインショップを組み合わせて、商品の販促活動を行う販売チャネルのことを指す。
SNSやブログといったソーシャルメディアを活用して、自社アカウントやインフルエンサー、一般消費者の投稿から商品やサービスの魅力を伝え、受動的ではなく自発的にユーザーのアクションが引き出せるのが特徴だ。
ソーシャルコマースと従来のEコマースの違い
ソーシャルコマースと従来のEコマースでは、SNSの役割や利用目的が異なる。従来のEコマースでは、自社の商品やサービスの認知度、ブランド力の向上を目的にSNSが使われ、実店舗やオンラインショップに集客するためのステップとして活用されている。
一方、ソーシャルコマースでは、SNSアカウントを持つ個人と企業、個人と個人といった双方間でコミュニケーションを図ることが可能だ。一方的に商品やサービスを伝えるだけではなく、ストーリーや世界観を交えて、友好的に顧客との関係を築ける。
また、企業とのやり取りにとどまらず、ユーザー間でのやり取りも活発化する。商品やサービスを良いと思ってくれた人がSNSに情報を投稿することで、それ自体が広告の役目を担うため、より多くの人に伝わる仕組みが構築される。
オンラインショップと比べても、潜在顧客への認知向上効果が期待できるだろう。EコマースでのSNSが集客のみなら、ソーシャルコマースでのSNSは、集客と購入の役割を担っている。
ソーシャルコマースの種類と特徴
ソーシャルコマースの種類とその特徴を解説する。
SNS・ソーシャルメディア型
ソーシャルコマースの中でも、今後重要視されているのが、SNSを取引のプラットフォームとして商品売買が行われる「SNS・ソーシャルメディア型」だ。近年盛んに利用されており、SNSのアカウント内のプロフィールや投稿、ライブ配信などで紹介された商品を直接購入できる仕組みを持つ。
国内で利用されるSNS・ソーシャルメディア型のプラットフォームには、InstagramやFacebook、Pinterestなどがある。
CtoC・C2C型
「CtoC・C2C型」とは、「Consumer to Consumer」を略したもので、企業が用意したプラットフォーム内で一般消費者同士が商品取引を行うことを指す。企業はあくまで取引を行うプラットフォームを準備するのみで、基本的には一般消費者同士の取引には介入しない。一般消費者が所有する物品を出品しているため、商品が安価で手に入れられやすく、貴重な商品が見つかるといったメリットがある。
代表的なプラットフォームとして、メルカリやAmazonマーケットプレイスなどが挙げられる。
ユーザー参加型
「ユーザー参加型」は、ユーザーが買い手としてだけではなく、クラウドファンディングでの商品への投資や企画など、企業側(売り手)を担う部分にも参加するビジネスモデルを指す。従来は企業が予算をかけて商品を製造・販売するのが一般的であった。
一方ユーザー参加型では、企業だけではなくユーザーも商品企画や投資に参加し、ユーザーからの寄付が目的額に達するかどうかで商品化するか否かを決定されることもある
日本で利用されているユーザー参加型のプラットフォームには、MakuakeやCAMPFIREなどがあり、アメリカではKickstarterがよく知られている。
グループ購入・共同購入型
「グループ購入・共同購入型」とは、共同購入クーポンサービスのことを指し、あらかじめ指定された人数で商品を購入することで、クーポンの割引を受けられる仕組みのことを指す。日本国内では活発ではないが、米国や中国では発展しているビジネスモデルである。
国内では米国のグルーポンと同様のビジネスモデルを提供するサービスのことをグルーポン系サービスとも呼び、グルーポンやポンパレなど一時は多数のサービスが存在したが、現在は多くがサービス終了となっている。中国ではPinduoduoなどが代表的なプラットフォームである。
レコメンド型
「レコメンド型」とは、ほかのユーザーによる商品のレビューや口コミ、評価を参考にして商品を購入するか判断するソーシャルコマースのビジネスモデルである。ほかにも、商品をクリックしたときに、商品に関連したおすすめが表示されるプラットフォームも、レコメンド型になる。
レコメンド型はO2O型とは異なり、サイト内で購入可能だ。過去の購入・閲覧履歴からおすすめが提示され、商品の情報ページに掲載されるレビューなどをもとに購入するか決定する。代表的なレコメンド型のプラットフォームとして、Amazonやアットコスメなどが有名である。
O2O・On2Off型
「O2O・On2Off型」とは、「Online to Offline」を略した言葉で、オンライン上のあるユーザーの投稿やレビューを参考に、ほかのユーザーがオフラインの実店舗で商品を購入するビジネスモデルのことをいう。実店舗で利用できるクーポンをネットで配信するのも、O2O・On2Off型に分類される。
代表的なプラットフォームには、InstagramやFacebook、Twitterなどが挙げられるが、アパレル特化型のMotiloやFashismなどは、残念ながら2022年3月にサービスが終了している。
ソーシャルコマースを活用するメリット
ソーシャルコマースを活用することで得られるメリットを確認しておこう。
ユーザーの囲い込みが行える
ソーシャルコマースには、ECサイトのみを活用するより、ユーザーの囲い込みがしやすいメリットがある。SNSの投稿で商品の仕様や価格のみならず、ブランドの世界観や商品の使い方などを発信することで、消費者が商品やブランドへの愛着を強めたり、ファンになったりする可能性が高まり、リピーターを獲得しやすくなる。
SNSでは気に入ったブランドや企業のアカウントをフォローしてもらえれば、フォロワーに継続的に情報を発信し続けられる。競合が多く集客が難しいとされるECサイト事業では、集客力のあるSNSを活用したソーシャルコマースを導入することで、他社との差別化も図ることも可能だ。
手間やコストをかけずに構築・運営できる
一般的なECサイトを構築するより、手間やコストをかけずにEC業務の構築・運営ができるとされている。ただ日本国内では現在、ほとんどのSNSのプラットフォーム上で決済機能が実装されていないため、やはり従来のECサイト、またはECサイトがない場合はSNSで利用できる決済機能やカート機能のサービスを活用する必要がある。使い慣れたSNSの機能からショップが開設できるので、導入するハードルが低いメリットもある。
代表的なSNSのプラットフォーム
ソーシャルコマースで活用される代表的なSNSのプラットフォームを見てみよう。
Facebook傘下の「Instagram」は、ソーシャルコマース市場の中でも、ほかのプラットフォームと比べて依然として利用者が多く、コミュニケーションツールとしてLINEの代わりに使う若者がいるほど、人気の高い写真投稿SNSである。2019年にチェックアウト機能をスタートし、プラットフォーム上にInstagramショッピングを開設することが可能だ。
商品を紹介する投稿には、商品タグや商品ページボタン、ショップタブのアイコンなどが配置できるが、日本ではプラットフォーム上に現在決済機能が実装されておらず、そこから特定のサイトに移動して、商品購入ができる仕組みである。フォローしているインフルエンサーやセレブ、ブランドなどが推薦する商品をすぐ購入できるのが特徴だ。
日本国内でも、インスタライブでのライブ配信とECサイトからの販売スタイルを活用したライブコマース事業に参入する企業が増加している。
「Facebook」も、Instagramに次いで、ソーシャルコマース市場で人気の高いSNSであり、データに基づくマーケティング向けに作られたプラットフォームである。2020年にFacebookショップの提供を開始し、企業が開設するFBページやInstagramのアカウントからアクセスが可能だ。
Instagramと同様に、日本国内ではショップ自体に決済機能がないため、自社のECサイトや決済サービスを利用する必要がある。広告やカタログ、クーポンを配信も可能で、ユーザー同士では、コミュニケーションアプリ「メッセンジャー」を使って取引連絡ができる。
最近ではFacebookのライブ動画配信「Facebook Live」を使って、リアルタイムで商品販売を行うライブコマースが注目を集めている。
「Twitter」は、2017年に購入ボタンが一時的に導入されたが、その後廃止されたこともあり、ソーシャルコマース領域では人気に陰りが出ていた。だが、2022年3月にショッピング機能「Twitter Shops」をアメリカの一部企業限定で公開することを発表。日本でも今後利用できる日も近いだろう。
アカウントのプロフィールに最大50の商品を表示可能で、現在はiPhoneユーザーのみ利用・閲覧できる。ショッピング機能には、商品最大5点まで表示できる「Shop Module」やライブ配信内で購入できる「Live Shopping」なども用意する。
アメリカのTwitter人気は第6位と高い順位にはないが、日本ではLINEに次いで、多数のアクティブユーザーを持つSNS。ショッピング機能が導入されれば、広告投稿の効果や拡散性の高さ、やり取りのしやすさから、どのような効果をもたらすかは未知数である。
TikTok
中国発のショート動画配信プラットフォーム「TikTok」。ソーシャルコマース市場への進出は遅かったが、10~30代の若者を中心に、日本でも1,000万人以上の利用者を誇り、インフルエンサーを多数輩出する場となってい
日本では現在はプラットフォーム上にショップは実装されておらず、TikTokで見つけた商品を買ったことがある割合まだ少なくはあるが、購入経験のある年代は10代、20代の女性が圧倒的である。
TikTokの本場、中国ではショップ機能が実装されており、「KOL(キーオピオニオンリーダー)」と呼ばれるインフルエンサーらがライブコマースを活用して、商品の販売を活発に行っている。現段階でショップ機能は、中国以外ではイギリスやアメリカ、インドネシアの一部のユーザーだけが利用できる状況で、今後商品のアップロードからフルフィルメントまですべて、TikTok内で管理できるようになる予定である。
ソーシャルコマースを活用する企業の事例
ソーシャルコマースを導入する企業の取り組み事例を紹介する。
ハイブランド「ルイ・ヴィトン」の取り組み事例
高級ファッションブランドの「ルイ・ヴィトン」は、2019年にハイブランドとして初めて、中国のソーシャルコマースプラットフォーム「小紅書(RED)」にて、ライブストリーミングによるキャンペーンやインフルエンサー「KOL」による施策などを行う。
2020年のライブストリーミングセッションでは、15万2,000回以上の再生回数を記録し、視聴者の関心を引き付けることに成功している。新型コロナウイルスの影響から世界中で外出が制限される中、実店舗が閉店し、暇を持て余している消費者に新しい形の購入体験を提供する試みがあったといえる。
家電機器メーカー「バルミューダ」の取り組み事例
家電機器メーカー「バルミューダ」は、キッチン製品を始めとした、デザイン性の高い電化製品を多数手がけている。自社のECサイト以外にも、さまざまなメディア展開を行っており、特にサイト内に掲載された製品開発ストーリー「ストーリーズ」は、潜在的な顧客ニーズを掘り起こすきっかけとなり、ファンを生み出すコンテンツとしての役割を担う。
InstagramやTwitterなどのSNSでは、自社製品が暮らしの中に溶け込んでいる姿を伝える投稿が多く、そこからユーザーがECサイトにアクセスして、販売の機会を作り出している。
ECの発展が著しい中国におけるソーシャルコマース
中国ではソーシャルコマースがEC業界の新たなスタンダードとして、中国の小売EC売上の多くをけん引している。月間アクティブユーザーが12億の巨大SNS「WeChat」は、ソーシャルコマースの主要なプラットフォームであり、WeChatのミニプログラムはEC業界を席巻している。
2020年4月にライブストリーミング機能を開始し、CartierやBALENCIAGA、LOEWEといった高級ブランドもミニプログラムをスタートし、デジタルに精通した消費者向けに施策を展開している。
ほかにも、写真や文章の共有機能に加えて、Eコマースのプラットフォームとしても知られる「Weibo」も、EC販売にコミュニケーションを組み合わせた方法を採用している。
ソーシャルコマースまとめ
自社のECサイトだけでは集客が難しい場合も、SNSを活用することでさらに大きく成長できる可能性がある。日本では未だ後れを取っているが、世界的にみてもソーシャルコマースの市場規模は拡大しており、ビジネスを拡大していくことを考えるなら、今後必要条件となっていくに違いない。成長著しいソーシャルコマースのポイントを踏まえたうえで、自社に適した形で導入を検討してみよう