リテール企業の雄に見る、顧客に愛され続けるOMOの始め方
2022.04.21
2020.08.07
株式会社アイリッジ 金箱彰夫
アフターコロナのマーケティングに欠かせない、OMOとは
「OMO(Online Merges with Offline)」とは、直訳すると「オンラインとオフラインを融合する」という意味です。具体的には「オフラインとオンラインの区別をせず、あらゆるユーザー体験をデータ化し、そのデータをユーザーエクスペリエンスの向上のために還元していく」という概念です。
「スマホさえあれば生きていける」と言われている中国では、すでにこのOMOという新たなマーケティング概念が全盛を極めており、日本でもOMOはこれからのマーケティングやサービス提供を行う上で、非常に重要な概念となることが予想されています。
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、人々の生活も大きく変化しました。
ビジネスでは「テレワーク」や「テレカン」「ウェビナー」、外食や買物においては「飲食店の宅配の拡大」「EC(電子商取引)のインフラ化」など、これまでなかなか積極的にオンラインを活用できていなかったものが、いま必要に迫られて急速にオフラインからオンラインへと変化し、定着しつつあります。
多くの小売企業が実施してきたオムニチャネル化の前提の基、今後はリアルチャネルとデジタルチャネル、全てのチャネルから得られるデータを活用した、シームレスな顧客体験の提供を目指していく必要があるでしょう。
さまざまな行動のオンラインシフトが加速する「アフターコロナ」においては、その重要性がより一層増していくように思います。
OMOに向けて動き出すリテール企業の雄
全てのチャネルを連携し、シームレスな顧客体験を提供する手段として、アプリを活用している企業が多くあります。
例えば、ショッピングアプリを軸にOMOを進めているのが、ニトリホールディングス(HD)。
ニトリアプリは、オンラインのタッチポイントとなっているだけでなく、オフライン(リアル店舗)の利便性を上げる機能を盛り込み、オンライン・オフラインそれぞれの体験を豊かにすることに成功しています。
ユーザーインターフェースも利用シーンごとに分かれていて、「おうちでニトリ」タブと「お店でニトリ」タブ、アプリと店舗どちらで見つけた商品も登録できる「お気に入り商品」タブの3つのタブが用意されています。
このタブを使い分けることで、「おうちでニトリ」で見つけた商品を店舗に見に行く際、位置情報を基に店内のどこにあるかすぐに見つけられたり、店舗で「お店でニトリ」から商品のバーコードを読み取り配送手続きをして商品を持ち運ぶことなく購入できたり、オンラインとオフラインで分断されることなくストレスレスなショッピングができるようになっているのです。
店舗で実物を見てから購入したい人にも、じっくり比較検討してからECで購入したい人にも、オンライン・オフラインを意識する必要のない快適な顧客体験を提供していると言えるでしょう。
OMO実現の3つのポイント
このようなOMOを実現するためには、3つのポイントを押さえる必要があります。
①オムニチャネル化の実現
OMOの大前提として、オムニチャネル化が完了していることが重要です。
オムニチャネルの最大のゴールは、オンライン・オフラインのあらゆるチャネルで同じ顧客体験を提供することです。
②データの取得と分析
リアルチャネルとデジタルチャネル、全てのチャネルから顧客に関するデータを取得し、活用できる形へ加工して、分析を行います。
ここで重要なのは、企業メリットのためではなく、顧客に還元する目的でデータを取得・分析するということです。
③顧客視点でのマーケティング
一番重要なのは「顧客視点」という考え方です。
シームレスでストレスレスな顧客体験を提供することで、顧客満足度を向上させ、顧客との継続的な関係性を構築します。
ここでいう1つ目のオムニチャネルやOMOを実現するためには、顧客情報や商品・在庫情報の一元化、店舗用ハードウェアの刷新など、やらなくてはいけないことが多くあります。
中でも社内体制づくりは特に重要で、リアル店舗とECのみならず、宣伝からサポートに至る全ての部署が協力し、一貫したユーザー体験の提供を目指さなくてはなりません。
当然、店舗とECで売上げの奪い合いにならないような評価制度の設計も必要です。
会社全体で取り組まなくてはならない大きなプロジェクトとなりますが、アフターコロナも愛され続ける企業・ブランドになるためには、リアル店舗やEC、その他のチャネルがそれぞれ別ものとして存在し続けるのではなく、顧客に対して「1つのブランド」であることがとても大事です。
そして2つ目の「さまざまなチャネルでどのように顧客データを取得しシームレスな顧客体験につなげていくか」と、3つ目の「顧客とどう継続的な関係性を構築していくか」。
ここは、スマートフォンアプリを活用したアプリマーケティングなくして成し得ません。
現在、スマートフォンの普及率は70%を超え、アプリは行動の起点となるさまざまな機能を備えた、コミュニケーションの中核と呼べる存在になりつつあります。
顧客を知るための情報が最も多く集約されたデバイスでもあり、非来店時を含め最も多くのタッチポイントを作ってくれる存在なのです。
アプリ活用の最大のメリットは、顧客の来店や購入につながるコミュニケーションが可能な点にあります。
アプリのプッシュ通知で新着情報やクーポンを配信することでダイレクトに働きかけたり、チェックイン機能やポイントカード機能などを実装することで、アプリ使用頻度を向上したりできます。
商品やブランド、従業員の魅力が伝わる情報発信やキャンペーンなどを通じて、非来店時や商品検討段階の顧客とも継続的な関係性が構築できる点も、アプリを活用するメリットです。
さまざまな行動のオンラインシフトが加速するアフターコロナに向け、自社が顧客に愛され続けるために必要なOMOの姿をイメージしてもらいたいと思います。
顧客に「愛される仕組み」を作る、ファン育成プラットフォームFANSHIP(ファンシップ)
「FANSHIP」は、顧客を優良顧客へと育成し売上げ・利益を最大化するファン育成プラットフォームです。顧客のオンライン行動履歴とオフライン行動履歴を統合・分析して結び付きの強さ(ファンレベル)ごとにセグメンテーションでき、分析後は、自社アプリでの施策に加え、LINEを通じたコミュニケーションが有効な顧客にはLINE公式アカウントでのプッシュ通知やOne to Oneトーク等での施策も可能です。
かねはこ あきお 日本ヒューレット・パッカードにて、通信キャリア向けのシステム開発や海外ソフトウェアのローカライズなどを経験。その後、2014年1月にアイリッジ入社。小売系ではMAU数トップ5にもランクインする国内有数のアパレル企業公式アプリをはじめ、リテール業界を中心に多くのスマホアプリ・システム開発案件のプロジェクトマネージャーを務める。現在はアイリッジの主力事業を支えるCDP(顧客データ分析プラットフォーム)サービス「FANSHIP」のプロダクトマネジメントや、位置情報データを活用した新規事業の立ち上げを担当。