SMだからこそ「メニューでの提案」ができる オギノ荻野寛二社長
2025.01.10
お客は「上手に節約するように」なっている
山梨県を地盤に、新商勢圏の静岡県、長野県を含め47店のスーパーマーケット(SM)を展開するオギノは、利用するお客の需要をデータなどで把握し、さまざまな施策で応える「フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)」を長年に渡って実践してきたことでも知られるローカルチェーンである。
多くの店が山梨県という山に囲まれた、ある種の「閉鎖商圏」にある中にあってはFSPの重要性は特に高く、また、人口減少局面に入った日本においては1人1人の需要に向き合う姿勢が一層重要性を増していることは言うまでもない。同社のトップを30年近く務める荻野寛二(おぎの・かんじ)社長にFSPの真髄と今後のSMの在り方を問う。
SM業界は新型コロナウイルスの影響による特需、その後の商品の値上げなどによって全般的に売上については高い水準が続いている。ただし、オギノが地盤とする山梨県でも、人口がじわじわと減少しているという現実もある。
そうした中にあって、オギノは売上だけでなく、利益面でも健闘している。
「前期、2024年2月期は売上、(営業)利益共に過去最高でした。その上で今期の上期は、売上は前期を上回って(前期比)約104%、利益は前期並みでした。下期は売上的には前年をクリアできると思いますが、いろいろ経費が上がる与件がありますから、利益がどうなるかといったところです。
既存店の売上高も前年を超えています。コロナの問題が起こった年(20年)は(全社)売上、利益は過去最高になりました。その翌年(21年)、翌々年(22年)はまだコロナの影響が大きく、大体同じような数字が3年続きました。実は、その後の23年も伸びました。値上げの影響もありましたし、あとは市町村の「プレミアム付商品券」です。特に9月、10月が良かった。
それで、今年(24年)は逆になりました。8月まで良かったですが、9月、10月が(反動で)厳しかった。10月は天気の影響もありました。ただ、11月には戻ってきています。それでも売上は継続的に前年をクリアしていて、10月だけ約99%と少し落ちましたが、11月、12月も前年をだいぶ超えています」
トップラインの売上は好調であっても、原価、経費の上昇圧力は強く、営業減益となった企業は少なくない。そうした中、上期、前期並みの利益を確保できた背景は何か。
「粗利が改善できたことがあります。値上げの問題もありましたし、特に(不足になった)お米の供給ができたことが大きかった。もともとお取引先とずっといっしょに取り組んでいることもあって、お取引先も一所懸命集めてくれました。
当時、『お米がない』というSMが多かったですし、置いていても高い値段でした。普段お米を扱っているディスカウントストア、ホームセンターでも『全くない』といった状況でした。
そうした中、われわれは極力、普通の値段で供給しました。そんなこともあって、だいぶお客さまの支持は高まったこともあります。実際、そういうことはあるんです。
10年前(14年)にひと晩で1mを超える大雪で、山梨県が本当に「陸の孤島」になったことがありました。その時は1週間、とにかく物が入ってこなかったのです。オギノにはセンターがありますので、そのときにセンターからお店に商品を届けて、非常にお客さまに喜ばれました。
地方SMの役割においては、こうしたことも非常に大きいのではないかと思います。だから、いかに地元の皆さまのライフラインとして機能できるかというところが一番大事だと思います。
普段から産地やお取引先としっかり取り組んでいると、優先的に回してくれるものです。『こちらが安いから、こちらにする』といったご商売をやっているところは、在庫が過剰なときはいいですが、足りなくなるとやはり後に回されてしまう。これはすごく感じました。最近の値上げに伴ういろいろな問題を見ていても感じています」
商品の値上げ基調がSMの売上を高めているといえるが、一方で相次ぐ値上げによって買い控えなど、お客の節約志向が高まっていると指摘される。
「もちろん、皆さん、節約なさっていますが、『上手に節約するようになってきた』という感じがします。単純なものでは、1つのカテゴリーでNB(ナショナルブランド)、PB(プライベートブランド)、さらにCGCの商品があったとして、よりお安いものにしようといった傾向はあります。
それから、代替機能を上手に活用されるようになっています。例えば去年、卵が高くなりました。その後、いったん安くなりましたが、点数が戻らず、逆に点数が落ちている。冬に向けてまた卵の値段が上がってきていることもありますが、根本的に食べ方が変わってしまったということもあると思います。
卵といえば朝は納豆にかけるとか、本当にものすごく幅広く使われている食材ですが、どうも、その辺りが変わってきたということではないかと。だから、例えば納豆の同時購買品として、卵は非常に分かりやすいものですが、最近は卵ではなくてキムチになっています。 『納豆キムチ』です。だから、(卵の高騰によって)お客さまの食べ方が少し変わってきてしまったのではないかなと。
一方、お米については結果として単価が150%ぐらいになったのですが、こちらは点数が落ちていない。一所懸命供給したこともあって、多分、周り(競合)から取れているんだとは思います。お米の値段が上がることでお客さまが食べ方を変えて、『パン食』に移ると思ったのですが、逆に食パンは落ちているんですよね。
考えてみたら、卵が高い、ハムやソーセージが高いということで、『朝、食パンにしよう』といっても、いっしょに食べるものが皆、高いということになっている。お米も5kgで3000円以下のものを買えば、1杯当たりは約30円。そうなると、パン食とそんなに変わらない。逆にちょっと高いパンと比べると、少しお安いぐらい。
ただ、食パン(の点数)が増えなかった一方で、惣菜パンだけは増えています。菓子パンではなく、惣菜パンは良く伸びている。惣菜パンは、それだけで『一食』になるものだからでしょう。
お客さまはそういう形で、うまくコントロールをされている。組み合わせが変わってきています。野菜も果物も高いから、野菜ジュースと惣菜パンで食事にする。これだとでんぷんもタンパク質も、野菜もバランス良く取れる。こういったことが見て取れます」
「メニュー」で提案できることこそがSMの強み
お客の微妙な変化を同時購買品などから敏感に感じ取れるのは、同社がFSPを長年に割って続けてきたことの賜物でもある。特に必需品である食品の場合、お客の需要はなくなるわけではなく、「変化している」ということになる。
従って、代替する商品をうまく活用しながら、それに対応することが重要である。
「代替もその1つといえますが、お客さまの『メニューの組み立て方』が変わってきているのではないかと思います。(肉が)牛肉から豚肉になる、豚肉から鶏肉になるというのは非常に分かりやすい例ですが、そうするとお客さまとしては、鶏肉やひき肉のメニューのバリエーションが増えていく。野菜も多少高いですが、そこはうまく工夫すると。やはりタンパク質を安く抑えれば、トータル的にはお安く済む。その辺りの考え方を提案に生かしています。
店頭にレシピを置いてありますが、いまはその点をシビアに見ながら取り組んでいます。鶏肉やひき肉のメニューであるかとか。野菜についても、メニューに書いてある野菜はお客さまがある程度、(値頃感として)納得できるようなものなのかといったことです。例えば、いまはトマトが高いですから、トマトがメインのメニューはだめという話になります。
以前からやっていることですが、そんな形でいろいろ工夫しながらお客さまにメニュー提案をしています。われわれとしても、やはりお客さまの目線に近づかないとだめなんですよね。
節約したいときに、『牛肉ですき焼き』を提案してもだめで、『もつを使って鍋をどうぞ』ということであれば、お客さまとしてもぐっとくる。ひき肉でギョーザを作るとか、ハンバーグを作るとか。鶏でもいろいろな工夫ができることを提案するとか、そういったことです。
(あるものが値上がりしたとき)最初はお客さまも、うまくメニューの組み立てができない。当然そうですよね。いままで卵を気楽に買っていて、『朝はこれとこれ』などと思っていたのが、急に卵が高くなったわけですから。
だから、卵が高くなったときにどう提案すれば良いのかということを考える。(値上がりしたとき)買上点数が減るのは仕方がない。いかにお客さまがメニューを組み立てしやすいように提案するかということです。
値段が上がるものは仕方がない。だから、先ほど言ったように、『こちらはいかがですか』とか、『こういう組み合わせはいかがですか』といった提案をする。『おいしくて、しかも栄養バランスが良いものが、そこそこのお値段でできますよ』といったことを提案するために努力をすること。これこそがSMの一番の役割でしょう」
メニュー提案に注力するSMは少なくない。ただし、重要なことはそれが「お客が求めるメニュー」であるかどうか。臨機応変、かつ部門横断での取り組みとなるが、それを実現するためのハードルは高い。
「これはFSPの基本です。どうしても会社は『縦割り』になりがちです。八百屋さん(農産)は八百屋さんのことしか考えていないし、魚屋さん(水産)は魚屋さんのことしか考えていない。
でも、お客さまは当然、横で(部門に関係なく)買物をなさっているわけですから、そういうものをどうつなげ合わせていくかということは以前からやっていました。ですから生鮮の売場に加工食品の関連品もちゃんと工夫をしながら置くようにしています。
ドラッグストアがずいぶん増えて、大体店舗の周りに4、5店舗ある状態です。食品(の取り扱い)も増えて、確かに影響はゼロではない。しかしながら、ドラッグストア、あるいはディスカウントストアなどはあくまで単品の安さを追求しています。
だから、ドラッグストアに行って買物をするときの目的と、オギノに来たときの買物の目的は違うということです。その意味では、『目的性をいかに作るか』ということが、SMの本来の仕事でしょうね。
売っているものは『食品と雑貨』ということで、SMもドラッグストアもディスカウントストアも、品種で見れば似たようなものを売っているのですが、やはり(買物の)目的が違う。
以前、店舗の周りにコンビニが幾つもできたとき、当然、無傷というわけにはいかなかったのですが、そのうちにお客さまが、コンビニ同士でこちらに行くか、あちらに行くかということになっていった。『コンビニに行く』という目的の中での話になっていきました。それで、SMには『SMに行く』という目的で行く。
ドラッグストアも、いまそんな雰囲気になってきているように思います。だから、幾つ出店してもあまり関係ない。ドラッグストア同士で多分、競合する。オギノに来るときには別の目的で来るというという、そんな風になってきています」
単品ではなく、組み合わせでの提案だからこそ、他業態との差別化にもつながる。FSPに基づく提案を追求する作業は、自社の、さらにはSMの強みを確認する作業でもあった。
一方で、SMのトレンドとして「素材から惣菜へ」の流れが見られる中、オギノとしては惣菜の売上高構成比はどのようになっているのか。
「(惣菜の売上高構成比は)12%ぐらいです。ただ、FSPでクラスター分析をしていまして、『本格手作り派』『簡単手作り派』『簡便派』『即食派』などに分けて分析していますが、(惣菜の重要が高い)即食派はじわじわと増えてはいるものの、『手作り派』がそんなに減っているわけではない。世帯が小さくなっても簡単な手作りはしているようです。
『手作り派』を『本格手作り派』と『簡単手作り派』に分けていますが、その中では『簡単手作り派』が伸びていることはあります。例えば、だしを取るのではなく、調味料を使うけれど、一応、手作りするといったものです」
もちろん、節約のための手作りという側面もあるだろうが、12%という惣菜の売上高構成比はそれなりに存在感がある。さらに今後、この構成比は上がっていくことが予想される。
惣菜はその性質上、店内加工の比率が高く、多くの作業を要する分野である。オギノでは、水産、畜産と惣菜の加工をする「生鮮センター」を持つが、人手不足が深刻化する昨今、この問題にはどのような考えで臨むのか。
「惣菜は、生鮮センターで原料の加工をしていますが、焼く、揚げる、寿司にするといった最終調理は店内加工です。その意味では惣菜が一番、手がかかります。
センターで加工しても良いものと、やはり最終加工など店でやった方が良いものと(いった分け方)になると思います。その代わり、肉や魚は徐々にセンター加工の比率を上げていく。極力、後方でカットできる作業をカットして、ここはやはりどうしても人手をかけないといけないというところを残す形になると思います」
取引先と協力するFSPの歴史は四半世紀以上
FSPにおいては、お客を一定の共通の特徴を持つ「クラスター(集団)」に分けた形で分析し、それに対する施策を講じるのが一般的だ。オギノの場合、クラスターは前述のように「本格手作り派」「簡単手作り派」「簡便派」「即食派」といったものとなるが、それをどのように日々の運営に生かしているのか。
「クラスターは大きくはその4つ。それをさらに15に細かく分類しています。特に商品部などはそれを見ながら、商品について、どういったお客さまが買っているのか、年代はどうか、どういう組み合わせで買っているかといったことを分析しています。
そして、『惣菜と相性が良い』とか、逆に『結構生鮮と相性が良い』とか、いろいろなことを考えながら商品部が動いています。お店はなかなかそこまで細かくは見られないんですが、営業企画部が店ごとに『手作り派が多い』といったデータを抽出し、お店としてそれに対応するといった流れです。やはり、商品部とお店では分析の中身が違います」
オギノでは1996年からポイントカードを導入し、同時にFSPの研究に着手。実際にFSPの取り組みを始めたのは99年だが、実に四半世紀の歴史があることになる。
FSPを「お店を支えてくださるお客様を第一に考え、お客様に満足していただくためのサービスを、それぞれのお客様のライフスタイルに合わせて、きめ細かく提供していくこと」と考え、さまざまな取り組みを実践。現在では稼働カード会員数は山梨県の人口の半数に匹敵する年間約40万人、山梨県内のマーケットの約9割をカバーするにまで至っている。
「会員売上比率は90%以上あります。新店が出ると一時的に下がることもありますが、既存店では95%ぐらいある。大体8割のお客さまがカードを利用して、売上の把握が9割以上になると、相当正確な分析ができます。売上で7割ぐらいだと、やはりちょっと見えないのではないでしょうか」
また、オギノのFSPの特徴は、取り組みを自社内だけのこととせず、データをある程度オープンにすることで取引先と協力して取り組みを進めている点にある。
「97年から小さいスケールで研究会を始めて、いまの形になって21年経ちます。お取引先121社にご参加をいただき、年5回開催しています。外部講師に講演していただいたり、実際にオギノと取り組んだメーカーさんの事例発表をしていただいたりしています。
結局、われわれは分かっていても、お取引先が全く分からないと話が通じないわけです。だから、メーカーさんには一般的なデータと、それからちょっとコストがかかりますが、深く突っ込んだデータをお渡しして、バイヤーなどとコミュニケーションを取る。
メーカーさんとしても物の見方が変わります。どうしてもメーカーさんはご自分のところだけに視野が限定されがちですが、お客さまは当然、もっと幅広く、いろいろな部分の関係性で商品を買っていることが分かります。例えば、牛肉が高くなったとしたら、『鶏肉やひき肉が相対的に安いから、鶏肉やひき肉を使ってできるメニューを提案する』という発想になっていくわけです」
今後、SMにとってはますます「小商圏でのシェア」が重要になってくる。すでにFSPで山梨県内の約9割のマーケットにアプローチできているが、売上シェアではどの程度になっているのだろうか。
「食品では約30%です。ただ、シェアを目標とするというよりも、山梨県は人口約80万人と少ない中、『オギノの店があるからその地域が維持されている』ということが大事になってきます。実際、そういうところはいっぱいあります。
お客さまがそこで生活をするのに、SMがあるのとないのと全然違いますから。だいたい山梨県内だと、山の上の方など一部を除いて、大体の地域では(家から)車で15分走ればオギノのお店があるといった状況です。
やはり、それを維持していくことが地域のSMの一番大事な役割ではないでしょうか。それがあると、農業ともサプライチェーンを組んでいって農業も成立するようになるかもしれない。当然、観光もそうですし、いろいろな産業が維持されるようになる可能性が出てきます。やはり、SMがないと生活できないですから。
観光地でもいま、人手不足でホテルや旅館に料理を作る人がいないという問題が出てきています。そういったところでは、バスを仕立ててSM巡りをしているところもあります。
惣菜を買ったり、お酒を買ったり、その日に食べるものをいろいろ買っていただけます。しかも、SMであれば結構お安く買えます。1人前で1500円もあればいいわけです」
山梨県のマーケットをさらに深掘りしていくこともあるが、一方で近隣の長野県に7店、静岡県に5店といった形で着実に商勢圏の拡大も進めている。
「じわじわ増やしていきます。ただ、センター(生鮮センター、グロサリーセンター、衣料・用度品センター)が山梨県のちょうど『へそ』みたいなところ(笛吹市)にありますので、そこから2時間圏。いま物流会社がシビアになってきていて1時間45分になっていますが、その観点から見たドミナント化をもっと進めていこうと思っています。チャンスがあれば神奈川県の相模原市なども視野に入れています。
さらに次のステップとしては、さらに遠く行くために、デポ(小型物流拠点)を設けて、いまのセンターでやる作業とデポでやる作業とを組み合わせるといったことが必要になってくるとは思います」
AIではお客への対応はできない
特にFSPによるドミナントの深耕においては、限られたマーケットでいかに売上を上げていくかという点で、それが進めば進むほど難易度も増すと考えられる。長年に渡ってデータに基づくお客との対話を続けてきた荻野社長はいま、SM業界をどのように捉えているのか。
「やりがいのある業界だと思います。いろいろなデータでお客さまが見えてきたとしても、それではAI(人工知能)でお客さまへの対応ができるかといえば、できません。プランを3つ挙げるぐらいのことはAIでできるかもしれませんが、何をやるのかを決定することは人間がやらなくてはなりません。
経済状況やお天気だけでなく、人間の感性なども密接につながっていますからコンピューターで過去の事例を出しても、やはり限界がある。そういう意味では非常に人間が活躍できる場ですし、おもしろいのではないかと思います。
私が社長になったのは97年、ちょうどバブル崩壊の真っ最中でした。インフレが続いてバブルになって、それがはじけた。それで92年ごろからは金融、不動産など『これは大変だ』となってきましたが、小売りは意外にお客さまの反応も含め、影響が出るのが少し遅かった。
小売りは『また元に戻るのでは』ぐらいの感覚でしたが、それが95年ごろからは『本当に何かおかしい』となってきました。97年になると銀行や保険会社もがたがたっとなっていきました。社長に就任したのがそのような時代でしたから、もう何があっても怖くありません(笑い)」
日本経済はそのバブル崩壊をきっかけに不況となり、その後、およそ30年の長きに渡って低経済成長、デフレ傾向の時代が続くことになった。
しかしながら昨今、物価の高騰が続く中、インフレ基調への転換が起こっている。
「デフレでもインフレでも、SMとして対応が『難しい』ことは間違いありません。お客さまがどう変わるかは非常に難しい。だから、状況を見ながら自分で工夫してやっていくということが、すごくおもしろい業界だと思います。
極端な話、自分の食べたいものが意外に分からないのがお客さまだと思います。お店でたまたま見た商品が食べたくなって急に買ってしまうとか。これはAIには分からない。お客さまは、そういう皆さんの塊ですからね。
だから、難しいですね。われわれは常にお客さま目線で考えなければいけない。コンピューターはせいぜい前年、前月、前週のデータとか、気温が何度になったらこういうものが売れるといったものですが、それが今後も売れるかどうかは全く別の話です。
そんなことが本当にしょっちゅう起きている。だからこそ、人間がそれに挑戦することに意義がありますし、おもしろい業界だと思うわけです」
もちろん、今後、AIもどんどん進化を遂げていくはずで、「AIとの競争」という側面も一方では出てくるだろうが、「人間」という極めて捉え難い存在と相対することは、本質的にとても「難しい」ことであり、人間だからこそ、それができるという側面は確かにある。そして、難しいからこそ、挑戦することをおもしろいと感じられるのもまた、人間ならではの特徴といえる。
長年、データに基づいたFSPを実践してきた荻野社長の言葉だからこそ、一層この言葉の重みも増す。