小売業と卸売業の違いとは?具体的な事例を交えて解説

2022.08.18

2022.07.15

小売業についても、卸売業(問屋)についても、ほとんどの人は、名前を聞いたことがあるだろう。とはいえ、小売業と卸売業は、同じ販売業者だ。どこが、どう違うのだろうか?

小売業と卸売業の違い

小売業と卸売業の違い
小売業と卸売業の違い

小売業と卸売業の最も大きな違いは、「販売先がどこなのか」ということ。「誰が顧客なのか」と言うこともできる。小売業の販売先は一般の個人、つまり、消費者。それに対して、卸売業の販売先は、企業などの法人や団体といった大口需要者だ

最近では、「B to C」「B to B」という表現も、よく目にするだろう。「B」とはビジネス、すなわち、企業で、「C」とはカスタマー、すなわち、消費者を指す。

つまり、B to Cは、企業と消費者の商取引、B to Bは、企業間取引ということだ。小売業は、消費者を顧客とする販売業者なので、B to C。それに対して、卸売業は、企業を顧客とする販売業者なので、B to Bということになるわけだ。

国税庁は、 他の者から仕入れた商品をほかの小売業者、または卸売業者に販売する事業、①購入者が業務用に使用する商品を販売する事業、 主として業務用に使用される物品、本来②③の用途が業務用である物品を他の事業者に販売する事業を、卸売業と例示している。

多様な小売業と卸売業

ただし、ひと口に小売業と言っても多種多様で、百貨店、スーパーマーケット(SM)、コンビニエンスストア、ドラッグストアといった、さまざまな業態がある。最近では、実店舗を持たない「ネットショップ」なども増えてきた。百貨店のような総合小売業もあれば、酒販店や花屋のように、特定のカテゴリーの商品しか取り扱わない専門店もある。

一方で、卸売業もバラエティに富んでいる。食料品であれば、ドライグロッサリーでも、冷凍食品でも、日配品でも取り扱う総合卸もあれば、鮮魚しか取り扱わない専門卸もある。また、同じ鮮魚卸でも「大卸」と、大卸から魚介類を仕入れて、鮮魚店や飲食店などに卸す「仲卸」のように分かれるケースがある。

ここで、卸売業の一種である「商社」に注目してみよう。商社にも、「ラーメンからロケットまで」取り扱う総合商社もあれば、食料品、ファッションといったカテゴリーに特化した専門商社もある。

一般に、卸売業と商社は 同義語 と、考えている人が少なくない。しかし、国語辞典を引いてみると、商社とは「国際的な取引を中心とする卸売業」、すなわち、商品を外国から輸入して国内で販売したり、国内で仕入れた商品を海外に輸出したりする「貿易商」を指すということがわかる。

つまり、国内取引しかしていない卸売業の場合、 商社 と名乗るのは、本来の意味とマッチしないというわけだ

小売業でもあり卸売業でもある業態

小売業と卸売業は違うのだが、世の中には小売業でもあり、卸売業でもある業態も存在する

その好例が、業務用スーパーのような「現金卸」。英語では、「キャッシュ・アンド・キャリー」という。BtoBは、大ロットの取引がメーンため、卸売業が商品を配送してくれるケースが一般的だ。

ところが、現金卸は、基本的に顧客が自分で商品を買いに来て、その場で決済し、自分で持って帰る仕組み。現金卸は、運賃がかからず、「掛売り」しない分、商品を安く売るケースが多い。

顧客は、小ロットでも購入できるし、好きなときに買いに行ける(飲食店が調味料を切らしてしまった場合など)といったメリットもある。

卸売業は、見本を並べる「ショールーム」は構えていても、商品を売場に並べる 実店舗 は持たないのが普通。

それに対して、現金卸は、実店舗を構えている点も特殊だ。現金卸の顧客は、事業者でも一般に 個人客 として来店するからだ。

個人客が商品をその場で選んで、買うのなら、売場があったほうが便利。小売業の多くが、実店舗で商品を販売しているのも、同じ理由なのだ(一部には、百貨店の外商、訪問販売などの形態もある)。

現金卸は、商店などの事業者だけでなく、消費者にも商品を販売するのが特徴。

ただし、会員制にして、顧客を「事業者に限定」することがある。21年に日本から撤退した独メトロもその一つで、大型店であっても「小売業ではない」として、大店立地法の適用対象外だった。

一方で、日本でもお馴染みの米コストコ・ホールセールも、会員制現金卸(ホールセールクラブ)だが、ビジネス会員と個人会員の区分があり、消費者も会員になれる。

小売業と卸売業の商品による違い

小売業と卸売業は、商品の種類による違いもある。

商品の中には、食料品や衣料品、家庭用品といった、消費者が使う「消費財」もあれば、荷物を運ぶフォークリフトや会計で使うレジスターのように、法人などが仕事のために使う「生産財」もある(ただし、食料品を惣菜に加工して売るように、消費財を生産財として使うケースも多い)。

生産財の例としては、ガラスやタイル、セメント、木材といった建材がある。それらは通常、小売業では取り扱っていない。なぜなら、工務店などの建設業者向けに販売されるからだ(消費者のDIYのニーズによって、ホームセンターなどで取り扱うこともある)。

生産財を使うのは、企業などの法人なので、生産財の販売業者は、卸売業ということになる。

一方で、消費財を使うのは、基本的に消費者なので。消費財は、小売業が消費者に販売することになるわけだ。

小売業は、消費者と日常生活で接点が多く、馴染みのある会社が多い。ところが、卸売業は、法人などが顧客なので、仕事の取引でもない限り、接点がない。

小売業と違って、アクセスがいい立地に、必ずしも出店しなくてもいいので、消費者の目に触れにくいということもあろう。

流通ルートによる小売業と卸売業の関係

流通ルートで、小売業と卸売業の関係を考えてみよう。消費財、生産財といった商品の種類によっても、違いが出てくる。

生産財は、基本的に大口需要者が直接購入する。流通ルートも、「メーカー →卸売業→企業」といった具合に、シンプルになりやすい(生産財によっては、一次卸→ 二次卸のように、重層的な中間流通ルートになる)。

それに対して、消費財は、基本的に「メーカー→ 卸売業 →小売業 →消費者」という流通ルートになる。

商品をメーカーから卸売業が仕入れて小売業に卸し、さらに、小売業が消費者に販売するわけだ。

消費財の中でも、とりわけ、食料品や家庭用品、実用衣料といった日用品は、SMのような小売業(とりわけ、実店舗)に馴染みやすい。日用品は、購買パターンが多品種高頻度なので、消費者がその都度、必要に応じて、必要な分だけを買うなら、実店舗が適しているからだ。

そこで、日用品の場合、「卸売業→小売業」という流通ルートになるのが必然と言っていい。食料品なら国分グループ本社、三菱食品、家庭用品ならあらた、PALTACといった大手卸が存在するのも、そうした背景があるからだ。

とはいえ、同じ消費財でも種類はさまざまで、日用品などと違って、流通ルートに卸売業が介在しない商品もある。

その一例が、自動車(自動車用品は除く)だ。国産車の場合、「自動車メーカー →カーディーラー(販売店)→ 消費者」という流通ルートに、ほぼ集約される。少品種、高額の耐久消費財であることが、大きな理由の一つだ。アパレル(既製服)も、流通ルートに卸売業が介在しないケースが多くなっている。

というのも、大手アパレル会社は、多くがメーカーと卸売業の機能を併せ持っているからだ。

もともと呉服問屋などの卸売業で、ファッションの商品企画・デザインを自社で手がけるようになり、成長した会社が多いのだ(もっとも、メーカーと言っても、自社生産設備を持たないファブレスが大半)。全国展開する自社ブランド商品は、百貨店などの大手小売業と直接取引するのが一般化した。

さらに、ショッピングモールや駅ビルで自社ブランドショップを運営するなど、
小売業 に進出するアパレル会社も珍しくない。

一方で、日用品のジャンルでも、卸売業が介在しない流通ルートが拡大しつつある。その背景にあるのが、大手小売業の台頭だ。日用品の大手メーカーでも従来、卸売業は存在価値が高かった。

もし小売業と直接取引すると、全国に無数に散らばっている小売店からの注文・配送・決済などを、自社で行わなければならないので、膨大な労力やコストがかかる。掛売りで決済した場合、小売業の与信管理までしなければならない。卸売業があれば、そうした仕事をすべて任せられるわけだ。

一方で、取り扱う商品が数千品目以上にも上る小売業も、数多くのメーカーごとに取引していたのでは、いくら手があっても足りない。そこで、いろいろな商品をまとめて納入してくれる卸売業のほうが便利なのだ。

ところが、イオンやセブン&アイ・ホールディングスのような巨大な小売店チェーンの出現で、状況が変わった。大手メーカーも、巨大チェーンとの取引であれば、物量・金額が大きいので、受発注や決済を直接行うことも可能だ。

巨大チェーンも、メーカーとの直接取引なら、卸売業よりも安く仕入れられ、メリットが大きい。もっとも、小売業は、そうした巨大チェーンばかりではない。巨大チェーンも、大手メーカーの商品ばかりを販売しているわけではない。

メーカーが小規模小売業に商品供給する場合、あるいは、小売業が小規模メーカーから仕入れる場合は、依然として卸売業が必要なのだ。将来的には、日用品でも「大手メーカー →大手小売業」という直接取引が拡大し、卸売業が介在する流通ルートと並立する可能性が大きい。

とはいえ、大手メーカーと直接取引ができても、それ以外のメーカーからの仕入れでは、物流費などがむしろ上昇し、トータルコストは容易に下がらないといった見方もある。日用品の直接取引ルートが確立されるのは、欧米のように大手小売業の市場占有率が数十%にも達する、かなり先のことになるだろう。

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