仕切り価格とは?小売価格や卸売り価格との違いなどと併せて解説

2022.11.28

2022.07.15

一般に「価格」と言えば、消費者が商品を小売店から購入するときの代金を指す。しかし、流通業界では、「小売価格」「卸売り価格」「仕切り価格」というように、価格に関する専門用語が複数ある。

「価格だから、モノの値段であることはわかるけど、どこが、どう違うの?」と、混乱している人もいるだろう。とりわけ、「仕切り価格」には、馴染みがない人も多いだろう。そこで、流通業界における 価格 について、整理してみることにしよう。

商品の流通ルート

価格の名称は、流通の各段階で変わってくる。まず商品の流通ルートについて、確認しておこう。

商品は、一般に「生産者(メーカー)→ 卸売業者 →小売業者」という流通経路をたどって消費者に届けられる。商品によっては、鮮魚のように一次卸→ 二次卸と、複数の卸売業者が介在するケースもある。

一方で、生産者が卸売業者を介さずに小売業者に販売するケースもあるし、中には、生産者が直接、消費者に商品を販売することもある。

一般的な流通ルートでは、まず卸売業者がメーカーから商品を買い入れ、その商品を小売業者に販売する(「卸す」と言う)。卸売業者はその際、人件費などのコストや利益を含めたマージンを価格に上乗せする。小売業者は、卸売業者から買い入れた価格に、さらにマージンを上乗せして、消費者に商品を販売している。

つまり、商品が卸売業者、小売業者と、流通ルートを経るに従って、価格は上がっていくわけだ

仕切り価格とその他の価格との違い

もうおわかりのように、小売業者が消費者に商品を販売する価格が「小売価格」だ。消費者から見れば、商品の値段、すなわち、「価格」ということになる。

それに対して、卸売業者が小売業者に商品を販売するときの価格が「卸売り価格」、そして、メーカーが卸売業者に商品を販売するときの価格が「仕切り価格」と、一般に呼ばれている。

卸売り価格も、仕切り価格も、BtoB(企業間取引)でしか使われない専門用語とも言える。

ちなみに、証券業界では、株などの取引のとき、証券会社の手数料込みの売買価格を、仕切り価格と称することがある。

不動産取引でも、売り主と買い主の交渉が成立した場合の不動産価格を、仕切り価格と言うことがある。また、国産車の場合、一般に卸売業者が介在しないが、自動車メーカーがカーディーラー(小売業者)に車を販売するときの価格を、 “仕切り価格 ”と呼んでいるという。

このように、商品の種類によって、 “仕切り価格”の意味合いが変わってく
ることもあるので、注意しよう。

そのほかにも、流通業界では、価格に関する専門用語があるので、見ていこう。
例えば、「仕入れ価格」や「仕入れ値」は同じ意味なのだが、流通業界では幅広く通用している。

商品を卸売業者が生産者から買う場合にも、小売業者が卸売業者から買う場合にも、同じく商品を 仕入れた価格 という意味で使われるからだ。つまり、仕入れ価格とは、BtoBで、買い手が使う価格の名称だと、言い変えることもできる。

ただし、仕入れ価格は、商品本体の価格に別途、配送料などオプションの諸経費を加えたトータルの対価 として算定するケースが一般的だが、仕切り価格や卸売り価格の場合、取引交渉での 商品本体のみの価格 を指すケースも多いので、売買契約時に注意が必要だ。

仕入れ価格と似ているものとして、「原価」という専門用語もある。

仕入れ価格と、ほぼ同義に使われるケースも少なくない。もともと商品を生産するときにかかる材料費や工場の燃料費、労務費などのトータルコストのことだったが(メーカーでは製造原価と言う)、「売上げ原価」とも言うように、小売業者が卸売業者から商品を仕入れるときの価格も、指すようになった。

なお、販売価格から原価を差し引いたのが、「粗利益(売上げ総利益)」である。

仕入れ価格に似た専門用語としては、「下代」もある。もともとは、商人同士が使っていた「符丁」で、消費者に販売するときの小売価格を「上代」、それに対して、商品の仕入れ価格を下代と呼び習わしていたのだ。

現在でも、流通業界で使われることがあるので、覚えておくといいだろう。ちなみに、ファッション業界では、値引き前の小売価格(プロパー価格)をよく、 上代 と言っている。

仕入れ価格と掛け率

それから、仕切り価格や卸売り価格、仕入れ価格を、「掛け率」で表す方法も広く使われてきた。掛け率とは、商品の小売価格を100%とした場合、それに対する、仕切り価格などの比率を指す。

例えば、小売価格が1000円の商品は、仕入れ価格が650円だった場合、掛け率は65%ということになる。

商品の種類によって、掛け率はさまざまだが、例えば、加工食品の場合、卸売り価格の掛け率は70%前後、仕切り価格の掛け率は60%前後になるケースが多いようだ(ただし、あくまでも平均値。

個別の商品や企業の取引関係によって変動する。以下、同じ)。つまり、卸売業者の取り分は卸売り価格と仕切り価格の差、10%前後ということになるわけだ(上場企業の決算書を見ると、原価や掛け率の全体像が把握できる)。

アパレル(既製服)の場合、仕入れ価格の掛け率は50~60%が標準と言われている。日本のアパレル会社は、多くがメーカーと卸売業者の機能を併せ持つことから、小売業者と直接取引するのが一般化しているが、アパレル会社が小売店に販売を委託したり、小売店の売場を借りて商品を販売したりするケースもあるので、それによって掛け率もかなり変動する。

ただし、掛け率は、小売価格が決まっていないと算定できない。だが現在、書籍などの一部のカテゴリーを除いて、メーカーが小売業者などに定価(再販売価格)を守らせることは、独占禁止法で原則、禁じられている(そこで、メーカーは「希望小売価格」「参考小売価格」などを使う)。

そのため、掛け率は、あくまでも、取引交渉やコスト構造を考えるときの参考数
値として、位置づけるといいだろう。

また、メーカーは、小売業者などの取引先に、自社製品の拡販をプッシュするため、「奨励金」などの名目で、仕入れ実績に応じたキャッシュバック(いわゆるリベート)を実施するケースがある。つまり、仕切り価格の実質的な割引だ。そうなると、実質上の仕入れ価格や掛け率も変わってきてしまうので、リベートの有無もチェックしておこう。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…