交差比率とは?概要や使い方、計算方法、改善方法などを解説

2022.11.08

2022.07.28

おもにスーパーやアパレル、ホームセンターなどの小売業において適正な在庫管理のためにもちいられる指標が「交差比率」だ。交差比率を求めることで、適切な在庫数量だけでなく売れている商品、商品ごとの売れ方のパターン、売り方の改善方法も把握できるだろう。

小売業における在庫管理業務や利益向上につながる、交差比率の概要や使い方、計算方法、さらに交差比率の改善方法を解説する。欠品や過剰在庫などの商品管理の課題があるときや、売れる商品や売り方を把握したいときにぜひ役立ててほしい。

交差比率の概要と使い方

交差比率の意味と使い方を解説する。

交差比率とは

交差比率とは、在庫がどれだけの利益を上げているかを見るための指標だ。「GMROI(グロスマージン・リターン・オン・インベントリー)」とほぼ同じ意味で使われる。

交差比率を求めることで、商品ごとの在庫数と利益の関係を把握できるため、欠品や過剰在庫などが防げるほか、売れ行きの良し悪しによる商品の在庫コントロールも可能となるだろう。

交叉比率はスーパー、コンビニ、アパレル、ホームセンターなどの小売業の在庫適正化の指標としておもにもちいられている。

交差比率の使い方

多くの商品を取り扱う小売業では、商品によって売れ方や儲け方が異なる。たとえば1万円の売り上げを得るために、1個100円の商品を100個売る場合と、1個1万円の商品を1個売る場合では販売に至るまでの在庫管理や販売戦略は異なってくるだろう。商品それぞれに適した売り方をすることで利益につながるため、小売業における販売効率を上げるための指標として交差比率が使われている。

商品ごとに交差比率を出すことで「どのように売れているか」「どのくらいの利益が上げられるか」「在庫がなくなるまでの期間」が把握できるため、商品それぞれに適した販売方法が分かり、販売業務の効率化や利益向上につなげられる。

交差比率の計算方法と目安

交差比率の計算方法を、交差比率を構成する要素とともに解説する。

交差比率の計算方法

交差比率は、「在庫回転数×粗利率」で算出する。交差比率の算出に欠かせない、在庫回転数と粗利率については次に解説する。

在庫回転数とは

在庫回転数とは、ある一定の期間内で在庫がどれだけ移動したかを表した数値のことだ。商品が店舗に入庫し在庫となった時点から、店頭に並んで売れるまでを1回転としてカウントする。

在庫回転数についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

粗利率とは

粗利とは、売上高から売上原価をひいて算出した利益のことだ。商品やサービスそのものの価値を表す。全体の売上のうち粗利がどの程度を占めているかを表したのが粗利率で、「粗利÷売上高」で算出できる。

粗利についてはこちらの記事で詳しく解説している。

交差比率の目安

交差比率は高ければ高いほど儲かっているという目安となる。在庫回転数と粗利率によって交差比率を算出すると、在庫が少なく粗利益が多いと交差比率が高くなるためだ。逆に在庫が多く粗利率が少なければ交差比率が低くなるため、その商品の在庫による利益が少ないということになる。

その商品の在庫によって儲けが出ているかの目安となる交差比率は、「200%以上」。交差比率が200%以上の商品やサービスは欠品を防いでより売上を伸ばすために、重視して管理するのが良いだろう。

優先順位を付けて分析、管理をする「ABC分析」についてはこちらの記事で詳しく解説している。

交差比率が200%未満の商品については、以下が目安となる。

・150~200%…良

・100~150%…可

・100%以下…不可

交差比率から分かる儲け方のパターン

交差比率は在庫回転数と粗利率によって算出されるため、交差比率が高く在庫が儲けられる商品でも、儲け方のパターンが商品によって異なる。交差比率とも深く関連している儲け方のパターンと、各パターンに当てはまる商品への有効な施策を解説する。

薄利多売

薄利多売とは、在庫回転数が高く粗利率が低いことで、交差比率が高くなるパターンの儲け方だ。ディスカウンター(安売業態)とも呼ばれている。商品ひとつあたりの利益は低いものの、たくさん売れるため多くの利益につながっている商品が該当する。

たとえば一年あたりの粗利率は5%と低いものの、在庫回転数が40回と多い商品の場合、5×40=交差比率は優秀な目安となる200%となる。

薄利多売の商品は、適切な在庫コントロールが必要となる。多く売れるため欠品しやすく、かといって発注数を多くし過ぎると過剰在庫となる可能性もあるためだ。

また、商品を大量に仕入れることが前提のため、発注や物流に関するコストが高くなる傾向にある。在庫が適切に回っているかこまめにチェックすることと、物流のコストコントロールが求められるだろう。

中利中売

中利中売は在庫回転率も粗利率もそこそこの商品が該当する儲け方だ。たとえば一年あたりの粗利率は30%、在庫回転数は7回転といずれもそこそこの数値の中利中売商品の交差比率は、210%で優秀といえる。

中利中売に該当する商品は地味で目立たないものも多いが、ほどほどに売れて着実に利益をもたらす商品が該当する。

浴槽のブラシやコンロの油除けパネルなどの非消耗の日用品は、代表的な中利中売商品といえる。地味なため中利中売商品を売れ行きや感覚などから判断するのは難しいが、交差比率を求めることで中利中売商品の発見につなげられるだろう。

中利中売商品は安定的な利益をもたらすため、在庫管理や販売のコストが低いメリットもある。目立たない商品でも売り場を確保しておくことで、確実な利益につなげられる。

厚利少売

厚利少売とは販売機会が少ないため在庫回転数は低いものの、粗利率が高いため交差比率も高くなる儲け方を指す。おもな厚利少売の商品には、車や宝石、高級ブランドのバッグや化粧品などが該当する。年に4回しか売れない、つまり在庫回転数が4回だけでも粗利率が50%と高いため、交差比率は200%となる。

厚利少売の商品は付加価値が高いため販売競争に巻き込まれにくい、確実な利益を得られるといったメリットがある一方、販売までの難易度が高いデメリットがある。

商品に興味のある顧客に対してていねいな説明をする、疑問や質問へのフォローをする、接客をていねいに行う、購入や契約後のアフターサービスなどをつけるなどの取り組みを行い、販売機会につなげることで利益が上げられる。

稼ぎ筋

上記の3パターンのほかにも、粗利率と在庫回転数によって以下の4パターンに分類する方法もある。

稼ぎ筋…粗利率と在庫回転数ともに高い

売れ筋…粗利率が低く在庫回転数が高い。薄利多売にあたる

儲け筋…粗利率が高く在庫回転数が低い。厚利少売にあたる

見せ筋または死に筋…粗利率と在庫回転数ともに低い

稼ぎ筋は季節商品や流行のものなども含まれる。一過性の売れ行きを記録する商品も多いため稼ぎ筋の商品は店頭でも陳列やPOPを工夫し、積極的な販促を行う対象となる。

交差比率の改善方法

粗利率と在庫回転数をふまえて交差比率を出すことで、適切な在庫管理や着実な利益につなげられる。一方、交差比率が悪いと利益にはならない。交差比率を改善するには、粗利率か在庫回転数を上げる必要がある。交差比率の改善方法を解説する。

粗利率を上げる方法

粗利率は商品そのものの利益を指す。粗利率を上げる方法は「商品の値段を上げる」か「売上原価を下げる」かのふたつの方法がある。

商品の値段を上げれば商品あたりの利益が上がるため、当然粗利率が上がる。ただし同じ商品をただ値上げしただけでは逆に顧客への販売機会が失われることにもつながる。競合にはない付加価値をつけて差別化をはかるなどの取り組みが必要となる。

売上原価とは、製品や商品の原材料費にあたるもの。売上原価を下げることで仕入れや調達のコストが下がるため、粗利率が上がる。仕入れ先と交渉をして仕入れコストを下げる、材料を費用が安いものに見直す、製造や加工の工程を見直してコストダウンをするなどの方法がある。

在庫回転数を上げる方法

在庫回転数を上げる方法には「商品の販売機会を増やす」か「在庫数を減らす」かのふたつの方法がある。商品の販売機会を増やせば当然在庫回転数も上がるため、商品の売れ行きが伸びるための戦略や施策を投じる。

展示の場所を変える、価格を利益に影響のない範囲で値下げし薄利多売スタイルに切り替える、キャンペーンやSNSを活用して商品を手に取る顧客を増やすマーケティングをするなどの方法がある。

在庫数を減らすためには、適切な在庫管理が必要となる。売れ行きの良い商品は在庫数を増やすことで売上が伸びる。一方売れ行きが悪く滞留在庫となっている商品は、思い切って在庫一掃セールなどで大幅に値引きをして売ってしまうのが有効。

交差比率で売れる商品や儲け方、適正在庫を把握しよう

交差比率の概要や使い方、在庫回転数と粗利率をふまえた交差比率の計算方法、交差比率から見る商品の売れ方や儲け方のパターンや適切な対策方法を解説した。交差比率を算出することで、在庫の適正化はもちろん、商品の特性に合わせた効果的な売り方や管理方法も把握できるようになる。在庫管理から売れ筋商品や注目商品の発見、売れ行きの悪い商品の見直しなど、いろいろな在庫商品の分析や管理に交差比率を活用してみよう。

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…