改めて、Beacon(ビーコン)とは?身近にある導入事例と拡大可能性について
2022.04.21
2020.10.19
ラディック代表 西川立一
「Beacon(ビーコン)」は、もともとは「のろし」「かがり火」「灯台」といった、「位置を特定し伝達すること」を表す言葉だったが、近距離無線技術のBluetooth Low Energy(BLE)を利用した新しい位置特定技術に対しても使われるようになった。
iOS7から「iBeacon」が標準搭載、有力なデジタルデバイスとして注目
Appleが提供するiOS7から「iBeacon」が標準搭載されたことにより、 スマホと連動させることで、情報発信や販促、データ収集などさまざまな用途として利用されるようになり、有力なデジタルデバイスとして注目されるようになった。
位置情報はGPSでも取得可能だが、この場合、打ち上げた衛星からの真上からのもので、あくまでおおよその位置情報にとどまる。一方、ビーコンは、BLEの電波を通じて数10㎝単位で得ることができる。さらに屋内での位置も判別でき、それは地下階でも可能だ。
ビーコンに対応しているスマホなどの端末を持っている人が商業施設の何階にいるか、店舗の売場のどこにいるか、さらに人の移動も分かる。
そのビーコンを活用して実証実験する取り組みが昨秋から始まった。三菱地所と富士通が主催し、東京大学やソフトバンク、電通などが協力する「丸の内コンソーシアム」である。
東京・丸の内エリアに、約1000 個のビーコンを設置し、街における人たちのリアルな行動データを解析することで、就業者・来訪者の性別・年代別、行動特徴、どこから来訪しているかなどを解析し見える化し、リアルな行動データやIoT (モノのインターネット)の活用により、来街者が行動特徴に応じてより快適に過ごせるよう なイノベイティブなサービスを提供することにつなげていくという。
データ分析を得意とするスタートアップ企業も登場
デジタルデータを使ったリアル店舗のマーケティングには、データ分析のスタートアップ企業unerry(ウネリー)がビーコンシステムを使用した技術で参画。ビーコンに反応するスマホのアプリを入れた人が、ビーコンの数十mの範囲に入ると検知し、人が移動すると、それをまた別のビーコンが認識することで、人の流れを把握できる仕組み。
また、三菱地所グループの「丸の内カード」の購買履歴データとも連動させ、匿名加工情報にした上でこの実験にデータを供給する。
さらに、丸の内エリアで開催されるイベントや商業施設の活性化を目指し、三菱地所が運営する SNS アカウントや ウェブコンテンツなどのビッグデータ解析や、 丸の内エリアに興味を持つ人に効果的にアプローチ できるよう、要因解析と改善提案を行う。
これらに加えて、得られたパーソナルデータを個人の同意の基、安全に取り扱う枠組みである情報銀行で、JTB がこれまで の実証実験などで培ってきたノウハウを生かし、丸の内エリアのワーカーや来街者を対象に新たな「旅」の体験をデザインすることを狙い、サービス創出も行っていく。
個別企業によるビーコンの設置でない、丸の内という広範囲なエリアでの汎用性のある実証実験がどこまで成果を上げることができるか注目される。
無印良品など、小売企業でもビーコン活用は進む
これに先立ち、無印良品を展開する良品計画でもビーコンを使って、2013年にスマホアプリ「MUJI PASSPORT(ムジパスポート)」のサービスを開始、ダウンロード数はすでに1000万以上で実際に利用されているアクティビティ率も高く、多大な成果を上げている。
商品購入やクチコミやレビューの投稿などさまざまなシーンで「MUJIマイル」を付与、店舗へのチェックインでもポイントをもらえるようにし集客につなげ、店舗内の人流データを把握して、販促や情報発信にも活用している。
パルコのスマホアプリ「POCKET PARCO(ポケットパルコ)」では、パルコ館内でアプリを起動し、目標歩数に達成するとコインが貯まるPARCO WAKING COINを導入。貯めたコインはPARCOポイントに交換することで買物時の割引になる。
アプリを利用してもらうことで、利用データが蓄積され、ウェブでは難しかったパーソナルな接客ができるようになった。アプリには接客やサービスを星で評価するアンケート機能もあり、その評価はテナントにフィードバックされ、接客サービスの向上に生かされている。
イオンモール、三井不動産といったショッピングモールでの導入も進み、施設内マップ、買い得情報の配信に利用されている。
このように、ビーコンを活用することでいろいろな効果を期待できるが、アプローチとしては、店舗にビーコン端末を設置、来店客や店舗の近くにいる受信可能な範囲にいるユーザーを検知し、店舗や商品などの情報や、クーポンを送信する集客・販促ツールとしての利用が目立つ。
こうしたプッシュホン通知だけではなく、ビーコンを設置したデジタルサイネージの前を通ると、スマホではなく、デジタルサイネージに、その人にとって最適な動画を映し出すサービスも提供されている。
顧客それぞれに応じたパーソナライズされた「One to Oneマーケティング」の必要性が高まっているが、ビーコンを使えば的確にアプローチできその人に合った情報を提供、個人の特化した提案も可能だ。
スマホの普及とiBeaconの登場で、ビーコンの利用は格段に広がった。小売りではまだまだ普及していないが、マーケティングツールとして大きな可能性を秘めていることから、今後、ビーコンを使った新たなサービスも登場し、利用も広がっていくだろう。
参考として、その他、基礎的な知識はこちら。