実用化進む空中ディスプレーとは?特徴や仕組みを最新の導入事例を交えて解説
2022.11.08
2022.04.08

目の前に浮かび上がる3Dアバターや操作画面。これは「空中ディスプレー」などと言われるもので、眼鏡などを使わなくても裸眼で立体的な映像を見ることができる。
すでに導入や実証実験をスタートしている企業や、マンションのインターホン、POSレジなどで実証実験を行っている企業もあり、SF映画の世界で見ていたことが身近で現実になりつつある。
本記事では、空中ディスプレーにどのような特徴があるのか、メリットや想定される使用シーン、実際に導入・開発をしている企業の事例を紹介していく。
目次
空中ディスプレーとは?
空中ディスプレーの特徴や仕組み
3Dの映像など、空中に浮かんでいるように見えるものはこれまでも存在していた。
しかしそのどれもが3D眼鏡の使用や、霧(ミスト)でできたスクリーンに投影するなど、何かを使用することで立体的な映像を映し出していた。空中ディスプレーは、どのような映像技術になるのだろうか。
例えば、2022年1月に都内セブン-イレブン6店舗にて行われた、非接触・空中ディスプレー技術を採用したキャッシュレスセルフレジの実証実験に参画したアスカネットは、空中ディスプレーについて下記のように述べている。
空中ディスプレイとは、光の反射を利用することで空中に映像を表示させる技術のことをいい、空中結像技術とも言われます。特殊なメガネなどを用いず、肉眼で目の前に映像が浮かび上がります。
センサーや触覚を加えることで空中タッチパネルとしても利用でき、非接触のインターフェイスとしての需要も高まっています。
空中ディスプレイとは
空中ディスプレーの仕組みは、メーカーや機器によっても異なるが、簡単にいえば、光の反射を利用した空中結像技術によって、特殊な眼鏡を使用せず肉眼で立体映像を視認可能にし、その映像にモーションセンサーを加えることで、操作性を付与しているものといえる。
空中ディスプレーのメリットと想定される使用シーン
空中ディスプレーのメリット
空中ディスプレーにはさまざまなメリットがあるが、特にタッチ操作のできるものには大きなメリットがある。
非接触で操作できる
感染症対策として非接触が好まれることが多くなったが、空中ディスプレーは現物のディスプレーに触れることなく、非接触で操作できる。特に衛生面を重視する医療現場においても大型のパネルの資料を見るときなど活用ができるだろう。
除菌の手間がかからない
従来のタッチパネルや機器では接触部分の除菌など、清掃をする必要があった。空中ディスプレーでは非接触のため、除菌の手間が不要になる。
スクリーンや眼鏡が不要
スクリーンがなくても映像が投影される。また、特殊な眼鏡がなくても立体的に浮かび上がって見えるため、設備や準備が省略できる。
実物を再現できる
製品が実際に手に取れなくても目の前に、実物が存在しているかのように映し出すことができ、商品購入の際の参考になる。
セキュリティ面の安心
空中ディスプレーは隣や後ろから見えにくい特徴を持つものがあり、暗証番号や部屋番号の入力などセキュリティ面が重視されるシーンでも活躍する。
空中ディスプレーの想定される使用シーン
さまざまなメリットのある空中ディスプレーだが、どのような場所でこれから使われていくのだろうか。
例えば、オフィスや自治体、病院などの受付で使用される。順番待ちの受付や、アバターによる接客などだ。衛生面が重要な病院では、ナースステーションや資料を映した大型パネルのモニター操作を非接触で行うことができる。
また、身近なところでは、マンションなどの集合住宅のインターホンや、飲食店のオーダーツール、アミューズメント施設など使用シーンは多岐にわたる。販売業の現場では、空中ディスプレーやPOSレジに使われるケースもあり、非接触による接客、やり取りが可能となる。
このように空中ディスプレーは、自治体や病院、マンション、飲食店などさまざまな場所で使用されると想定でき、私たちの身近な存在になっていくかもしれない。
空中ディスプレーの導入・開発事例
では、実際に空中ディスプレーを導入・開発している事例を見ていこう。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン(POSレジ)
株式会社セブン-イレブン・ジャパンとアスカネット、神田工業、東芝テック株、三井化学、三井物産プラスチックによって「デジPOS」の実証実験が開始されている。
「デジPOS」は空中ディスプレーのレジのことで、レジ画面が空中に浮かび上がる。キャッシュレスセルフレジのため、お客がタッチパネルのように使い、商品のバーコードの読み取りなど会計操作をする。完全非接触の会計が可能だ。
また、既存のレジと比べて約70%のサイズになり、レジカウンターのスペースを省くことにつながる。
この「デジPOS」は、ディスプレー、光学素子(空中ディスプレープレート)、センサーの各モジュールで構成されている。
2022年2月1日(火)から都内のセブン-イレブンの6店舗にて行われている。アスカネットの独自調査によるとPOSレジに空中ディスプレーを採用する実証実験は世界初という。
広島県庁(受付案内)
空中ディスプレーの導入先:3Dアバターでの受付案内
UsideUとNTTドコモ 中国支社により、広島県庁に完全非接触・非対面による受付案内が導入された。この受付案内は、UsideUの手掛けるアバター遠隔接客システム「TimeRep」をアスカネット提供の空中ディスプレーである「ASKA3D」で表示する。
完全非接触・非対面による受付案内は自治体として全国で初めてのこと。
来庁した人は、受付で空中に浮かび上がる映像をタッチして操作。県職員の呼び出しや遠隔での接客が可能となる。
西武池袋本店(商品案内)
空中ディスプレーの導入先:3Dアバターでの商品案内
西武池袋本店では、バレンタイン催事「チョコレートパラダイス2022 第2会場」にて、空中に映し出された3Dアバターが商品案内を行うサービスを実施した。
商品紹介の監修を行っているチョコレート探検家の「チョコレートくん」が3Dアバターで登場し、商品案内を実施するというもの。
デジタル技術を活用したさまざまなソリューションを展開するkiwamiが、VR店員ソリューション「xR Cast」、独自ホログラムデバイス「HoloVase M」を活用した裸眼VRソリューション「Holo Masterpiece」を組み合わせ、ホログラムに投影された3Dアバターが商品案内をする技術を提供。
kiwamiの調査によると空中ディスプレーを活用したホログラムのアバターによる商品案内を流通業界で実現したのは、世界初という。
大和ハウス工業(インターホン)
空中ディスプレイーの導入先:インターホン
大和ハウス工業株式会社が開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」(神奈川県川崎市高津区)のマンションサロンエントランスで、空中で操作できる「空中タッチインターホン」の実証実験が開始された。
大和ハウス工業とパナソニック、アスカネットの3社による共同実証実験で、2022年1月15日(土)より行われている。今回は検証のため「プレミスト津田山」への導入予定はないという。
「空中タッチインターホン」は、集合住宅のインターホンの画面を空中に表示し、操作できるインターホンのこと。
「空中タッチインターホン」により「共用部の総非接触化」「消毒作業の省力化」が実現できる。大和ハウス工業の調べによると、集合住宅での空中ディスプレーを使用した本実験は業界で初めてという。
住戸番号の入力を非接触で行うことができるため、指紋などの汚れの付着の心配がなく、手が濡れているときや汚れている場合でも操作ができる。アスカネットが開発したASKA3Dを使用したもので、隣や背後から見えづらくなっているためセキュリティ面でも安心だ。
凸版印刷(エレベーターボタン)
空中ディスプレーの導入先:エレベーター
凸版印刷の開発した空中タッチディスプレーが、2022年8月竣工予定の複合施設「東京ミッドタウン八重洲」に採用された。
オフィスフロアの各階のエレベーターホールに設置され、上下ボタンや行き先階ボタンを空中タッチディスプレーで操作できるという。
「東京ミッドタウン八重洲」では、顔認証によるオフィス入退館のシステムや、専有部入口の自動ドア化、そしてエレベーターの空中タッチディスプレーと、ビルの入口から執務室まで接触行為をせずに入館できるようになっている。
今回導入される空中タッチディスプレーは、凸版印刷が開発した以前のモデルから、空中映像の視認範囲を200%拡大し、高身長の人から子供まで、さまざまな高さで空中映像が見られるようになっている。
また、凸版印刷独自の新方式光学設計技術により、解像度と明瞭度も改善し、快適な操作が可能になった。消費電力も以前のモデルから50%低減され、機器からの発熱量の低減にもつながっている。
導入が進む空中ディスプレー
SF映画の世界や、遠い未来の話のように感じる空中ディスプレーだが、浮かび上がる3Dアバターによる案内、エレベーターホールに導入している企業や、POSシステム、インターホンでの実証実験が行われているなど、すでに身近な存在になりつつある。「非接触」という大きな特徴を持つ空中ディスプレーは、私たちの生活をどのように変えていくのだろうか。日常生活、接客業務などさまざまなシーンで活用されていく空中ディスプレーの今後に注目したい。